ヴァシュロン・コンスタンタンは、非常に長い歴史を持つ時計ブランドだ。創業者のジャン=マルク・ヴァシュロンが自身の工房に初めて職人を雇ったのが1755年であり、この年がブランドの創業年とされている。
創業から今日に至るまで、時計作りの知識や貴重な職人技の継承と尊重が、ブランドの中で重要な位置を占めることとなった。ヴァシュロン・コンスタンタンはスイス・ジュネーブを拠点としており、ローヌ川の中洲に位置するケ・ド・リルは、約100年間ヴァシュロン・コンスタンタンの本社が置かれていた。2004年以降は、ジュネーブ郊外のプラン・レ・ワットが生産の本拠地と国際的な本社となっている。
今回は、そんなヴァシュロン・コンスタンタンの5つのポイントについて紹介する。
1. 史上最も複雑な時計のひとつ「リファレンス 57260」
57個もの複雑機構を搭載したリファレンス 57260。搭載するCal.3750は2800個以上の部品が直径72mm、厚さ36mmに収まる。手巻き(Cal.3750)。242石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KWGケース(直径98mm、厚さ50.55mm)。
2015年、ヴァシュロン・コンスタンタンはブランドの創業260周年を記念して「リファレンス 57260」を発表した。これは、合計57個もの複雑機構を搭載した懐中時計である。そのなかには、ユダヤ暦の永久カレンダーや天文表示、世界24都市のワールドタイム表示、ダブルレトログラード・スプリットセコンド・クロノグラフなどが含まれている。
なお、搭載されている複雑機構の内訳を述べると、6個の計時機能、7個のパーペチュアルカレンダー機能、8個のユダヤ暦カレンダー機能、9個の天体カレンダー機能、1個のムーンフェイズ機能、1個の宗教暦カレンダー機能、4個のトリプル・コラムホイール・クロノグラフ機能、7個のアラーム機能、8個のウエストミンスター・チャイム機能、そして秘密の仕掛けを含む6個のその他の機能となっている。
2. コレクションごとに異なるブルーダイアル
自動巻き(Cal.2460 R31R7/3)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KPGケース(直径42.5mm)。638万円(税込み)。
ヴァシュロン・コンスタンタンのような高級ブランドは、細部の仕上げにおいて、他の時計メーカーとは一線を画している。ヴァシュロン・コンスタンタンは長年にわたり、美しい文字盤を備えた腕時計を世に送り出してきた。例えばブルーダイアルの色合いは、コレクションごとに異なっている。
「オーヴァーシーズ」コレクションのブルーは、ガルバニック加工によるブルーとラッカーの組み合わせで生み出されている。ヴァシュロン・コンスタンタンが「マジェスティックブルー」と呼ぶ「パトリモニー」コレクションのブルーダイアルにも、ガルバニック加工が施されている。そして「フィフティーシックス」のぺトロールブルーは、PVD加工によるものだ。
自動巻き(Cal.2160)。30石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約80時間。SSケース(直径42.5mm)。5気圧防水。参考価格1632万円(税込み)。
自動巻き(Cal.2460 QCL/1)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。SSケース(直径40.0mm、厚さ11.6mm)。3気圧防水。376万2000円(税込み)。
3. 傾斜した文字盤を持つ「アメリカン」
1921年、ヴァシュロン・コンスタンタンは「アメリカン 1921」という特別な腕時計を作り出した。文字盤が45度傾いており、12時のインデックスはリュウズがついているケースの角に配されている。これはアメリカで24モデルが生産され、2種類のバリエーションがあった。
ひとつは、リュウズと12時のインデックスが左上(通常の腕時計の10時位置と11時位置の間)に配されており、もうひとつは右上(通常の腕時計の1時位置と2時位置の間)に配されたものである。
2008年、ヴァシュロン・コンスタンタンはこのモデルを復刻し、自社製キャリバー4400を搭載して世に送り出した。21年にはアメリカン 1921の誕生100周年を記念し、オリジナルモデルを忠実に再現したユニークピースが製作された。
手巻き(Cal.4400AS)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KPGケース(直径36.50mm、厚さ7.25mm)。3気圧防水。523万6000円(税込み)。
4. レトログラード表示を採用した時計
ヴァシュロン・コンスタンタンはあらゆる複雑機構を熟知しており、なかでもレトログラード表示を得意としている。1930年頃、当時まだ「ヴァシュロン&コンスタンタン」と呼ばれていた工房は、「bras-en-l’air(空中の腕)」と呼ばれる懐中時計を生産した。2本の針が、時分のレトログラード表示を行うものだ。
レトログラード表示の特徴は、表示の最終部分に差し掛かるとポインターが起点に戻り、そこから再び計測を行うということである。90年代、ヴァシュロン・コンスタンタンは地図製作者であり地理学者であるゲラルドゥス・メルカトル(1512-1594)をオマージュした腕時計で注目を集めた。メルカトル図法で描かれた地図があしらわれた文字盤に2本の長い針が配され、それぞれが時分を表示する。
5. クラフツマンシップ
自動巻き(Cal.2460 G4/2)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KWGケース(直径42mm)。3気圧防水。予価2200万円。
ヴァシュロン・コンスタンタンでは、フランス語で「メティエ・ダール」と呼ばれるクラフツマンシップが大きな役割を果たす。エングレービング、ギヨシェ、ジェムセッティング、エナメルは、ブランドの重要な技術だ。多くの経験と技術を必要とするこれらの技術は、すべてジュネーブの工房で作業が行われており、長年働いている従業員も多い。これらの技術を複数組み合わせた時計が、ヴァシュロン・コンスタンタンでは毎年発表されている。
最近のモデルとしては「メティエ・ダール - 偉大な文明へ敬意を表して」がある。2019年に始まったヴァシュロン・コンスタンタンとルーヴル美術館のパートナーシップから製作されたもので、全4種、各限定5本のレアなモデルだ。テーマに選ばれたのは、ダレイオス王のライオン、サモトラケのニケ、アウグストゥス帝の胸像、タニスの大スフィンクス。文字盤の中央には彫金細工が、各時代の特徴的な装飾とともにあしらわれている。また「ダレイオス王のライオン」には楔形文字、「サモトラケのニケ」にはギリシャ文字、「アウグストゥス帝の胸像」にはラテン文字、「タニスの大スフィンクス」にはヒエログリフが刻まれている。
時・分・日付・曜日の表示は、文字盤の2時・4時・8時・10時位置に配されており、その動きは搭載された自社製キャリバー2460 G4/2が司る。これらのモデルはヴァシュロン・コンスタンタン ブティック限定で、予価2200万円となっている。
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