フルメタルG-SHOCK「GMW-B5000」シリーズに新たに加わった「GMW-B5000TCC」をインプレッション。チタン製ケースにムーブメントの基盤をレーザー刻印した外装が特徴な同作は、ブレスレット込みで104gという軽量さとしなやかなブレスレットにより、高い装着感を実現したモデルだ。
タフソーラー。月差約±15秒(電波非受信時)。フル充電時より約10カ月駆動(パワーセービング時約22カ月)。Tiケース(縦49.3×横43.2mm、厚さ13mm)。20気圧防水。21万4500円(税込み)。
Text & Photographs by Naoto Watanabe
2022年12月19日掲載記事
フルメタルG-SHOCKに加わったレーザー刻印モデル「GMW-B5000TCC」
2018年に登場したG-SHOCKの「GMW-B5000」シリーズ。初代G-SHOCK「DW-5000C」のスクエアデザインを基調に、金属製の外装を持たせた本シリーズは、“フルメタルG-SHOCK”の愛称で多くのファンから親しまれ続けている。
今回はそんなGMW-B5000シリーズから、2023年1月に発売予定のレーザー刻印チタンモデル「GMW-B5000TCC」の魅力をひもといていきたい。目新しいパターンが刻印されただけのキワモノ時計と侮るなかれ、卓越した外装作りに目覚めた現代カシオならではの野心作なのである。
機械式時計コレクター達の心をも揺さぶるカシオのもの作り
「塾に通い始めたら、時計がないと困るでしょ?」
そんな理由で、中学生の頃に母から手渡された古びた手巻き時計をきっかけに、仄暗く果てしない時計沼にのめり込んだ筆者にとって、時計とは常に機械式時計の事であった。以来数十年、クォーツ時計を経験する事なく機械式時計だけを集めてきた筆者が「これは買わなければならない」という正体不明の義務感に襲われ、人生で初めて購入したクォーツ時計が、2022年3月に登場した鏡面チタン外装のG-SHOCK「MRG-B5000-1JR」だったのである。
パーツを可能な限り分割し、ザラツ研磨による下地処理の施された外装は、それまでにないシャープな造形を実現し、チタン製とは思えぬほど整った鏡面を持っていた。46万2000円(税込み)という価格設定にも関わらず、現在に至るまで入手困難な状況が続いているのは、その魅力がG-SHOCKファン以外の時計愛好家にも刺さった結果だろう。実際、筆者の周りの機械式時計コレクターたちからも購入報告が相次いだほどだ。
筆者自身も使うほどにその利便性と高品質な外装に魅了され、蓋を開けてみたら毎日着用してしまうほどガッツリと心を掴まれている訳だが、そんな経緯を知ってか知らずか、今回編集部からレビューを依頼された「GMW-B5000TCC」もまた鏡面チタン外装モデル。しかも価格は半額以下だというのだから俄然興味が湧く。せっかくなので、手元のMRG-B5000-1JRとの比較も混じえながら検証してみたい。
多層的な見え方をもたらすIPとレーザーの複合技
時計を手にした時まず目を引くのは、ブラックIP(イオンプレーティング)の鏡面ボディに描かれた個性的な刻印である。遠目にはただのカモフラージュ柄のようにも見えるこの刻印は、GMW-B5000シリーズが搭載するモジュール「3459」の基板回路パターンをレーザー刻印で描いたもの。
人間で例えるなら、自身のレントゲン写真を拡大して体表に彫り込むようなもので、かなり奇怪な発想に感じるが、これが時計となるとたまらなくカッコ良く見えるから不思議である。
しかもこの刻印は単色ではなく、黒色の梨地と、金色の梨地に分かれおり、独自の立体感を持っている。これは、レーザー刻印をブラックIPの前後でふたつの工程に分けているためだ。
つまり、IPコーティングのみのエリアは黒色鏡面、レーザー刻印を施してからIPコーティングのエリアは黒色梨地、IPコーティング後にレーザー刻印を施したエリアは金色梨地になるという仕組みなのだが、すべての外装パーツが対象となれば、これだけでも莫大な手間がかかっているはずだ。