空がほのかに明るくなった「朝ぼらけ」の頃、まだ何にも染まっていない新たな1日の始まり。グランドセイコーの新作「SBGY011」は、その空気感を見事に映し出した和製ドレスウォッチだ。

繊細な型打ち模様のホワイトダイアルと、音もなく流れる秒針、緊張感のあるケースデザインが、信州の清々しい朝を表現する1本。手巻きスプリングドライブ(Cal.9R31)。30石。平均月差±15秒(日差±1秒相当)。パワーリザーブ約72時間。SS(直径40mm、厚さ10.5mm)。10気圧防水。93万5000円(税込み)。
Edited by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2023年1月号掲載記事]
グランドセイコー「ヘリテージコレクション 44GS 現代デザイン SBGY011」
1日の始まりを告げる太陽が、徐々に大地を照らす「朝ぼらけ」。新作の「SBGY011」には、その刹那の瑞々しさが閉じ込められている。
その主役は、純白のダイアルだ。リネンのような繊細な型打ち模様が、グランドセイコーの製造地である信州の朝もやと、その先にうっすらと見える山々を感じさせる。朝を表現するにあたって、安易に太陽を連想させる要素を取り入れるのではなく、その情景に立ち会った時に感じる、透き通った清々しさ、その臨場感を色と模様に変換する奥ゆかしさに、日本ならではの美意識が見て取れる。
日本の美意識は、1967年の「44GS」を再解釈した「44GS 現代デザイン」のケースにも表れている。ザラツ研磨によって作り出された、完全な平面と直線を主体とした独自のデザイン文法は、日本人が古くから親しんできた光と影の調和を主眼に構成されたものだ。
しんと静まった空気感を演出しているのが、ダイアル上を滑るように動くブルースティールの秒針だ。その秘密は、本作が搭載する手巻きスプリングドライブムーブメントにある。強力なトルクと、水晶振動子による正確な制御を組み合わせたスプリングドライブは、機械式とクォーツ式の双方のメリットを持ち合わせるセイコー独自の駆動方式だ。
グランドセイコーとしての実用性もきちんと備わっている。約72時間のパワーリザーブは、長時間にわたる安定した駆動をもたらし、10気圧の防水性は、多少の雨風をものともしない。手巻きムーブメントを採用することで、厚さ10.5mmに抑えられたケースは、快適な装着感を約束してくれる。オールシーズンを共にできるドレスウォッチの決定版とも言える1本ではないだろうか。

https://www.webchronos.net/features/86922/

https://www.webchronos.net/specification/84676/

https://www.webchronos.net/features/79334/