日本の時計作りが注目を集める中、野心的な試みも見られるようになった。そのひとつが、京都のバティックスだ。レザーアイテム、ジュエリーといったアイテムに加えて、同社は機械式時計もラインナップに加える。その打ち出しは、もちろん日本製、そしてワンショット生産だ。
日本製の時計としては珍しく、12時位置に巨大なムーンフェイズ表示を備えた試み。ジュエリーメーカーの時計らしく、インデックスには0.055ctのダイヤモンドがあしらわれる。なおバティックスの時計は、すべて最低5気圧防水である。地味だが、真面目さを感じさせるポイントだ。自動巻き(Cal.VX288、SW288-1aベース)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SS(直径38mm)。5気圧防水。112万2000円(税込み)。
広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Kouki Doi (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2023年1月号掲載記事]
京都発の新しい「メイド・イン・ジャパン」
オールドストックのプゾーを採用した2針モデル。日本の時計メーカーはまず手掛けないジャンルで、いかにも通好みだ。個人的な好みはブラック文字盤だが完売。ムーブメントの数が限られているため、本作は限定15本(トータルで50本)のみ。手巻き(Cal.P.7011)。17石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約40時間。SS(直径38mm、厚さ6.7mm)。5気圧防水。110万円(税込み)。
バティックスという名前は聞き慣れないが、親会社はジュエリーメーカーのジェムケリーである。1992年に創業された同社は、オーダーメイドジュエリー専門のショップとして高い認知度を誇る。ではなぜ、ジュエリーメーカーが時計を作るようになったのか。そもそものきっかけは、創業者の中野猛が時計好きのためだった。
同社が時計の分野に乗り出したのは十数年前のこと。当時は純粋なOEM生産だったが、5年前から時計の製作を始めた。パートナーの1社に選んだのは群馬精密である。表には出ていないが、同社は時計を一から製造できるだけの実力を持っている。ノウハウがないのに、いきなり同社を選ぶというのはよほどだ。時計部門の広報担当である青木剛夫はこう語る。
「私たちはジュエリーの製造でさまざまな会社と付き合いがある。そこで、時計製造のパートナーはどこがいいか尋ねた。結果、群馬精密の名前が挙がった」
自社でデザインを行い、協力会社と時計を製作する。結果として、バティックスの時計は他にはないユニークさを持つようになった。例えば「スターリーナイト」。12時位置に見える巨大なムーンフェイズは、日本製の時計ではちょっと考えられない個性だ。2針モデルの「エクスマキナ」も、オールドストックのプゾーを採用する。正直価格は安くないが、大きな理由はワンショット生産のため。あえて定番を設けないのは、稀少価値を保つためだ。また今後は、ジュエリーをあしらったカスタマイズを推し進める、とのこと。
本格始動から5年。明快なコンセプトとユニークさを持つバティックスは、今後、京都発の新しい「メイド・イン・ジャパン」となるに違いない。
ムーブメントの面白さで言うとクロノグラフモデルのヴァンサンカンか。なんと垂直クラッチが備わったTMI製のキャリバーNE88を搭載。頑強なミラネーゼブレスレットはフォルツハイムの名門、シュタイプと共同製作したもの。自動巻き(Cal.NE88。34石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。SS(直径46mm、厚さ15mm)。132万円(税込み)。
ジュエリーカスタムモデルで人気を集めるアライブ。2019年のモデルチェンジでデザインはより洗練された。また搭載するムーブメントもユニークだ。TMI製のパワーリザーブ表示とカレンダー付きを採用する。自動巻き(Cal.NE20)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。SS(直径43mm、厚さ15mm)。74万8000円(税込み)。
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