トゥールビヨン付き懐中時計の製作など、多くの時計師に刺激を与えた独立時計師、ジョージ・ダニエルズ。彼は、オメガの時計に搭載されている「コーアクシャル脱進機」を発明したことでも有名だ。そんなジョージ・ダニエルズ製作の腕時計3本が、フィリップス主催の「ジュネーブ・ウォッチ・オークションXVI」に出品された。今回はその落札結果をお伝えする。
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ジョージ・ダニエルズ製作の腕時計が「ジュネーブ・ウォッチ・オークションXVI」に出品
2022年11月5日から6日にかけて、フィリップスがバックス&ロッソと共同で行った「ジュネーブ・ウォッチ・オークションXVI」。その中でも注目を浴びたのは、“独立時計製造の父”と呼ばれたジョージ・ダニエルズの製作した腕時計である。出品されたのは、独創的なスプリングケース構造を備えた「スプリングケース トゥールビヨン」、コーアクシャル脱進機35周年を記念した「アニバーサリー ウォッチ」、オメガ製ムーブメントを改良し、豪華なギヨシェ装飾を施した「ミレニアム ウォッチ」の3本だ。
オークションの開始にあたり、フィリップスのヨーロッパと中東地域のウォッチ部門責任者を務めるアレクサンドル・ゴトゥビは次のように述べた。
「ジョージ・ダニエルズは、時計史上最も偉大な時計師のひとりです。ダニエルズにとって時計とは、歴史、知性、技術、デザイン、娯楽要素、そして有用な品質を備えるものであり、それこそがダニエルズ自身の創作上の信念でもありました。今回出品された3本は間違いなくそれに当てはまるものといえます。ダニエルズの遺産は、彼に続く時計職人に何世代にもわたって影響を与え続けるでしょう」
「スプリングケース トゥールビヨン」が約6億473万円で落札
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「スプリングケース トゥールビヨン」は、ダニエルズのさまざまな発明を取り入れた、華麗な代表作のひとつである。ダニエルズは、この腕時計を2本のみ製作した。今回出品されたのは、そのうち1992年に完成した1本だ。
時計はシンプルな外見ながら、“スプリング”ケース構造を採用した珍しい仕様で、時計の両面に表示機能を備えている。文字盤側は、ダニエルズの伝統的な手法である精巧なギヨシェ装飾の施されたシルバーダイアルに、時間、分、秒を示すゴールドの偏心チャプター、そしてパワーリザーブ表示用のスモールセコンドを備えている。ケースバック側にはカレンダー表示とトゥールビヨン脱進機を見ることができる。
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ケースはムーブメントを収納するインナーセクションがヒンジでアウターセクションに固定されており、プッシャーで開放するとバネで開き、ケースバック側の文字盤が見えるようになる。これをすっきりと見せるため、巻き上げのリュウズはラグ間に配されている。ダニエルズの作品のシグネチャーであるトゥールビヨンは、1分間で1回転し、ダニエルズ考案のコーアクシャル脱進機を備えている。1978年に考案されたダニエルズのコーアクシャル脱進機はその後彼の時計すべてに搭載され、オメガや、後年に彼の弟子となるロジャー・W・スミスにも採用された。
ダニエルズはこの腕時計を大変気に入り、毎日着用していたが、2005年に友人に売却を説得され、不本意ながら手放すことにした。今回初めてオークションに出品され、100万スイスフラン(約1億4809万円)の落札予想価格に対し、408万3500スイスフラン(約6億473万円)で落札された。
「アニバーサリー ウォッチ」が約1億263万円で落札
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2010年に作られた「アニバーサリー ウォッチ」は、ダニエルズによるコーアクシャル脱進機の発明から35周年を記念して、世界で35本が製作された腕時計である。18Kイエローゴールドのケースは直径40mmで、エレガントなフォルム、シンプルで見やすい文字盤は、いかにもダニエルズの作品らしい、他と一線を画する特徴を備えている。30万~60万スイスフラン(約4443万円〜約8885万円)の落札予想価格に対し、69万3000スイスフラン(約1億263万円)で落札された。
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「ミレニアム ウォッチ」が約1億2271万円で落札
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ダニエルズが1970年代に開発して80年に特許を取得し、オメガが99年に量産化に成功したコーアクシャル脱進機。この新しい脱進機の市場投入を記念して作られたのが「ミレニアム ウォッチ」だ。
2000年に48本が製作されたこの時計は、コーアクシャル脱進機を搭載したオメガ製ムーブメントを大幅に改良し、ダニエルの特徴であるギヨシェ装飾を施している。25万~50万スイスフラン(約3702万円〜約7405万円)の落札予想価格に対し、82万8600スイスフラン(約1億2271万円)で落札された。
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