G-SHOCK初代モデル「DW-5000C」の直系であるORIGINを、アイコニックなルックスはそのままに、最高峰シリーズMR-Gのクォリティで作り上げた「MRG-B5000」。2022年3月に発売されるやたちまち注目を集めたが、早くもこの6月には新色が追加された。
その「MRG-B5000BA」は、随所にブルーのアクセントカラーを配した、クールな佇まいが印象的。しかも、単なるバリエーションの追加ではない。新たな耐衝撃構造や先進のマテリアルによって実現した“最高峰ORIGINの強さ”を、前作とは異なる表情で示した、コンセプチュアルな新色モデルである。
竹石祐三:取材・文 Edited & Text by Yuzo Takeishi
外装パーツの分割構造がかなえた艶のあるルックス
「MRG-B5000」はORIGINを極める狙いから“極”というコンセプトを設けて作られた、フルメタルORIGINの最高峰モデルだ。2022年3月にブラックとシルバーの2モデルを発売し、なかでもブラックの外装をまとった「MRG-B5000B」は、初代G-SHOCKをメタル素材でトレースしたかのような高い再現性を誇り、しかもその質感はMR-Gにふさわしい高級感を携えていたのだから、G-SHOCKフリークはもちろん、時計愛好家を唸らせたのも当然だろう。
耐衝撃構造のマルチガードストラクチャーや外装素材は引き継ぎながら、随所に“青墨”をイメージしたブルーを施した「MRG-B5000」シリーズの新色。初代G-SHOCKに範を取った角型フォルムを採用しているが、Bluetooth®によってスマートフォンと連携するモバイルリンクを備えるなど、機能はアップデートされている。タフソーラー。フル充電時約22カ月(パワーセーブ時)。64Ti×コバリオン(縦49.4×横43.2mm)。20気圧防水。46万2000円(税込み)。
初代モデルをモチーフとしたMRG-B5000Bが、文字盤にG-SHOCKのキーカラーであるレッドを配しているのに対し、ニューモデルの「MRG-B5000BA」が採用したのはブルー。デザインコンセプトは“青墨”で、これは書道などで使われる、青い顔料を固めた墨のことだ。そんな深みのあるブルーによって放たれるのは、レッドとは対照的な、実に静謐な雰囲気。それは禅の精神性にも通じる、“静かなる強さ”を表現する色だという。
このMRG-B5000において、ORIGINを極めるべくカシオが重視したのは、徹底した研磨だ。前身となるフルメタルORIGIN「GMW-B5000」シリーズはそもそも、ORIGINの造形を金属素材で作ることが発想の原点。樹脂モデルと同じく、金型に液体の樹脂を流し込む射出成形で作ることも可能ではあったが、その後の加工が困難になるため、10回以上ものプレス成形や焼鈍し、研磨などの工程を組み合わせて製作された。これにより、ORIGINのフォルムを再現し、艶やかな鏡面を生み出すことにも成功したが、それでもベゼル(ケース外側のカバー)は一体成形であったため、凹面の隅々にまで研磨を施すことはできなかった。
磨けないのであれば、すべてを磨けるような形にする──そんな決意から、MRG-B5000のために考案された新構造がマルチガードストラクチャーだ。ORIGINはMASTER OF GやMR-Gなどと比較するとシンプルなデザインのようにも見えるが、実際は凹凸を多用した造形のため、一体成形では細かな凹面を磨き上げられない。そこでカシオが導き出したのが、トップベゼルを含むケースカバーを25個のパーツに分割する構造。つまり、細分化することでパーツのひとつひとつが平面を持つことになり、結果、細かい部分までも研磨できるようになったというわけだ。
だが、一方では重大な問題にも直面することになる。GMW-B5000シリーズでは、モジュールを保護するセンターケースとベゼルとの間にダンパー効果をもたらすための緩衝材をセットしていたが、ケースカバー(トップベゼル、ラグ、ケースサイドなど)を分割してしまったMRG-B5000では同様の構造が使えなくなり、G-SHOCKに不可欠な耐衝撃性能が確保できなくなったのだ。そこで採用されたのが、板状のバネを挟み込んだT字型パーツ。上下に摺動してバンパーのような効果をもたらすこのパーツを、ケースカバーの四隅に配置する新たな構造を取り入れ、さらにベゼルの上下や両サイドにも緩衝材をセット。これによりパーツを細分化しながらも、あらゆる方向からの衝撃に耐えるマルチガードストラクチャーが完成したのだ。