近年、高級時計は強盗や組織的犯罪の格好のターゲットになっている。筆者の暮らすパリやその周辺で発生した時計の盗難は、2021年で約250件にも及ぶ(対2020年20%増)。危険と日々直面しながら暮らす私たち時計愛好家やコレクターが持つべき心構えを改めて考えたい。
2022年10月5日掲載記事
盗難から守る3つの対策
美しい機械式時計を所有したり、着用したりすることは、私たち時計愛好家やコレクターを危険にさらすことになる。空き巣や強盗などの件数が近年高まっていることは事実だ。
では、私たちは情熱を捨てるべきなのか、それとも常に恐怖を感じながら生きていかねばならないのか。いや、そうではない。犯罪や違反が当たり前になり、野蛮化していく社会を前に、我たちが適応していくべきなのだ。
そのために、「防犯設備を整える」「TPOに合わせて時計選び」「警戒心を持つ」という3つの対策を挙げよう。
1、防犯設備を整える
空き巣や強盗から自宅を守ることは、高級時計を所有する上で安全を担保するのに欠かせない。それらの90%が玄関から侵入する事実を鑑みると、玄関ドアは頑丈で装甲されたものでなければならない。
次に考えられるのは、遠隔監視サービスを備えた完全な警報システムの導入だ。また時計のコレクションが多い場合、金庫の設置はさらに重要で、保険の観点からも必要なものとなる。
時計の購入を証明する書類や保証書などを、安全な場所に保管することも頭に入れよう。ただし、決して時計と同じ場所にしないように。最後に、「時計・宝飾品」の申告額が実際の資産価値と一致するように、保険証券を更新することをお忘れなく。
外出時には、腕時計のフォールディングバックルがきちんと機能しているか、またストラップ(特に革や布製)の摩擦状況や、ネジやバネなど接続部の腐食や破損なども確認したい。
より高いブレスレットの安全性を望む人のため、オルコス社(Orkos)は「Watchlock」という鍵で開閉方式する特許取得のフォールディングバックルを開発している。
2、TPOに合わせて時計選び
強奪など暴力的な盗難のリスクは、日々の活動や移動手段、行き先に沿った時計選びだけで低減させることができる。
例えば安全な地域に車で通勤するのであれば、ロレックスやオーデマ ピゲ、パテック フィリップ、リシャール・ミルなど高価格帯の腕時計を着用しても問題ないだろう。
治安面で不安のあるエリアや徒歩でバーへ行く時などには、セイコーやハミルトンなど中価格帯の腕時計の着用が適切だろう。
またアクティビティに興じたり、屋外で1日中飲んで過ごすというような日には、G-SHOCKなどのカジュアルウォッチが賢明な選択肢だ。
3、警戒心を持つ
高級時計を身につけるには、用心深さが必要な時代である。私たちを取り巻く環境、周囲の人々、通過する場所などを分析し、危険を予知したり回避したりすることは、まさに必要不可欠なものとなっているのだ。予防に勝る安全策無しである。
高級時計の着用時に周辺環境の安全が確保されていない場合は、自分の動作や慣習を考慮する必要がある。
これは例えばカフェのテラスで最前列ではなく奥の方に座るとか、時計を左手首に着用しているのであれば地下鉄で手すりにつかまる時に右手を使ったり、電車では腕を組んで時計が見えないようにしたり、一時的に時計をシャツの袖の下に隠したりといったことだ。特に、突然周りに現われた一団に高級時計を見せながら時間を教えてあげるようなことは避けるべきだ。
美しい時計や稀少な時計を着用することを恐れるべきではない。しかし、不穏な現代の社会状況によって、私たち自身も気を配り、先読みをする必要がある。
万が一、盗難にあったら
しっかりと注意をしていたにも関わらず、それでも大切な時計が盗難にあってしまった場合、迅速に最寄りの警察に届け出る必要がある。
そして、担当調査官がきちんと時計の詳細情報やシリアルナンバーを記録できるように説明する必要がある。その後の調査の進捗をうまく運ぶために、非常に重要なことだ。
最後に、時計メーカーに時計が盗難にあった事実を伝えてほしい。警察や中古時計の購入希望者が盗難品かどうかを確認できるよう、データベースを充実させていくことも重要だ。
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