2022年12月1日、ロレックスはウェブサイト上で認定中古時計の販売をアナウンスした。これはロレックスが2年間の保証を付けた時計を、正規販売店で売るというもの。長らく中古ビジネスに距離を置いてきたロレックスの動きは、今後、時計業界を大きく変えるかもしれない。
2022年12月5日掲載記事
ついにサービスを開始したロレックスの認定中古
最近、各時計メーカーが注目するのが、いわゆる認定中古(CPO:Certified Pre-Owned)だ。メーカーが整備し、メーカー認定の保証書を付けて中古時計を売るという自動車業界では当たり前となったこのビジネスに、さまざまな時計メーカーも取り組むようになった。背景のひとつには、間違いなく中古市場の拡大がある。関係者によって意見はさまざまだが、少なくとも、時計の中古市場は、新品の市場と同程度まで成長する、という意見は少なくない。
中古市場から距離を置いてきたロレックスも、2022年の12月上旬から、CPOのスタートをアナウンスした。まず展開されるのは、6カ国(スイス、ドイツ、オーストリア、フランス、デンマーク、イギリス)のブヘラブティック。販売対象となるのは製造から3年以上が経過したロレックスの時計で、そのすべてにはブヘラではなく、ロレックスによる2年間の国際保証が付く。
ロレックスCPOプログラムで最初のパートナーとなったのは、スイスを中心にヨーロッパ全域でウォッチビジネスを展開するブヘラだ。創業1888年の同社は、ヨーロッパ最大級の販売網を抱える時計販売店であり、ロレックスとは約1世紀にも及ぶパートナーシップを結んでいる。ロレックスがブヘラでスタートさせた理由について、クロノスドイツ版編集長のリュディガー・ブーハーはその理由をこう説明する。
「ロレックスはブヘラを選択した。同社はロレックスにとって数十年来の親密なパートナーであり、しかも数年前に独自のCPO(=Certified Pre-Owned=認定中古)プログラムを開始し、ブヘラCPOブティックやウェブサイトを開設するようになった。ロレックスは、新しいビジネス(訳注:CPOビジネス)に関する情報と経験を集めるために、ひとつのパートナーから始めたいと考えており、ブヘラは最適な選択だった」。つまりロレックスは、中古時計売買に関するノウハウを得るべく、ブヘラを選んだというわけだ。
そして、ロレックス側の意図について、時計ジャーナリストのギズベルト・L・ブルーナーは「グレーマーケットや偽造品への対抗策であり、中古価格の下落に対する対策でもある」と語る。
ブヘラは、2019年からはブヘラ自身の規格によるCPOビジネスを開始し、現在では50店舗にまで広げた。取り扱うのはメジャーな12ブランド。ロレックスCPOの開始に際して、ブヘラはクロノス日本版にこう回答した。
「ブヘラは中古時計市場における世界的なリーダーとしての地位を急速に確立し、このジャンルにおける顧客の信頼を強化するだけでなく、革新的なコンセプトで新たなターゲット層を獲得することに成功した。また、弊社は1924年以来、ロレックスと非常に密接で公的なパートナーシップを維持している。私たちは品質に対して、常に高い基準を設定しており、これらは、ブヘラの店舗において、時計の購入や販売のプロセスにも反映されている。そして、これらの高い基準は、私たちのCPOウォッチにも適用される」
同社の説明によると、ロレックスCPOウォッチを取り扱うのは、スイス、ドイツ、オーストリア、フランス、デンマーク、イギリスにある25ブティックとのこと。ブヘラの子会社で、かつアメリカ市場に大きな影響力を持つトルノーは含まれていないが、「ロレックスは、2023年にこのプログラムを他の市場にも展開する予定」とブヘラは説明する。
面白いのは価格設定だ。ブヘラのロレックスCPOサイトを見ると、新品よりも高い値付けのモデルが少なからず散見される。同社いわく、ロレックスが値付けを決めているのではなく「ロレックスは価格設定に影響力を持たない」とのこと。つまり、各店舗、あるいは会社がCPOウォッチの価格を自由に決められるわけだ。
ブヘラが説明した通り、ロレックスのCPOプログラムは、早ければ2023年の春にはヨーロッパ以外の各国でも展開される予定だ。少なくともアメリカのトルノーは取り扱いを始めるだろう。では日本はどうなのか? いくつかの関係者は「CPOプログラムの検討はしているが、まだ実施しないし、やれない」と述べる。ブヘラでの様子を見る限り、ブティックに専用スペースを設けたり、中古価格を自前で決めるなど、確かに実施へのハードルは高そうだ。
さておき、長年中古から距離を置いてきたロレックスが、一転して中古時計ビジネスに目を向けるようになったのは事実である。これを皮切りに、検討を進めるメーカーは増えるはずだし、長い目で見れば、時計ビジネスのあり方は大きく変わっていくだろう。少なくとも、顧客に買い換えを促したいいくつかのメーカーは、真剣にCPOの採用を推し進めるはずだ。
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