【インタビュー】JCビバー創業者「ジャン- クロード・ビバー」

2022.07.21

ある日、筆者に1通のメールが届いた。送り主はなんとジャン-クロード・ビバーだ。何事かと思って開いたら、「新しく会社を興したので、ジュネーブに話を聞きに来られたし」とある。ジュネーブのホテル・デ・ベルグの一室に座った彼は、往年の迫力をもって私たちに語り出した。

三田村優:写真 Photographs by Yu Mitamura
広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2022年7月号掲載記事]


私が新しく作る時計は私が何者であるかを示すものになるだろう

ジャン- クロード・ビバー

ジャン- クロード・ビバー
JCビバー創業者。1949年、ルクセンブルク生まれ。オーデマ ピゲを経て、ASUAGグループ(現スウォッチ グループ)入社。82年にブランパンを再興した後、2004年、ウブロCEOに就任。フュージョンをコンセプトに、2年で売り上げを4倍にまで拡大させた。14年、LVMHグループ時計部門のプレジデントに就任。22年1月、自身の名を冠したJCビバーを創業した。

「新しく会社を興して時計を作ろうと思っている。実は怪我をして入院した時、やることがなくなった。それで、会社を作ろうと考えた。今年の1月のことだ。これから作ろうと思う時計はハイコンプリケーションではなく、エクストリームハイになる」

 それはどういう時計になるのだろうか?「新しい時計は、ジャパニーズスタイルだね(笑)。見えない部分のパーツも完全に仕上げたものだ。ダイアルの下の部品は見られないが、そこにお金をかけている。誰も見たことのないことをしたいし、誰も見たことのない世界に行きたい。それがラグジュアリーだ」。そんな途方もない時計を作るというアイデアはいつ思いついたのか?

「若い頃からそうだったよ。しかし、過去においてはできなかった。工業的なプロセスでは不可能だ。今の私にとって重要なのは、予算を達成することでも、利益を出すことでもない。完璧であることだ。プライオリティが変わったからだ。というのも、これが私の最後の仕事だから、だ」

こう語る彼は、腕にアクリヴィアを巻いている。まさかビバーが、ニッチなメーカーの時計を着けているとは思ってもみなかった。

「(アクリヴィア創業者の)レジェップ・レジェピも同じ考え方だ。だから今着けている。価格は関係ない。遅れも関係ない。品質、品質、品質のみだ! 多くの人たちは、私がマーケティングの人だと思っているがやめてくれ、私はプロダクトの人間なんだ」

 その構想は壮大だ。

「最初のモデルはリピーターになるだろう。カリヨン付きだ。ふたつ目はリピーターにトゥールビヨン付き。それぞれの生産本数は25本から30本のみ。そしてムーブメントに使われるすべてのスティールパーツはブラックポリッシュ仕上げにしたい。グランドセイコーの外装みたいにね」。私はマーケティングもできるが、プロダクト畑の人間と強調するビバー。彼はこうも語った。

「私の強みと情熱はプロダクトなんだよ。だから今回のプロジェクトはゼロマーケティングだ。マーケティングは広告のようなもので、ピュアではない。それに宗教にマーケティングは不要だろう?(笑) 私が何者なのかは、私が作る時計を見ればわかるはずだ。最初は私がかつて手掛けたブランパン『1735』と同じレベルだが、後にそれを超えていく」

JCビバー

2022年1月に始まったプロジェクトだが、ロゴはもちろんのこと、時計のデザイン画(!)まで完成していた。彼はロールス・ロイスの共同創業者であるヘンリー・ロイスの言葉を引用した。「価格が忘れられても、品質は残る」。


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