オメガ、チューダーなど6ブランドからピックアップ！高い耐磁性を備えた腕時計6選

私たちは日々、磁場のある環境に身を置いている。携帯電話、IH調理器、冷蔵庫、バックの磁石式留め金などがその発生源だ。watchtime.netの調査によると、ジンのカスタマーサービスに寄せられた腕時計約1000本のうち、約60%が磁場の影響を受けていたそうだ。このような状況において、時計ブランド各社は高い耐磁性の実現に取り組み続けてきた。今回は、高い耐磁性能を備えた6つのモデルを紹介する。

オメガ「スピードマスター ムーンウォッチ マスター クロノメーター」

　オメガは1万5000ガウスという超耐磁性能と高い等時性を持つ独自のマスター クロノメーター規格を、2015年にスイス連邦計量・認定局（METAS）と共同で制定。新しいモデルを順次マスター クロノメーターに置き換えていった。そして2021年の「スピードマスター ムーンウォッチ マスター クロノメーター」発表をもって、オメガのアイコンコレクション「スピードマスター」の定番モデルにも、マスター クロノメーターが採用されることとなった。

　スピードマスター ムーンウォッチ マスター クロノメーターには、コーアクシャル エスケープメントやシリコン製ヒゲゼンマイを採用した手巻きキャリバー3861が搭載されている。ケース素材は、ステンレススティール、18Kセドナゴールド、18Kカノープスゴールドの3種類。どのモデルも、5年間の国際保証が適用されている。

チューダー「ブラックベイ セラミック」

　マットブラックのセラミックスケースに、METASによるマスター クロノメーター認定を受けた自社製の自動巻きキャリバーMT5602-1Uを搭載する「ブラックベイ セラミック」。このモデルによって、それまでオメガが独占していた超耐磁性能を、チューダーも獲得することになった。この認証制度により、1万5000ガウスの磁場環境にさらされた状態でも、時計の計時精度は日差が5秒以内（0～+5秒）に収められる。このムーブメントは、C.O.S.C.の認証も取得している。

　ブラックベイ セラミックに搭載されているキャリバー MT5602-1Uは、耐磁性のあるシリコン製ヒゲゼンマイを採用し、時・分・秒表示を行う。ムーブメント全体はブラック加工が施され、モノブロック構造のタングステン製ローターにはオープンワーク仕様が施されている。ケースとダイアルをブラックで統一することで、チューダーの特徴であるスノーフレークの針や力強いアプライドインデックスの存在感を際立たせている。

カルティエ「パシャ ドゥ カルティエ」

　1985年に誕生し、2020年にリニューアルされた「パシャ ドゥ カルティエ」。オリジナルモデルのデザインを継承しながらも、耐磁性や巻き上げ効率などが大きく向上している。エレガントな3針モデルはシャツのカフの下にもすっきりと収まる直径41mm、厚さ9.55mmと、直径35mm、厚さ9.37mm、そして女性用の直径30mm、厚さ8.22mmだ。41mmモデルと35mmモデルは、10気圧の防水性能を誇る。

　搭載されている自社製の自動巻きキャリバー1847 MCは、約40時間のパワーリザーブを保持する。耐磁性を高めるため、カルティエは非帯磁素材であるニッケル・リン合金を脱進機に採用。同じ目的で、常磁性合金製のインナーケースも採用されている。これにより、パシャ ドゥ カルティエは1200ガウスの磁場に対し耐性を備えている。

ゼニス「デファイ エル・プリメロ 21 カーボン」

　2017年、ゼニスは100分の1秒まで計測可能なクロノグラフムーブメント「エル・プリメロ」を完成させた。「デファイ エル・プリメロ 21 カーボン」は、自社製の自動巻きキャリバーであるエル・プリメロ 9004、通称「エル・プリメロ21」によって駆動する。このムーブメントはクロノグラフ機能用に50Hz、計時用に5Hzで動作するふたつの独立した高振動脱進機を備えている。

　エル・プリメロ 9004に搭載されているクロノグラフ用、計時用の脱進機はいずれも、温度変化と磁場の影響を受けないカーボンナノチューブを採用したヒゲゼンマイを備えている。

IWC「ビッグ・パイロット・ウォッチ 43・スピットファイア」

　2003年より、IWCのパイロットウォッチコレクションとして展開される「スピットファイア」。IWCのパイロットウォッチの歴史は1936年にさかのぼる。この頃、IWCは民間航空を対象として、耐久性と耐磁性能に優れた初代パイロットウォッチモデルを誕生させた。そして48年には英国空軍の要請を受けて、軍用モデルにおける名機「マーク11」の開発に成功する。パイロットモデルとしてシリーズ化されたマークシリーズのうち、スピットファイアはエレガントなデザインを得意とする。

　IWCのパイロットウォッチは日常使いしやすい点でも人気だ。その理由は高い精度や視認性、防水性能にはじまり、衝撃や温度差、そして磁場にも強いずば抜けた堅牢性を備えている点にある。例えば初期のIWCのパイロットウォッチは軟鉄製のインナーケースを備え、1000ガウス以上の磁場からムーブメントを保護していた。これは現行の「ビッグ・パイロット・ウォッチ 43 スピットファイア」にも採用されており、さらに二重のケースバック、ムーブメント固定リング、デイト表示の窓がない文字盤などによって強化されている。

　文字盤のデザインは、パイロットにとって重要度が低い時間表示を内側の円で示した「クラシックモデルB」と呼ばれた歴史的な仕様を踏襲したものだ。針にはベージュの蓄光塗料が塗布され、方向を示す三角形がふたつのドットと共に12時位置に配されるなど、正統派パイロットウォッチ然たる佇まいである。

ジン「EZM13.1」

　ジンが、ドイツ警察と関税局に属する特殊部隊のために開発し、1997年に発表されたブランド初のミッションタイマー「EZM1」。2022年に発表された派生モデル「EZM13.1」は、安定性と堅牢性を高めるためのジン独自の技術や機能が数多く搭載されている。

　例えばそのひとつが、軟磁性素材を使用したインナーケースにより磁器を遮断し、8万A/mの防磁性能を実現した「マグネチック・フィールド・プロテクション」だ。他にも精度の安定と風防の曇りを防止する「Arドライテクノロジー」、－45℃～＋80℃までの状況下でも刻時精度を維持する「ジン特殊オイル66-228」などが挙げられる。クロノグラフキャリバーSZ02は、経過時間を素早く直感的に読み取れるよう、文字盤の6時位置に60分積算計を配している。