ウォッチズ&ワンダーズの期間中は、さまざまなメーカーが周囲で見本市を行っていた。その中で最も異彩を放っていたのが、ドルチェ&ガッバーナだ。その打ち出しは、良い意味で予想外。この路線を続ければ、非専業メーカーの新しい担い手になるはず。
自社工房で外装を手掛ける本格的高級時計
ドルチェ&ガッバーナが時計を発表します、という案内を受けたのは2月のこと。しばらく忘れていたが、わざわざ送ってくるには意味があるのだろうと思って、ウォッチズ&ワンダーズの合間を縫って、ジュネーブにあるホテルプレジデントウィルソンに足を運んだ。ドルチェ&ガッバーナの会場は、同ホテルの7階にある。
文字盤とケースに彫金を施した「ナポリ」。自動巻き(Cal.DG 01.01)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約58時間。18KPG(直径42.5mm)。世界限定13本。4万7000ユーロ。
最初に見せられたのは、手頃な価格帯のコレクション。ざっと見終わったあと、こちらもありますと見せられたコレクションには驚いた。「マニファットゥーラ イタリアーナ」と銘打たれた各モデルは、豪奢な金ケースに、ユニークなマイクロローターを載せた本格的な高級時計だったのである。それぞれのコレクションには、イタリアの都市名が与えられた。
24時間の「イタリア時間」を示すのが「ヴェネツィア」。文字盤にはカメオで月があしらわれる。自動巻き(Cal.DG 01.02)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約58時間。18KPG(直径42.5mm)。世界限定13本。4万7000ユーロ。
同社は2012年から時計の製造を始めていたが、17年からはユニークピースの製作に取り組み、19年のマニファットゥーラ イタリアーナで、エクスクルーシブなムーブメントを採用するようになった。搭載するマイクロローターは旧MHC(マニュファクチュール・オート・コンプリカシオン)こと、タイムレス・マニュファクチュール製。ピエール・ファーブルとドミニク・ルノー(!)の率いる複雑時計メーカーだ。同社は18年に倒産したが、その後復活し、現在もH.モーザーなどにリピータームーブメントなどを提供している。
ドルチェ&ガッバーナの担当者曰く、マニファットゥーラ イタリアーナの外装は、イタリアの自社工房で製作している、とのこと。独特の手作業感がある彫刻は、このコレクションの大きな魅力、と言える。本格的に始動してから、まだ3年足らず。今後、ドルチェ&ガッバーナは、非専業メーカーの台風の目になるかもしれない。
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