トリローブの腕時計は、一目見ただけで、まごうことなくしっかりそのブランドであることが認識できる。他と一線を画すものとして特徴付けられる、いくつもの偏心リングがあるためだ。新作「Une Folle Journée(クレイジーな1日)」は、近くでよく見ると、そのリングが大きなドーム型サファイアクリスタルの内側で垂直化されており、それにより3Dで時間を視認させる構造になっている。この時計は、今後何年にもわたって重要性を増していくフランスの独立系時計メーカー、トリローブの名を際立たせていくものである。
2022年5月17日掲載記事
詩的な世界観の表現を得意とするフランス時計ブランド、トリローブの新作
2018年に「レ・マティノー」コレクションを発表して以来、新進のフランス時計ブランド、トリローブは他とは一線を画してきた。トリローブの時計からは常に詩的なものが漂い、ブランドはしばしば文学に言及してきた。そしてそれはスポーツ、宇宙、探検などすべてのジャンルに変化をもたらし、その上時間の読み取りは常に独特ではあるが直感的なものであった。
この4年でさまざまなモデルを開発し、レ・マティノーを進化させ、そして「ニュイ・ファンタスティック」コレクションの投入でブレークを果たしたトリローブは、今回の「Une Folle Journée(クレイジーな一日)」と名付けられた新作によって歴史の転換期を迎えた(「フェリスはある朝突然に」ではなく、劇作家であり時計職人でもあったカロン・ド・ボーマルシェにちなんだものである!)
このラウンド型の時計にはラグの張り出した直径40.5mmのチタン製ケースが組み合わされており、その表面は鏡面仕上げとサテン仕上げが施されている。前作がフラットな文字盤で時間を表示していたのに対し、この「クレイジーな1日」は立体的で、異なる高さの3つの回転リングによって時間表示を行い、大きなドーム型サファイア製風防によって保護されている。外周の最も大きなリングは時間、中間が分、一番小さいリングは秒を表示する。トリローブでは初めてのオープンワーク文字盤となっている。
これらの回転リングはマイクロローター搭載のキャリバーX-Centric³によって、普通の時計の針とは逆に回っている。このボリューム感のあるコンプリケーションは、見る目を楽しませるために考え抜かれた自社製ムーブメントだ。
196点のパーツの組み立ても特別なものである。ボリュームのある設計のブリッジと地板のエッジは、フラットな表面に施されたグレイン仕上げを際立たせるため、丹念にダイヤモンドツールで研磨されている。
3本のリングは段々に配され、高さは10mm以上にもなる! 空間(というか時間だろうか)に突き出し、9本の柱でバランスを取っているリングは非常に複雑な組み立てを要する。ポリッシュ仕上げのチタン製の張り出しが、中空でガルバニック加工とサテン仕上げが施されたやはりチタン製の内部のリングを支えている。軽量で密度が高いチタンは、加工が非常に難しい素材のひとつである。
加工や研磨が難しいこの金属は、いったん完成すれば、その仕上げレベルは非常に高い。ただし一番重要なのはその比類なき軽量性であり、これにより3本のリングはドーム下で、まるで無重力状態にあるかのように動くのである。
リングのへこんだ部分と数字の緻密なプリントは、時計作りにおける技術の粋の証しである。6時位置に固定された赤色のポインターは、時分の迅速な視認を可能としている。
3本のリングは、高さが10.2mmある大きなドーム型サファイアクリスタルに収められている。このサファイアクリスタルは炎に吹き付ける従来の工程で製造され、日本で加工された後、スイスでポリッシュ仕上げが行われている。サファイアはダイヤモンドの次に硬い素材であり、耐久性も高く、完璧に透明で経年変化に耐えられる。
ブランドの遊び心が感じられる小さな点を挙げよう。ケースバックを見ると、従来の防水性表記(50m)が羽ばたくカモに置き換えられているのである。トリローブと、その少し他とは違う趣味を語るのにふさわしいディテールであり、そういうところが愛されているのだ。
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