2018年、オリジンが持つデザインを継いだ「GMW-B5000」が誕生して以降、ステンレススティールの外装をまとったG-SHOCKのフルメタルシリーズは、カシオが推し進めるCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)デザインを駆使してバリエーションを増やすのみならず、2020年には、1989年に登場した初代アナログ×デジタルモデルをベースとした「AWM-500」を追加してラインナップを拡充している。そんなフルメタルG-SHOCKに新しく加わったのが「GM-B2100」。近年のヒット作である「GA-2100」をフルメタル化しただけでなく、そのディテールからはデザインや性能の進化もしっかりと見て取れる。
竹石祐三:取材・文 Edited & Text by Yuzo Takeishi
世界的人気を獲得した「GA-2100」が早くもフルメタル化
フルメタルG-SHOCKの新作「GM-B2100」のベースとなった「GA-2100」が登場したのは2019年のこと。この頃、カシオでは若い年齢層をターゲットにした時計の開発を進めており、これによって生み出されたのが、八角形のベゼルを特徴とする新シリーズGA-2100だ。
2019年に登場した八角形ベゼルのGA-2100をベースに、外装にステンレススティールを採用した、フルメタルシリーズの第3弾。シルバーとブラックのモデルについては、ダイアルをブラックのワントーンに抑え、2100シリーズが持つクールでスタイリッシュなイメージも継承している。タフソーラー。フル充電時約18カ月(パワーセーブ時)。SSケース(縦49.8×横44.4mm)。(左)7万1500円(税込み)、(中・右)8万300円(税込み)。
G-SHOCKの初代モデルである「DW-5000C」のDNAを継承しつつ、よりミニマルで現代的なルックスを備えたこのモデルは、同時にケースの小型化・薄型化も実現。もっとも、この当時は“G-SHOCK=ラギッドなデザイン”というイメージが確立しており、GA-2100のデザインについては社内でも賛否両論あったという。しかし、いざ発売されると国内のみならず、グローバルでも人気を獲得。若い世代をターゲットとして製作されたGA-2100は、そのもくろみ通り新規のユーザーを獲得することに成功しつつ、古くからのG-SHOCKフリークにも受け入れられる、一大ヒットモデルとなった。
だが、18年に誕生した「GMW-B5000」が初代G-SHOCKを、20年発表の「AWM-500」がG-SHOCK初のアナログ×デジタルモデルをそれぞれベースとしていることからも分かるように、これまでにフルメタル化されてきたのはG-SHOCKのレガシーモデルばかりだ。ニューカマーであるGA-2100がフルメタルシリーズにラインナップされることには違和感があるが、これに対し、企画を担当した井ノ本脩氏は次のように説明する。
「GA-2100は初代G-SHOCKのフィロソフィーを受け継いだモデルということもありますが、新しいユーザーを獲得しつつ、既存のファンの方にも受け入れられたモデルでもあります。こうした経緯から、早いタイミングでメタルカバードや機能を重視したモデルを展開し、フルメタル化も行ったのですが、それは2100シリーズを次世代のマスターピースに育てていきたいという思いがあるからなのです」
仕上げから伝わる、カシオの本気度
新たにフルメタルシリーズにラインナップされたGM-B2100だが、外装設計については従来の3モデルと同様だ。G-SHOCKの樹脂モデルでは、金型に樹脂を流し込む射出成形で製造されているが、フルメタルシリーズではステンレススティールの板材をプレスして鍛造成形する方法が用いられている。とはいえ、1回のプレスでG-SHOCKの複雑な形状は出せないため、フルメタルシリーズでは10回以上ものプレスを実施。しかも、1回ごとのプレスの間に焼きなましや研磨などの工程を挟み、それを10回以上繰り返したうえで最終的な研磨を施すなど、外装の製作には相当な時間がかかっているという。
フルメタルG-SHOCKでは、こうしたステンレススティールの外装が着目されがちだが、実のところGM-B2100はダイアルの作り込みにこそ、その真価が見られる。2100シリーズはこれまで、ベーシックな樹脂モデルのGA-2100をはじめ、メタルカバードモデルの「GM-2100」、スマートフォンリンクとタフソーラーを搭載した「GA-B2100」をリリースしており、「GM-B2100」は2100シリーズの第4弾となる。同一シリーズであるため、4モデルともダイアルのデザインには統一感を持たせているが、パーツについてはひとつとして同じものが使われていない。
一見して分かりやすいのは、挽き目加工を施した立体的なインデックスだが、それ以外にも9時位置のインダイアルに設けられたC型のリングは別体のパーツを採用。これをレーザー溶着で文字盤にセットすることで、時計に衝撃が加わった際にも脱落することがないという。また、インダイアルの針も従来モデルより厚みのあるものを用いているほか、12時位置のG-SHOCKロゴをメタル調の貼り文字にしていたり、4時位置のディスプレイ付近にも挽き目加工を施したりするなど、ディテールにもアクセントを添えることで、力強い表情に仕上げているのが印象的だ。デザインを担当する松田孝雄氏は、ダイアルの作り込みついて次のように付け加える。
「特にGM-B2100は、2100シリーズのなかでも最上位のモデルになるので、ディテールをじっくりとご覧いただければ、他モデルとのバリューの違いを実感していただけると思います。また、前作のAWM-500は、同じアナログ×デジタルのモデルでありながら、1枚文字盤のソーラーモジュールでしたが、今回は2枚の文字盤を採用して、シンプルなフェイスのなかで立体感を出すことに注力しました。ユーザーの方々にとっては、2100シリーズがフルメタル化したことの印象が強いかと思いますが、実はダイアルの作り込みこそが、GM-B2100の見せ場でもあるのです」
(右)インデックスと同様、4時位置にあるデジタル表示の下部にも挽き目加工を施し、高級感を高めている。この加工には山形カシオの微細加工技術が用いられている。