「パンデミックのため、3年ほど日本には来られませんでした。その間、銀座、表参道、大阪、名古屋にブティックができ、大きく変わったにもかかわらず、です。ブティックがオープンし、ウブロのDNAを伝えていくことは大事でしょう」。面白いのは、彼の挙げた4つのブティックだ。多くのメーカーがコンセプトを統一する中、ウブロはむしろ、大きく変えている。
広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2022年9月号掲載記事]
クォリティこそウブロの戦略の中核にある要素です
ウブロCEO。1965年、スイスのヌーシャテル生まれ。スイスのビジネススクールとUCLAを卒業後、ブルガリに入社。7年後、ジャン-クロード・ビバーの知己を得て、ブランパンに転職。1997年にはセールスとマーケティングのディレクターに就任する。2001年に同社を退社するも、ビバーがウブロのCEOに就任した2004年、再びビバーに招聘され、ウブロのプロダクト、マーケティング、販売網の再構築など、すべてを行った。2012年より現職。
「これがウブロらしさだと思っています。ロケーションで店の意匠が違います。表参道店の狙いは入りやすさですね」。他社とは違う方向を行くのはいかにもウブロだ。
「私たちは革新的でユニーク、違いがあるブランドです。カラーセラミックスに注力するのは他社が作るのが難しいから。それに、そもそもオールブラックのセラミックモデルを作ったのは、私たちに歴史がないからです。だからこそ、私たちはブラックという色をコンセプトに掲げたのです」
とはいえ、カラフルとブラックという認識だけでは、今のウブロを見誤るだろう。
「クォリティというのは、ウブロにとって最も中核にある戦略です。というのも、大事なのは消費者の皆さんに喜んでいただけること、だからです」。ウブロは毎年、驚くほどの新作を出しているが、その一方で、品質は明らかに安定した。
「品質を細かくコントロールする部署を作りました。もっとも管理するだけではなく、問題があればレポートは直接私のところに上がってきます」。そんなウブロが、完成度の高いブレスレットモデルを作り、基幹モデルの質感が向上したのは当然だろう。鳴り物入りで表参道店に導入された接客ロボットも、決して〝逆張り〞というだけではないようだ。
「表参道店には、顧客に時計を見せるためのロボットを導入しました。指示があると、適切な時計をピックアップして顧客のところに持って来ます。しかしロボット接客は、そもそもアマゾンの倉庫に着想を得たものです。本当はウブロの工場でこそ役に立つものなのです」。それはどういうことか?
「時計を組み立てる際、時計師に部品を取らせないことが重要だと思っています。密封された環境にある部品庫に時計師が入ると、部品は酸化しやすくなる。ロボットであればその可能性は低くなるでしょう」
目新しさというよりも、品質改善のために導入した技術を店舗に利用する、というのが今のウブロらしい。なお、そんな同社が今後注力するのがクラシック・フュージョンコレクションだ。「今後、セリタと共同で開発した新しいキャリバーを搭載する」とのことだから、これもきっと、今のウブロらしい何か、になるはずだ。
ウブロが注力するカラーセラミックスを前面に打ち出したモデル。微妙な中間色を安定して出せるのがウブロの強みである。2020年に初めて発表されたケース統合型のブレスレットも完成度が高い。自動巻き(Cal.HUB1280)。43石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。セラミックス(直径42mm、厚さ13.45mm)。10気圧防水。世界限定250本。281万6000円(税込み)。
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