世界初のクォーツ腕時計「セイコー クオーツ アストロン」。この初代アストロンにとどまらず、以降もセイコーは追求心と技術力をもとに、時計の歴史を変える時計づくりを続けてきた。今回は、世界を震撼させたアストロンの歴史と、近年発売された人気の限定モデルを紹介する。
セイコー アストロンの進化の歴史
1969年12月25日、世界がクリスマスで賑わうこの日に、セイコーは時計業界を震撼させる1本の腕時計を発表した。それが「クオーツ アストロン 35SQ」だ。
今でこそクォーツ式腕時計は別段珍しいものではないが、当時の腕時計は機械式が主流だった。それ以外に時計を動かす方法がなかったのだ。
そもそもクォーツとは水晶のことであり、水晶に電流を流すことで振動数を大幅に増幅させ、時計の精度を向上させる技術である。この仕組み自体は1920年代から存在していたが、腕時計サイズでの再現が難しく実現に至らなかった。
そんな中、水晶振動子を自社開発することで小型化に成功したのがセイコーだった。苦労して得た知識と技術を世界に公開したことで、その後、クォーツ式は瞬く間に普及。まさに時計の未来をも変えた、運命の1本ともいえるだろう。
クオーツ アストロンの誕生を最初の革命として、セイコーは2012年に第2の革命を巻き起こすべく、新たな技術を腕時計に採用。それが「セイコー アストロン」だ。
クオーツ アストロンは、当時の機械式時計よりも100倍近く精度を高めたといわれている。しかし、セイコーはさらに精度の高い時計を追い求め、研究と製造に注力した。
そして辿り着いたのが、GPS衛星を利用した技術。世界中のどこにいても正しい時間を表示するのみならず、ソーラー機能も搭載し、またもや世界初となる機能を備えた時計を生み出したのだ。
セイコー アストロンのラインナップ
現在、アストロンには5つのラインナップが展開されている。
- ネクスター
- アストロン オリジン GPSソーラー 5X
- アストロン オリジン GPSソーラー 3X
- GPSソーラー 5X レギュラー
- アストロン オリジン ソーラー電波
「ネクスター」は、2022年に誕生したアストロンコレクションの中で最も新しく、2012年のGPSソーラー誕生から10周年の節目に展開された、スタイリッシュかつソリッドな造形が特徴的な新シリーズだ。
「アストロン オリジン GPSソーラー」は、搭載されているムーブメント違いで3Xと5Xのシリーズが展開されている。5Xは2018年に、3Xは2019年に発表されている。5Xはアストロンの第3世代でケースサイズが大幅に小型化された。
翌年に発表された3Xは、5Xからさらに小型化され、ケースサイズは40mm以下にまで進化。また、待ち望まれていたレディースモデルも展開され、セイコーの技術と追求心に世界が驚かされた。
「アストロン オリジン ソーラー電波」は、GPS電波ではなく標準電波を受信して機能する。GPSソーラーシリーズに比べて価格も抑えてあり、手が届きやすい点が魅力。初代「クオーツ アストロン」のデザインを色濃く残し、緩やかなカーブとクラシカルな雰囲気を感じられるデザインが特徴だ。
アストロンの限定モデルを紹介
セイコーのアストロンは、数多くの限定モデルを発表してきた。その中から、選りすぐりの5モデルをご覧いただこう。
Nexterシリーズ 大谷翔平 2022限定モデル(SBXC125)
アストロン・ネクスターシリーズの最新限定モデルは、ロサンゼルス・エンゼルスで活躍する日本人選手・大谷翔平を表現したバージョンだ。チームユニフォームと同様、グレーをベースとしながら赤色をアクセントカラーに用い、大谷選手をイメージしたデザインとなっている。
サブダイアルには大谷選手の背番号「17」を、ケースバックには彼のサインとシリアルナンバーが刻印されるなど、大谷選手の力強さを感じられる1本だ。
NEXTERシリーズ 2022限定モデル(SBXC123/SBXY055)
右(SBXY055)。ソーラー電波(Cal.8B63)。フル充電時約9カ月(パワーセーブ時約2年)。Ti(直径42.7mm、厚さ11.4mm)。10気圧防水。日本限定500本。数量限定のため製造終了。
アストロンの新シリーズ、ネクスターの第2弾は全8モデルが発表され、そのうちの2モデルが数量限定。両モデルとも、深いパープルの文字盤が印象的だ。
「SBXC123」はソーラーGPS、「SBXC055」はソーラー電波での駆動でムーブメントもそれぞれ異なる。SUPER-NOVA(超新星爆発)をイメージして作られており、文字盤のパープルやルミブライトが施されたそれぞれの針とインデックスが宇宙を彷彿とさせつつ、近未来感をも強く感じさせる。
Honda CIVIC TYPE R コラボレーション限定モデル(SBXY045/SBXY047)
右(SBXY047):ソーラー電波(Cal.8B92)。フル充電時約6カ月(パワーセーブ時約2年)。Ti(直径41.3mm、厚さ10.7mm)。10気圧防水。日本限定300本。数量限定のため製造終了。
1972年の初代モデル誕生から50年の歴史を誇る「ホンダ シビック」。その節目となる2022年9月に発表された新型「TYPE R」とセイコー アストロンがコラボした。
同一のスペックで色違いとなるブラックコーティングとチタンカラーの2色を展開。TYPE Rの内装には、シートやメーター表示など随所に赤色が用いられている。時計には、こうしたTYPE Rのデザインが詰め込まれ、レーシングカーのスピリットやギア感を感じられる。アストロンファンだけでなくシビックファンの心にも刺さる1本だ。
大谷翔平 2022限定モデル(SBXC115)
ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手とのコラボモデルは、4月にも発表されている。デザインは11月に発売された限定モデル「SBXC125」と共通しているところもあるが、時計全体の雰囲気は全く違う。
素材はステンレススティールを採用し、文字盤のベースカラーはネイビーブルー。この色は、2021年のメジャーリーグベースボール・オールスターゲームで大谷選手が着用していたユニフォームカラーだ。秒針とAM/PM表示の赤色が際立ち、さわやかな印象を放っている。
国境なき医師団 コラボレーション限定モデル(SBXC091)
その名のとおり、紛争地帯や被災地など、国境を超えて医療行為や援助活動をおこなう「国境なき医師団」とのコラボモデル。1992年に日本事務所が設立され、地球上のあらゆる地域で人々を救い続けている。
ホワイトをベースに、国境なき医師団のブランドカラーである赤色のアクセントカラーを施したデザインが特徴的で、非常にクリーンな雰囲気を纏っている。タフで過酷な環境でも活躍できるよう、防水性能は20気圧まで高められており実用的。あわせて、各ボタンは大きく押しやすい形状となり、操作性にも配慮されている。
アストロン、目を引く魅力的なモデルたち
創業は1881年、世界に誇る日本の時計ブランドとして躍進を遂げてきたセイコー。アストロンは、そんなセイコーが生み出してきたブランドの中でも、機能性、デザインともにセイコーの先駆者として知られている時計だ。
クオーツ アストロンの誕生から現在まで、世界を震撼させる時計を発表し続けているセイコー。我々を飽きさせることのない、さまざまな分野とのコラボモデルにこれからも期待したい。
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