今年25周年を迎えたL.U.Cコレクション。「時計作りはワインと同じ、時間をかけないと良いものができない」と語るのはショパール共同社長のカール-フリードリッヒ・ショイフレだ。
[クロノス日本版 2022年5月号掲載記事]
25年をかけて私たちはL.U.Cを成熟させた
1958年、ドイツ生まれ。ショパール共同社長。15歳でスイスに移住し、HECローザンヌ校に入学。卒業後、ショパールに入社。1988年に「ミッレ ミリア」コレクションをスタートさせたほか、96年にはスイス・フルリエにマニュファクチュール工房を設立し、自社製ムーブメントである「L.U.C」の製造を開始した。スポーティーな「アルパイン イーグル」の大ヒットに続いて、今後は「ミッレ ミリア」コレクションの改良に注力するとのこと。
「私たちは今後、ハイエンドのモデルに注力していきます。また、ジュネーブ・シールの認定を取得したモデルを増やしていきます。数を抑えて、クォリティをさらに上げていく予定です」
昨年の25本限定のモデルが示す通り、確かにショパールのL.U.Cコレクションは、よりエクスクルーシブな方向を目指している。加えて近年のL.U.Cコレクションは、以前のようなデザイン上の試行錯誤がなくなり、明確な個性を持つようになった。
「熟成には25年かかった、ということでしょう。冒険という面白い旅だったと思います。私たちはさまざまなルーツを求め、いろいろなものを作りました。デザインに関して言うと、私たちは成熟したのだと思います。そして、少ないほど豊かであることに気づきました。つまり、新製品の数を減らして、細部の質を詰められるようになったわけです」。彼らしい物言いを翻訳すると、ようやくデザイン面での試行錯誤が収まった、ということか。
そんなL.U.Cの新しい方向性を示すのが、「L.U.C フル ストライク サファイア」だ。基本的な構成は傑作「L.U.C フル ストライク」に同じだが、ケース全体、リュウズ、文字盤までもがサファイアクリスタル(!)に改められた。
「フルサファイア製のケースは、昔からの夢でした。最初にこのモデルを発表した時、すごい新製品になるだろうと思いました。サファイアゴングだけでなく、プッシュボタンまでサファイア製のため、時間はかかりました。すべてがスイス製の部品だからです。これはジュネーブ・シールを取得した唯一のサファイアケースを持つミニッツリピーターです」。またこのモデルはジュネーブの工科大学のロマン・ブランデ教授の協力により、さらに音を改善したという。
アルパイン イーグルがヒット作となり、L.U.Cも方向性が定まった。むしろ気になるのは、こういった状況にあって、ラグジュアリーに何ができるのか、ということだ。
「これは新型コロナ禍前から自問していました。しかし、パンデミックの最中にあって、でも人々が時計を楽しむ様を見てきました。人々は永続的な価値を探しているように思います。そんな中で、美しい絵画や彫刻、美しい時計といったアルチザナルな価値はいっそうの意味を持つでしょう。私には未来は予想できませんが、インフレーションが起こるとなおさらでしょう。世代を超えて生き残っていくものには意味があり、それは歓迎されると思うのです」
モノブロック成形のサファイアクリスタル製のゴングを持つ、唯一無二のミニッツリピーター。150万回のテストと、450Gの耐久テストを経ているため、実用性もかなり高い。2022年の新作では、ケースもサファイアクリスタルに改められた。C.O.S.C.認定クロノメーター。ジュネーブ・シール取得。手巻き(Cal.L.U.C08.01-L)。63石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。サファイアクリスタル(直径42.5mm)。世界限定5本。予価5656万2000円(税込み)。
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