タグ・ホイヤーのアクアレーサーと言えば、ベーシックなダイバーズウォッチの雄である。傑出した性能は持たないが、そつのない構成はこのコレクションを普段使いできるダイバーズウォッチにしてきた。もっとも、2022年の「アクアレーサー プロフェッショナル1000 スーパーダイバー」は高い防水性能に加え、ケニッシ製ムーブメントを搭載することで、今までのものとは別物に仕上がっている。
アクアレーサー プロフェッショナル1000 スーパーダイバーが優れている点
なんとムーブメントはケニッシ製!
新しいアクアレーサー プロフェッショナル1000 スーパーダイバーは、1000m防水という性能に加えて、ムーブメントも別物になった。搭載するのは、今までのセリタ(グレードはエラボレ)ではなく、なんとケニッシ製の自動巻きである。タグ・ホイヤー名はCal. TH30-00。チューダー、シャネル、ノルケインやブライトリングが採用するこの傑出した自動巻きを、タグ・ホイヤーが選ぶとは、誰が想像しただろう?フリースプラングテンプと、効率の高いリバーサー式自動巻き、そして約70時間という長いパワーリザーブを持つケニッシ製の自動巻きは、ベーシックな量産型自動巻きの中で、もっとも優れたもののひとつだ。
ちなみにケニッシは近年、ジュネーブからル・ロックルに工場を移転したが、ひょっとしてこれはタグ・ホイヤーの採用を見越したためかもしれない。事実、ケニッシの新工場はタグ・ホイヤーの本社から目と鼻の先にある。同社でR&D部門の責任者を務めるキャロル・カザピは、『クロノス日本版』に対して「タグ・ホイヤーはケニッシのすべてのムーブメントに関心がある」と公言した。今後、タグ・ホイヤーはケニッシ製の自動巻きを載せたコレクションを拡充していく可能性が高く、仮にそうなれば、同社は非常に高い競争力を持つだろう。
1000m防水、しかし意外に使えるケース厚
オメガの「ウルトラディープ」が使える厚さを目指したのと同様に、新しいアクアレーサーも1000m防水とは思えないほど(相対的には)薄いケースを持つ。一昔前の300m防水ダイバーと同程度、と言えば分かるだろうか。高い防水性とケースの厚みはトレードオフ、というのが時計業界の定説だったが、新しいアクアレーサーは、そこには当てはまらない。ケニッシ製の大きな自動巻きと、1000m防水のケースにもかかわらず、本作もアクアレーサーの美点である中庸をよく守っている。
外装はラグジュアリーというよりも、実用性重視
1000m防水のアクアレーサーは、タグ・ホイヤーとしては初となるISO 6425(2018年度版)に準拠したプロ向けのダイバーズウォッチだ。従って、夜間でも25cm離して見られる視認性や、5000G/msのショックに耐えられる耐衝撃性能、4800A/m以上の耐磁性などをクリアしている。加えて本作は、真鍮の合金をインナーケースに採用することで、上記以上の耐磁性を得ることに成功した。もちろん、防水テストは全数検査だ。
ISO 6425に対応した、ブランド初の本格的なダイバーズウォッチ。1000m防水にもかかわらず、使えるサイズと重さを実現した。ベゼルのトップはセラミックス製。またムーブメントにはケニッシ製の自動巻きを採用する。C.O.S.C.クロノメーター。自動巻き(Cal.TH30-00)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。Ti(直径45mm、厚さ15.5mm)。1000m防水(飽和潜水対応)。78万6500円(税込み)。
意外だったのは時計の軽さである。外装にグレード5チタンを採用したため、見た目ほど重くない。タグ・ホイヤーは本作を「究極のラグジュアリー ダイバーズウォッチ」と称しているが、筆者としては、むしろ本作のツール感を評価したい。ただ、既存のアクアレーサーに比べて、もちろん仕上げの水準は向上している。
結論:ハイスペックダイバーの選択肢になりうるか?
ケニッシ製の自動巻きに、1000m防水というスペックで武装した本作は、アクアレーサーを大きく変えるモデルだ。とりわけケニッシの良くできた自動巻きは、これからのタグ・ホイヤーに頭ひとつ抜けた競争力をもたらす可能性がある。事実、開発責任者を務めるキャロル・カザピ(!)は「タグ・ホイヤーは、ケニッシのあらゆるムーブメントに関心がある」と筆者に明言した。アクアレーサーだけでなく、タグ・ホイヤーの未来を占うアクアレーサー プロフェッショナル1000 スーパーダイバー。改めて、完成品をきちんと触ったうえで評価したい。
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