スイス時計業界復活の立役者のひとり、ジャン-クロード・ビバーを顧問に迎えたノルケインが期待を背負い、満を持して披露された新作「ワイルド ワン」。インディペンデンス コレクションをベースとしながら独自の新素材やケース構造を採用し、躍進を続けるノルケインらしさがあふれるスポーツモデルに仕立てた。
2022年10月14日掲載記事
新進気鋭の若きスイスブランド、ノルケインの情熱が生んだ新作
ノルケインはCEOのベン・カッファーによって2018年に設立された、従業員の平均年齢が35歳ほどの非常に若くアグレッシブな独立系ブランドだ。2022年6月、これまで複数の時計ブランドでヒット作を生み出してきたことで広く知られる、ジャン-クロード・ビバーを取締役会顧問として迎え入れたことで大きな話題を呼んだ。“スイス時計の未来を拓く”という、ノルケインが掲げるミッションに共感し、強力なタッグのもとで開発された新作「ワイルド ワン」は、そんなブランドの革新的な姿勢を示すモデルである。
ワイルド ワンのレギュラーモデルは、カーキ/ブラックとブルー/ブラックの2カラーを用意。素材の特性上、新たなカラー展開も期待される。自動巻き(Cal.NN20/1)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。ノルテック×ラバー製ケース(直径42mm、厚さ12.3mm)。200m防水。各76万6700円(税込み)。
ワイルド ワンの革新性のひとつは、独自素材「NORTEQ(ノルテック)」を外装パーツに採用したこと。新興ブランドでありながら新素材を採用できた理由は、ジャン-クロード・ビバーとともに新たなスイスのサプライヤーチームをつくり、さまざまな分野に長けた開発力を味方に付けたからである。このノルテックを生み出したのは、ストラップのサプライヤーとして大きなシェアを誇るBIWI(ビィウィ)で、ワイルド ワンのコンセプトワーク、デザイン、素材の開発を担った。
この表情豊かなノルケイン独自の素材、ノルテックは、カーボンファイバーと、バイオ由来原料を60%含む高性能ポリマーマトリックスを融合したカーボン複合素材だ。軽量で高い剛性を持つカーボン素材としての特性と、自由自在な発色が可能なポリマー素材の利点を併せ持つ。
その重量は、一般的なステンレススティールの約6分の1で、軽量なチタンと比較しても約3分の1という軽さだ。加えて、ノルテックの生産工程において余った部分は、100%リサイクル可能だという。革新的でありながら地球環境にも配慮する、ブランドの姿勢が表れたハイテク素材である。
外装に表れる、サプライヤーの結集力
ノルテックを用いるケース構造は、他に類を見ないものだ。ケニッシ製のキャリバーNN20/1を搭載しながら、本作の耐衝撃性能はなんと約5000G。計25個のパーツから成り、BIWIによるラバー製のラグ一体型ミドルケースが、ショックアブソーバーとしての役割を果たす。
このミドルケースを挟み込むように組まれるのが、ノルテック製のベゼルとケースバックで、4本のネジによって固定されている。またミドルケースの内部にあるムーブメントは、チタン製の“コンテナ”に格納することでしっかりと保護。弾性のある素材を高硬度の素材で覆うことで、振動や衝撃に耐えるだけの衝撃吸収性能を備えることに成功したのだ。
もうひとつ、ワイルドワンの革新性を示すコンポーネンツはダイアルだろう。スイスの山々を表現し、ノルケインの「N」ふたつを組み合わせたロゴマークをパターン化したデザインで、加工はレーザーカットによるもの。ダイアル専門のサプライヤー、Montremo(モントレモ)が手掛け、パターンに0.05mmずつの高低差を設けることで立体感を強調。表面のカラーリングは粉体塗装によるものだ。
それから本作のラバーストラップもBIWIによるもので、しっとりとした質感で厚みのある高品質なものだ。ノルケインは2021年7月、時計製造における動物虐待をなくすことを宣言し、「すべての新製品にはレザーストラップをはじめ革製品を使用しないこと」「すべての既存モデルのレザーストラップは段階的に廃止すること」というルールを掲げている。ワイルド ワンではそのルールにのっとり、動物由来の素材を一切使用していない。
素材の特性を活かした2種の限定モデル
今回発表されたワイルド ワンは、2種のレギュラーモデルに加え、2種の限定モデルが披露された。
1種類目は、ケースのノルテックをバーガンディカラーに染めた200本の限定モデル。前述したように、ノルテックは特殊なポリマーマトリックス素材を含むため、自由に色を調整することが可能である。本作はカラーノルテックを製品化した最初のモデルだ。なお、2023年以降は他のカラーバリエーションも発表されるという。
グレーのダイアルに、ゴールドカラーの針とインデックスが主張するリミテッドエディション。自動巻き(Cal.NN20/1)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。ノルテック×ラバー製ケース(直径42mm、厚さ12.3mm)。200m防水。世界限定200本。79万9700円(税込み)。
そして2種類目は、ノルケインのアンバサダーを務めるディーン・シュナイダーとのコラボレーションモデルだ。野生動物の保護活動家である彼の意見がデザインに反映されている。ダイアルはノルケインロゴのパターンではなく、ライオンの毛並みをモチーフとした模様が施され、6時位置には彼が設立した南アフリカの自然公園「ハクナ ミパカ オアシス」のロゴがあしらわれる。
ライオンを想起させるパターンは、ダイアルだけでなくラバーストラップの表面にも施される。ケースバックには「私たちは、動物がこうあってほしいという願望ではなく、そのありのままの姿を愛することを学ぶ必要があるのです」という、ディーン・シュナイダーの英語でのメッセージが刻まれている。自動巻き(Cal.NN20/1)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。ノルテック×ラバー製ケース(直径42mm、厚さ12.3mm)。200m防水。世界限定500本。78万8700円(税込み)。
特筆すべきはサンドカラーのミドルケース。他モデル同様にラバー製のショックアブソーバーだが、ハクナ ミパカ オアシスの砂を直接ラバーに混ぜ込んでいるため、表面に砂の粒が確認できる。大胆な発想であり、まさにノルケイン、ディーン・シュナイダー、BIWIのパートナーシップによるものだろう。
ワイルド ワンの誕生によって、再び大きく前進したノルケイン。大胆な発想と行動力によって新しいモノを生み出す若きブランドの姿勢は、これからも時計業界に大きな影響を与え続けるだろう。
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