ハリー・ウィンストンのスポーティーエレガンスを代表し、時計と宝飾における最高の技術を体現する「HW オーシャン」コレクション。バイレトログラードをあしらったアイコニックピースを引き立てるのは、「キング・オブ・ダイヤモンド」ならではの贅沢な装飾だ。まばゆい輝きで存在感を主張する腕時計は、時を告げる稀少な宝石へと姿を変えた。
菅原茂:文 Text by Shigeru Sugawara
Edited by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2023年1月号掲載記事]
HARRY WINSTON
The Climax of Glittering High Watchmaking
ハリー・ウィンストンの腕時計の本質を最も端的に言い表す言葉が「アルティメイト・タイムピース」だ。ニューヨークに本店を構え、世界有数のハイジュエラーとして名声を誇るハリー・ウィンストンが腕時計の分野に初めて進出した1989年に、ブランド名に添えたのが「究極の時計」だった。
そう自称するからには、確たる裏付けが必要だが、ハリー・ウィンストンにとってそれはまず「キング・オブ・ダイヤモンド」に象徴されるウィンストニアンスタイルの卓越した宝飾技術である。そして腕時計も、既存のジュエラーズウォッチに類したものではなく、ハリー・ウィンストンでしか手に入らないような独自のコンプリケーションを搭載するモデルが大半を占める。つまり、稀少価値絶大なハイエンドのマスターピースの創作に専念し、「究極の時計」というコンセプトを今日まで貫いてきたわけである。
バイレトログラードを搭載する「HW オーシャン」でもダイヤモンドによる装飾は標準仕様。ハイウォッチメイキングとハイジュエリーを融合し、ラグジュアリーを極めた腕時計だ。自動巻き(Cal.HW3305)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KWG(直径42.2mm、厚さ10.6mm)。バックルも含むラウンド・ブリリアントカット・ダイヤモンド合計367個(約4.50ct)。1106万6000円(税込み)。
スポーティーエレガンスの象徴的なモデル「HW オーシャン・バイレトログラード オートマティック42mm」もそのひとつ。12時位置に時・分表示のオフセンターダイアルを配し、これを挟んで30秒ごとに反復するレトログラード式の秒表示と、同じくレトログラード式の曜日表示を左右対称に並べ、6時位置に日付表示を置く独特のダイアルレイアウトが特徴のこのモデルは、素材やデザイン、宝石、サイズなどが異なるバリエーションを展開し、男女を問わず人気を博してきた。
ドレスアップした男性に似合いそうな直径約42mmの「HW オーシャン・バイレトログラード オートマティック」の場合、注目すべきは、絶妙なダイヤモンドのセッティングである。文字盤の下地を成すのは繊細なギヨシェ模様が刻まれた乳白色のマザー・オブ・パールだ。そこに、オフセンターダイアルやバイレトログラード、日付、そして、ダイヤモンドを象徴する三角モチーフを配置するためのスペースをホワイトゴールドによって設け、ホワイトゴールドの地金を石留めの台にして127個に及ぶ多くのラウンド・ブリリアントカット・ダイヤモンドがセットされている。
そして、オフセンターダイアルでは大小のグラデーションになったダイヤモンドがインデックスの間に24列並び、左右のレトログラード目盛り外周にもダイヤモンドが優美な円弧を描く。日付も含め、この腕時計が表示するあらゆる要素がダイヤモンドのまばゆい輝きに包まれているのである。
(右)リュウズを囲むニューヨーク本店のファサードから着想した特徴的なモチーフやラグは、巧妙なセッティングにより大小のダイヤモンドで埋め尽くされている。
(左)ベゼルは幅いっぱいに1列の大粒のダイヤモンドをセット。ミドルケースの9時側側面とラグ側面も整然と並ぶ2列のダイヤモンドが流れるようなラインを描く。あらゆるダイヤモンドがホワイトゴールドの地金と寸分たがわず一体化し、凹凸の一切ない平滑面を成しているところが絶妙だ。まさにジェムセッターの卓越した技術の賜物である。
ホワイトゴールドの外装も同様だ。ダイアルを引き立てるベゼルやハリー・ウィンストンのニューヨーク本店のファサードから着想したというリュウズを囲むモチーフ、ラグ、ケース側面など全面に196個のラウンド・ブリリアントカット・ダイヤモンドがセットされている。ダイヤモンドによる装飾といっても、微小な石を隙間なく敷き詰めるパヴェセッティングの技法とは違い、比較的大粒のダイヤモンドを光の反射率を最大限に引き出す宝飾品の石留め技法を用い、宝石の一粒一粒が明瞭に存在感を主張するように作り上げているところにこのモデルの本質がある。
それこそがハリー・ウィンストンの真骨頂なのだ。時計があくまでも主で、ダイヤモンドは「飾り」という従の立場にあるのではない。言い換えれば、これは高度な時計機構を併せ持つ稀少なダイヤモンドジュエリーなのであり、まさしく「キング・オブ・ダイヤモンド」がクリエートする「究極の時計」に他ならないのだ。
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