1978年に発売された、タグホイヤー初のダイバーズウォッチに始まる「アクアレーサー」コレクション。2021年に登場した「アクアレーサー プロフェッショナル 300」には、剣型の針、8角形のインデックス、調整可能なフォールディングクラスプ、6時位置の日付表示などが新たに採用された。実際に着用してみると、ダイビングだけでなく普段使いにも最適なモデルであることがわかった。
自動巻き(cal.5)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。C.O.S.C.認定クロノメーター。SSケース(直径43mm)。300m防水。40万7000円(税込み)。
さまざまなシーンで活躍する“オールラウンダー”なダイバーズウォッチ
「アクアレーサー」は、タグ・ホイヤーというブランドの中で、ふたつの重要な任務を担っている。まず、主にレーシングと結び付きの深いブランドとして、レーシングウォッチを中心としたスポーツウォッチのラインナップを補完すること。
そしてもうひとつは価格帯において、エントリーレベル・コレクションの「フォーミュラ1」と、「カレラ」や「モナコ」などのクロノグラフモデルの架け橋となっている点である。今回レビューに選んだ新世代のダイバーズウォッチ「アクアレーサー プロフェッショナル 300」は、税込み40万7000円だ。
視認性確保のための工夫が凝らされたダイアル
アクアレーサー プロフェッショナル 300は、そのデザインからも日常使いしやすい高品質なスポーツウォッチであることが分かる。コレクションの特徴である12角形の逆回転防止ベゼルには、セラミックス製インサートが配され、ケースの厚さは12.2mmに抑えられている。
文字盤に配された立体的なインデックスも個性的だ。12時、3時、6時、9時以外の8つのインデックスは、丸ではなく8角形をしている。インデックスはいずれも面取りが施されており、針と同様にたっぷりとスーパールミノバが塗布され、暗所でも高い視認性を確保している。
インデックス、針、ベゼルのゼロトライアングルに塗布されたスーパールミノバは同じ光量で輝くため、デザインとしてもまとまりのある印象を与える。タグ・ホイヤーは、ダイビング機能のカラーを時刻と区別することにも配慮した。時針とインデックスに施されているのはグリーンのスパールミノバだが、分針とベゼルのトライアングル、秒針の先端部分はブルーのスーパールミノバだ。これにより、暗所でも見分けがつきやすくなっている。
また、幅の太い剣型の時針と幅の細い分針が採用されており、ふたつの針が見分けやすいようになっている。1点だけ視認性を下げる要素があるとすれば、文字盤外周にある分目盛りに配された30秒単位のマーカーだろう。特に、対応する針が目盛りに達しないため、正確な分を読み取ることが難しくなっている。
それ以外の視認性は、日付拡大レンズも含めて非常に良好だ。日付表示は従来の3時位置から6時位置に変更され、サファイアクリスタルの内側に組み込まれるようになった。これは技術的に難しいことだが、風防表面が完全に平らになるという利点がある。デザインの点において、この日付拡大レンズは好みが分かれるだろう。長方形の日付窓に丸い拡大レンズの組み合わせは確かに万人受けしないし、その下の数字は斜めから見ると歪んでしまう。
高い操作性と使いやすいブレスレット
操作性もまた、視認性同様に良好である。握りやすい大型のねじ込み式リュウズは、回しやすく引き出しやすい。そしてストップセコンド機能やクイックデイト調整が標準装備され、表示の修正がしやすくなっている。回転ベゼルの機構も改良された。ミニッツリングはしっかりと固定できるようになり、ベゼルのすべての面に刻みが施されている。
ただし、ベゼルのグリップ感はあまりよくない。これはタグ・ホイヤーがデザインにおいて、一種のエレガンスを求めた結果だろう。ベゼルは意図的に平らに保たれており、ケースサイドからはみ出ることもない。アクアレーサー プロフェッショナル 300は、ウォータースポーツのための道具であるだけでなく、シャツやセーターの袖に軽やかに収まる、スポーティーでエレガントな時計でもある。マット仕上げのケースに施されたポリッシュ仕上げの面取りからも、エレガントな雰囲気が漂っている。
アクアレーサー プロフェッショナル 300の機能性とエレガンスの両立は、ブレスレットの開閉部分にも見出すことができる。片開きのフォールディングクラスプには、7段階で合計15mmまで素早く伸縮することができるエクステンションが備わっているのだ。クラスプは優れた構造で使いやすいだけでなく、タグ・ホイヤーのエンブレムが配されて、控えめながら美しく仕上がっている。いずれも日常使いに適したセンスの良いデザインだ。
ブレスレットはシンプルな仕上がりで、サテン仕上げとポリッシュ仕上げの組み合わせに、作りの良さを感じさせる。ブレスレットはピンで固定され、すき間は広めにとってあるため、コマの間に毛を挟んでしまうことはないだろう。
全体的に装着感は非常によく、178gという総重量も手首によくなじむ。
スキューバダイビングもOKな300m防水
細身のシルエットながら、アクアレーサー プロフェッショナル 300は300mの防水性能を備えており、スキューバダイビングにおける十分な規格を有している。ダイビングヘルメットをかたどったケースバックのレリーフが飽和潜水にも適していることを暗示しているが、この時計にはヘリウムエスケープバルブは搭載されていない。精緻なレリーフは特殊なねじ込み構造により、常に同じ位置が保たれる。
ケースバックはトランスパレント式ではないため、搭載されているキャリバー5の鑑賞ができない点は我慢のしどころだ。キャリバー5は、セリタのSW 200をベースムーブメントとし、その堅牢性と性能において、スポーツや日常使いの頑丈な相棒として素晴らしい適性を見せている。
watchtime.netで独自で精度テストを行ったところ、日差は平均で7.2秒と許容範囲内であり、各姿勢差における偏差は最大4秒であった。
アクアレーサー プロフェッショナル 300は、さまざまなシーンに対応するオールラウンダーとして信頼性できるモデルである。ダイビングだけでなく、日常使いを想定して作られたモデルであることは明らかだ。だからこそ、デザインや構造の細部を見るべきだろう。そして、視認性、堅牢性、あるいはエクステンションブレスレットなど、ダイバーズウォッチとしての利点は、陸上でも大いに役立つ。アクアレーサー プロフェッショナル 300は、ダイビングを楽しむ休日やアフターファイブとオフィスでの日常使いを結ぶ、バランスの取れたモデルといえるだろう。
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