DK10 Lの着用レビューと使用感
では、着用して使用感について述べてゆこう。
ケース直径42mmで厚さは14mm(実測)である。俯瞰するとベゼルによってケースサイドは見えず、スリムなラグが見えるだけであるので、数字よりもコンパクトで精悍な印象を受ける。
表面はマットな質感で、渋い色味を持って魅力がある。エッジやケース側面のカーブも整っており、手にしてみると作り込まれているのがよく伝わってくる。店頭で手に取ってみることをおすすめしたいポイントだ。手触りはサラっとしていて、肌に貼り付く感じが少なくて好ましいと感じた。
リュウズの操作感は、比較的大きいリュウズを持ちながら非常に重たい。ゴムっぽい摩擦を強く感じるため、巻き芯に備えたOリングの密着性が高いのであろう。ダマスコはリュウズ部のガスケット構造にも特許を保有しており、リュウズをネジ込まなくても防水性が確保できている。実使用におけるトラブルをなくすために、細やかな技術向上を図っているのが分かる。また、リュウズを往復させた時の遊びも小さく、針の動きも節度があり、狙ったところに調整しやすい。
ベゼルは両方向回転式の60クリックタイプで、コクコクと明確なクリック感がある。このベゼルは独自のセラミックベアリングを使用したもので、機構部の摩耗が極めて少なく、ゴムっぽい摩擦感がない操作感が特徴である。
文字盤デザインは、指し示す時間を見間違えようもないほど視認性に優れる。マットな文字盤のブラックと、キレがあって明瞭な真っ白の印字、時分針のコントラストが非常に高い。12時位置の三角のインデックスと細い白線で描かれたホワイトの十字が視線を誘導してくれるのも効いている。このラインを引くために、デイデイトを6時方向へわざわざオフセットしている点は視認性向上に寄与している。デイデイトは文字盤上の空きスペースに収まっている印象で、デザインバランスも良い。秒針は彩度の低いレッドで、こちらは意図的に視認性を落として読み間違いを防止しているようだ。
蓄光は、時分針と12時位置の三角のインデックス、数字インデックスのサイドに施されたドットにのみ施されている。秒針にすら蓄光は施されていない。その発光量も控えめであり、明るさは十分に蓄光させても拍子抜けするほどおとなしい。これで十分なのだろうか? と夜間のドライブに連れ出したところ、高いコントラストを持つ文字盤デザインはわずかな光があれば測時ができ、蓄光部の発光部はそれを補助するように働いている。見やすい訳ではないが、視認可能にまとめられている。
一点、残念に思ったのは、この個体の時針の蓄光塗料のムラ(縮み)が僅かにあることだ。目を凝らさなければ分からない程度だが、この手のツールウォッチとしては比較的高価なモデルであるので改善を期待したい。
腕に巻いての着用感は、厚さ14mmあるモデルであることを考えると合格点といったところだろう。実使用においては、柔らかで肌との接触面積の大きいストラップにより、バランスや収まりが良好である。
また、ヘッドの重量バランスや重心位置も悪くなく、着用時に暴れるようなこともなかった。ただし、リュウズやケースサイドのゴツゴツした感触はある。手首の周長17.5cmの筆者には総じて満足のいくものであった。
ムーブメントのCal.A35-1は片巻き上げ自動巻きを採用する。片巻き上げは、特有のローターのショックや空転ノイズが嫌われることがあるが、Cal.A35-1ではショックはかなり小さく、両巻き上げ式との実用上の差は小さいと感じたし、空転はするが音が気になるほどではない。
さて、片巻き上げ自動巻きはデスクワーク中心の生活にマッチしやすいというのが一般的な評価だ。筆者の生活スタイルはデスクワーク中心で、巻き上げ効率が高いとされるマジックレバーを採用するセイコーCal.4R36(両巻き上げ)搭載機でも、巻き上げ量と消費量の収支が僅かにマイナスだと感じている。
そんな筆者が巻き足しなしにDK10 Lを一週間半運用した。この期間中、時計は止まることなく日差は-4秒程度で安定していた。なお、平置き状態ではもう少し良い印象であった。そして、最終的に約45時間分まで巻き上がっていた(時計を外してから停止するまでの時間を計測)。
精度は実用十分なものであり、パワーリザーブは約52時間と標準的だが、良く巻き上がったので高評価を付けたい(ただし、筆者の生活スタイルとのマッチングが良かった可能性は考慮すべきだ)。
磁気を放つ機材の多いデスクワークと、たまの力仕事のある筆者にとって、高い耐磁性能と堅牢な外装によって、安心して使用することができた。この安心感は今作の魅力である。
今回は着用する機会がなかったが、すべてのコマをネジ締結して作ったブレスレットを用意する点もダマスコの特徴である。ケース素材と同じ素材で作られるため、堅牢性は間違いないだろう。また、ネジ締結なのですべて分解可能でメンテナンス性にも優れる。
総評
DK10 Lには税込み50万6000円のプライスタグが付けられる。この価格帯には魅力的なライバルが多い。DK10 Lの外装の作り込みの良さや堅牢性の高さ、視認性の高さはアドバンテージとなる。
今回のインプレッションを通じて、ムーブメントの基礎体力が高いことも確認できた。一方、DK10 Lは華やかさや、ひと目でそれと分かるデザイン的特徴があるわけではない。これは、優れたツールに徹する設計意図によるものだろう。この点を評価するか否かが、購入を検討する際のポイントとなりそうだ。
なおダマスコは、DK10とかなり近いデザインを持つ「DAJ46 L」をラインナップしている。こちらはムーブメントにETA製 2836-2を搭載し、ケース径が40mmとなって価格は25万3000円(税込み)だ。ケース素材もDK10と同様のアイス硬化ニッケルフリーステンレススチールで、実機を見比べても全体の作りの良さに見劣りはなかった。ダマスコの生真面目さを感じるところである。自社製ムーブメントが絶対条件でなく、38時間というパワーリザーブが気にならなければ、こちらを選択肢に入れるのもありだろう。
かなり盛りだくさんとなったが、深掘り出来そうなところはまだある。それほどダマスコは技術向上に余念がなく、ツールウォッチとしてのパッケージングにも優れている。今回のインプレッションで、筆者の欲しいという気持ちが一段と強くなった。派手さはないが奥深く、頼りになる。そんなツールウォッチを求めるならば、店頭にて手に取って見てほしい1本である。
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