【インタビュー】ブレゲCEO「リオネル・ア・マルカ」

2022.07.15

2021年にブレゲのCEOとなったリオネル・ア・マルカは、スウォッチグループならではの経歴を歩んできた人物だ。フレデリック・ピゲやETAなどを経て、グループ内の品質管理や生産ラインの改善などに携わってきた。19年、同グループ取締役会に抜擢され、ブレゲと文字盤製造会社であるモム・レ・ペレの経営を委ねられた。今の時計メーカーには現場を知るCEOは少なくない。しかし、彼ほど現場に精通した人物はいないのではないか?

広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2022年7月号掲載記事]


私たちの使命とは、ブレゲの求めたレベルを永続させること

リオネル・ア・マルカ

リオネル・ア・マルカ
1967年、スイス生まれ。ポラントリュイのEHMPで時計師としての教育を受けた後、ジュウ渓谷のさまざまな時計メーカーで働く。92年にスウォッチ グループの傘下となったフレデリック・ピゲに入社。後にETAへ転籍した。その後は、グループ内でコンサルタントとして活躍したほか、ブランパンでも開発責任者を務めた。2019年からスウォッチ グループのボードメンバーとなり、21年より現職。

 そんなCEOならではのモデルが極め付きに複雑な文字盤を持つ新しい「オーラ・ムンディ」である。CEOに聞く話ではなさそうだが、文字盤製造の専門家でもある彼の知見は、傾聴に値するだろう。

「新しいオーラ・ムンディにおける私たちの目標は、文字盤に奥行きを出すことでした。そのため、文字盤に複数のプレートを重ね合わせました。1枚目はゴールド製で、その上に手作業でギヨシェ彫りを施し、電気メッキ処理でブルーを施しました。その上に重なるもう1枚のプレートはサファイアクリスタル製で、厚さは0・4㎜しかありません。立体感を演出するために、大陸と海の緯線と経線はメタリックに加工されています。また、大陸にはターコイズブルーのメタリックな縁取りを施しました」

 最近、さまざまなメーカーが文字盤の仕上げに凝るようになったが、これほど多彩な技巧を盛り込んだ文字盤は、今までに見たことがない。しかも、ブレゲはサファイアクリスタルに施すメタリック処理を複数使い分けている。

「サファイアクリスタルにメタリックな処理を施すことは、決して新しいものではありませんね。しかし、サテン仕上げ、金属加工、反射防止処理といった複数の技術を文字盤に適用するのは初めてです。こういった技法の組み合わせで、オーラ・ムンディの文字盤は立体的な見た目を実現できたのです」

 加えて、このサファイアクリスタル製のプレートには、外部のスペーサーに固定する穴と、インデックスを固定する穴がそれぞれ開けられている。「サファイアクリスタルの板は極めて薄いため、この種の作業は非常にデリケートです。サファイアクリスタルに開いている小さな穴に、ローマンインデックスの足を差し込みます。そして、インデックスを穴に差し込む際、耐久性を高めるために接着されるのです」。

 ア・マルカは語る。「アブラアン-ルイ・ブレゲはアバンギャルドな人でした。彼は、時計製造の基礎の一部となる革新的な技術を生み出しました。私たちの使命とは、ブレゲの求めたレベルを永続させることなのです」。なるほど、オーラ・ムンディの文字盤が、かつてないものなのも納得ではないか。

マリーン オーラ・ムンディ 5557

ブレゲ「マリーン オーラ・ムンディ 5557」
もっとも使いやすい世界時計。8時位置のリュウズであらかじめ都市を設定してプッシュボタンを押すと、ふたつの都市の時間を瞬時に切り替えられる。そこに重層的な文字盤を加えたのが本作だ。自動巻き(Cal.77F1)。40石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55 時間。18KWG( 直径43.9mm、厚さ13.8mm)。10気圧防水。1168万2000円(税込み)。



Contact info: ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211
www.breguet.com/jp


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