英国のオークションハウス、クリスティーズは2022年5月24日に香港で「Important Watches」を開催した。多くの名品が出品される中でも注目を浴びたのが、パテック フィリップのワールドタイム、Ref.605 HUだ。世界地図を描いたクロワゾネダイアルを備える懐中時計で、同じものは世界に3個しか存在が確認されていない。このオークションの結果をお知らせする。
2022年6月21日掲載記事
Ref.605 HU、想定価格を上回る約2億6000万で落札
パテック フィリップのワールドタイムの歴史は1937年から始まる。世界各地の時刻をすべて同時に表示できるようにしたルイ・コティエ式の機構は、ワールドタイムの新たなスタンダードを築き上げた。1939年から1964年にかけて、ルイ・コティエとパテック フィリップは最大95個のRef.605 HUを製造し、イエローゴールドで68個、ピンクゴールドで27個の時計を製造した。
なお、ルイ・コティエ(1894-1966)は、1931年にワールドタイム機能を発明している。この技術は後にパテック フィリップ(Ref.605、1415、2523)、ロレックス(Ref.4262)、ヴァシュロン・コンスタンタン(Ref.3372)など、スイスの主要時計メーカーに採用された。
1953年にコティエはこのムーブメントをさらに改良し、ふたつ目のリュウズで都市ディスクを調整できるようにした。1958年には、分針の進行に影響を与えることなく時針のみを動かすことができるシステムの特許を取得することに成功している。
文字盤にはプレーンメタルまたはクロワゾネが用いられた。今日、クロワゾネダイアルのRef.605 HUで所在が確認されているのはわずか12個である。そしてここで紹介するのと同じ世界地図を描いたイエローゴールドモデルは3個だけだ。そのうちの1個はジュネーブのパテック フィリップのミュージアムの所蔵品、もう1個は個人蔵、そして最後の1点が今回香港におけるクリスティーズで、初めてオークションにかけられることになったのである。
オークションの実施にあたり、クリスティーズ・アジア・パシフィックの副社長兼ウォッチ・ディレクターであるアレクサンダー・ビグラーは、「これほどの希少性と品質を備えた逸品は、毎シーズン出品されるわけではありません。素晴らしいタイムピースを発見し、手にできる、まさに一期一会の機会です。並外れた希少性と最高のコンディションを保っています。陶酔を呼ぶ鮮やかな色彩は、エナメルだけが放つことのできる美しさを湛えています。多くのコレクターに求められる懐中時計であり、時計史における傑作をその手に納めることのできるチャンスです」と話した。
事実、このRef.605HUはパテック フィリップのクロワゾネダイアルを備えたワールドタイム懐中時計の中でも極めて保存状態の良い品であった。また文字盤はスターン・フレール社の熟練した職人の手で仕上げられたものである。背面にムーブメントの番号が記されており、このRef.605 HUのために用意されたものでであったことが確認できる。
クリスティーズが2022年5月24日に香港で開催した「Important Watches」において、このRef.605 HUの出品は最大の注目を集めた。当初の落札予想は500万から1200万香港ドル。これに対して1605万香港ドルでの落札となった(当日の1香港ドルを16.15円で換算すると2億5920万7500円相当)。
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