開催から4カ月が経過した「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ(W&WG)2022」。しつこくお伝えしてきた、その振り返りレポート。最終回の第5回は「ポスト・バーゼル」を掲げてW&WGと同時期に開催された「TIME TO WATCHES」のレポートと、ポスト・バーゼルの可能性についてお伝えする。
(2022年8月6日掲載記事)
「ビジネスチャンスが消えた」深刻な影響
W&WGの会場でも、バーゼルワールドの消滅が話題になった。そこで「バーゼルワールドは復活できる?」と質問すると、誰もが即座に「NO」と答えた。
2018年から「バーゼルワールド」の復活・再生に取り組んできたマネージングディレクターが2021年11月にMCH社を去ったこともあり、もはやバーゼルワールドの復活はあり得ない。メッセ・バーゼルを運営するMCH社と地元のバーゼル=シュタット準州が、時計ブランドに出展料を無償にする、運営体制を根本的に変えるなどの「革命」を成し遂げれば別だが。
とはいえ、依然としてその「消滅」にショックを受けている、困っている人は少なくない。さまざまな時計ブランドを一挙に取材する機会を失った筆者も、もちろんそのひとりだが、いちばんショックと深刻な影響を受けているのは、経営規模が中規模以下の時計ブランドだ。
そのショックがいかに大きいものか? 以前、このコラムでも紹介した「ジュネーブの後はロンドンで!」という驚きの提案をぶち上げた、イギリスの時計業界向けウェブメディア「WATCHPRO」。こちらの呼びかけで、W&WG2022と同時期にジュネーブのアートスクールを会場に開催した「TIME TO WATCHES」に足を運んで直感した。
ここを訪れた日本の時計関係者は、このフェアを「バーゼルワールドの5号館みたい」と表現したが、まさにその通り。参加した新進ブランドのブースは熱気で溢れていたが、それとは対照的に中堅ブランドのブースは閑散としていた。
「バーゼルワールドがなくなり、ビジネスチャンスが失われてしまった。第1回だし、とにかく出展してみたが、期待とは違うものでしたね。来年開催されても出展するかどうか。多分出展しないと思う」
これは現場で直接聞いた、出展した中堅ブランドの方の話。
「どこでどう新作をプロモーションすればいいのか? 私たちにはラグジュアリー・コングロマリットのように、各国で大規模な展示会を独自に開催する資金も人材もない。本当に困っている」