フェラーリとのパートナーシップ契約に基づき、リシャール・ミルが発表した「RM UP-01 フェラーリ」。驚異的な薄さと、2億円を超える価格に話題が集中しているようだが、この時計の本質は実用性の高さにある。コンセプトウォッチ並みの薄さを実現させつつ、実用に足る耐衝撃性を確保した手腕に、リシャール・ミルの良心が光る秀作だ。
[クロノス日本版 2022年9月号掲載記事]
リシャール・ミル「RM UP-01 フェラーリ」
リシャール・ミルが、フェラーリとの長期的なパートナーシップを発表したのは2021年2月のこと。熱狂的なティフォシたちに支持されるこのブランドは、F1の名門コンストラクターであるだけでなく、多様なレースカテゴリーへの挑戦を続けてきた。リシャール・ミルは、才能育成の場であるフェラーリ ドライバーアカデミーはもとより、ワンメイクレースのフェラーリチャレンジなどへのサポーター活動を表明。同時にフェラーリグループ全体のオフィシャルウォッチパートナーとなった。
これまで数々のエクストリームウォッチを手掛けてきたリシャール・ミルが、新たなパートナーシップからどんな時計を生み出すのか? その興奮は、おそらく誰もが予想しなかったカタチに結実した。フェラーリの名を冠した初作「RM UP-01フェラーリ」は、コンセプトウォッチ級のウルトラフラット=超薄型時計として発表されたのだ。
幅広のトノーシェイプを持ったRM UP-01のケース厚は1.75mm。これまでにも、時計全体で厚さ2mmを切るような機械式時計はいくつか前例があるが、そのどれもが薄さを追求するあまり、ケースバック一体型の地板を備えていた。ケースをそのままムーブメントの一部として使えば、針の高さと風防部分の厚みを加えるだけで、超薄型時計を実現できるからだ。誤解を恐れずに言えば、これまでに開発されたアンダー2mmのモデルは、時計そのものが板のような構造だった。