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老舗オークションハウス「ボナムズ香港」の時計部門国際ディレクターを務めるティム・ボーン氏が、2022年に開催される時計オークションと、オークション業界の展望を語る。
Text by Tim Bourne(Bonhams Hong Kong)
2022年5月掲載記事
20年以上の経歴を持つ高級時計の専門家であり、ボナムズ香港を拠点に活動する時計の国際ディレクター。世界最古のオークションハウス「サザビーズ」において、その拠点であるロンドンと香港における時計部門の国際責任者を経て、クリスティーズ時計部門の国際共同責任者として活躍した後、ボナムズに加わった。
オークション業界が迎えた“変化の時代”
2022年もオークション業界にとって輝かしい年になるだろうか? 特に、最もコレクターの多いヴィンテージウォッチ、そしてモダンウォッチといったカテゴリーにおいてはどうだろうか?
2021年は、オークションの取引内容においても参加者のレベルにおいても、大幅に予想を上回り、ほぼすべてのオークションハウスが記録的な成功を収めた。デジタル技術の絶え間ない進歩もあり、参加者たちは安心してオンライン入札や購入ができるようになっている。とはいえ、新型コロナウイルスによるパンデミックが世界的に緩和され始めると、コレクターたちの旅行需要も高まり、熱心なコレクターやトレーダーを、再び世界中のオークション会場に迎えることができるようになってきた。
これは素晴らしいことだ。オークションハウスがどのように進化し、“オークションの時代”がよりインタラクティブで楽しい体験へと発展したかを目の当たりにすることは、オークションハウスに関わるすべての人々に大きな喜びを与えてくれるだろう。
オークションハウスが、ライブオークションの伝統的な手法と、進化するオンライン入札の技術を融合させるという挑戦を受け入れるのを我々は見てきた。アプリケーションの進化はとどまるところを知らず、ほとんどのコレクターやディーラーにとって、今やアプリケーションは世界中で開催されているあらゆるオークションと常につながっている“頼れる”ツールとなっているのだ。
2022年、さらなる勢いを見せるのは小規模ブランドか
さて、2022年はどんな年になるのだろうか? オークションの世界では、著名な時計ブランドが依然として圧倒的な強さを誇っているが、多様でコレクター需要の高いコミュニティが作られるなど、素晴らしい進歩があった。F.P.ジュルヌやフィリップ・デュフォーのような小規模なブランドや独立時計師はすっかり有名になり、投資家や時計愛好家によって、彼らの作品の落札価格は勢いよく上昇を続けている。
買い付けが増えることにより、ドゥ・ベトゥーンのような小規模なブランドがどう波に乗るかが、興味深いところである。世界を舞台にした驚異的なパフォーマンスだろうか? それともブランドの興亡だろうか? いずれ分かることだろう。個人的には、優れた時計技術者を擁し、そのクリエイティビティによって、1本1本が驚くべき芸術品となっているこのブランドは今後、高い人気を博していくのではないかと思っている。
2022年は、新しいオークションビジネスが世界的に評価を高め、エキサイティングな年になることが期待される。小規模なブランドほど、より迅速で柔軟な創造性を発揮することができる。ダイナミックな変化と、投資家との交流がより活発になることは間違いないはずだ。
政治的な不安やパンデミックの影響によって株式市場が神経質になっている状況下だからこそ、2022年は、世界中で知られ、信頼でき、収集価値の高いものがより一層求められるようになると考えられる。我々は今年、世界を驚かせる記録的なオークションを目撃することになるだろう。
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