美しさにおいて妥協しないハリー・ウィンストン。そんなハイジュエラーが手掛けるラペルピンは、まさに美の結晶だ。選び抜かれたダイヤモンドをちりばめたアイテムは、大人の男性にこそ許された、最高級の愉しみと言える。
吉江正倫:写真 Photograph by Masanori Yoshie
[クロノス日本版 2022年9月号掲載記事]
ハリー・ウィンストンのブランドカラーであるブルーのサファイアを中央に配したラペルピンと、ダイヤモンドのみをあしらったラペルピン。留め具にまでダイヤモンドが用いられている。(左)Pt×サファイア×ダイヤモンド。317万9000円(税込み)。(右)Pt×ダイヤモンド。358万6000円(税込み)。
自分自身も周囲も輝かせるラペルピン
スーツやジャケットの襟元に飾るブートニエール(飾り花)と並んで、大人の男性が楽しめる数少ない装飾品がラペルピンだ。欧米で流行ったブートニエールは、第2次世界大戦後の1950年代に入り廃れていったが、21世紀に入ってからはラペルピンの人気が高まり、メンズファッション史に定着してきた。着け方はいたって簡単。上衿の穴付近に挿して留めればOKだ。
ではいつ着ければいいのか? 日常的なビジネススーツというより、週末の夜やパーティー、結婚式などで着けてはどうだろうか。今回紹介するハリー・ウィンストンのラペルピンはダイヤモンドをちりばめた、まさにラグジュアリーな美を極めた逸品だ。光沢感のある高級な生地を使ったスーツやディレクターズスーツ、タキシードなどのフォーマルウェアにぴったりだ。
さすがダイヤモンドで世界を魅了してきたハリー・ウィンストンだけのことはあり、並のラペルピンにはない存在感を放っている。特筆すべきはダイヤモンドの質だけではない。「HW」のロゴを取り巻くようにラウンドブリリアントカット、マーキースカット、エメラルドカット、ペアシェイプなどのさまざまなダイヤモンドがランダムに配されている。さらに、ブランドのアイコンとされる「クラスター」のデザインを取り入れているのもポイントだ。
クラスター セッティングは、1940年代に考案されたハリー・ウィンストン独自の技法で、ダイヤモンドが肌の上で美しく浮き立つように見えるというもの。もともとはヒイラギのクリスマスリースを覆った雪の結晶がキラキラと輝く様子から生まれた、とてもロマンティックなアイデアである。ダイヤモンドをあらゆる角度でランダムに配置しているため、より多くの光を採り入れることができる、いわばハリー・ウィンストンの象徴とも呼ばれてきたセッティングである。
何に価値を見いだすかは自由だが、美しさを凝縮したラペルピンを用いて、輝く時間を手に入れるというのも、大人の面白い選択だろう。
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