時計専門誌の編集部員が本当に好きで所有している時計はどんな特徴があるのか。編集部の細田は手巻きクロノグラフのダンヒル「ミレニアム クロノグラフ」を挙げた。意外にしっかりしたムーブメントの仕上げと、厚塗りのラッカー文字盤の艶が特に魅力と語る。
Text by Yuto Hosoda(Chronos-Japan)
2022年12月22日公開記事
クロノス日本版編集部細田のお気に入りは「ミレニアム クロノグラフ」
少し内輪な話をすると、12月はwebChronosのキャンペーン期間だ。普段から読んでくれている方の満足度をより引き上げ、かつwebChronosを読んでこなかった人にも多くリーチさせたい。
そんな思惑があるため、今月はレギュラー連載に加えてさまざまなタイプの記事を集め、通常よりも投稿する記事を多くして臨んでいる。今回の「編集部のお気に入りの1本」もそういった試みのひとつだ。
その名の通り、クロノス日本版(webChronos)編集部員が所有する時計の中から、お気に入りの1本を紹介するという本企画。書いてみると小っ恥ずかしいが、今回は私、細田が持つダンヒル「ミレニアム クロノグラフ」を取り上げたい。
クロノグラフが欲しい病に侵され
1年に一度くらいの頻度で、クロノグラフが欲しい病に侵されることがある。きっかけはさまざまだ。クロノスの特集でクロノグラフをがっつり調べたり、たまたまヤフオクやeBayでいい出物を見つけてしまったり、知人の時計を見せてもらったり……。
とにかくクロノグラフが欲しくてたまらなくなるのだ。そして新作・アンティークを問わずとにかく情報を収集する。この病は大体、欲しいものに目星が付き、週末にでも買おう! と症状がピークとなったところで“金銭的問題”という治療薬が効き始め、なんとか二次災害を出さずに済む。
ところがミレニアム クロノグラフを購入した際は、この秘薬の効きが悪かった。というのも、とにかく販売価格が安かったのだ。当時、水平クラッチ(やっぱりキャリングアーム!)の手巻きムーブメント搭載機が欲しかったため、ヴァルジューやレマニアはもちろん、ヴィーナス、ランデロン、エクセルシオーパークに至るまで、とにかく調べあげたのを記憶している。
ただし、なかなかこれといったモデルは見つからなかった。自分でも買えそうなプライスが掲げられたモデルは、文字盤の状態が悪いアンティークばかり。これらの年代の個体でパキッとしたものには到底手が届きそうにもない。
たまたまwebでミレニアム クロノグラフを見つけてしまった
とはいえ、現行の手巻き、それもキャリングアームとなると、なおのこと金銭的ハードルが高い。そんな中でたまたまwebで見つけたのがミレニアム クロノグラフだった。レマニアのCal.1873を搭載してなんと10万円。同じムーブメントを採用するブライトリングやホイヤー、オメガ「スピードマスター」(≒Cal.861 / 1861)ではあり得ない価格だ。
ラグがセンターから伸びる独特のケースデザインも、“ラグスポ”ブームの今なら評価を得られそうな1連ブレスレットも個性が強くて目を引くし、37mmというケース径も絶妙だ。
思わぬ掘り出し物を見つけてしまった筆者は、夜のテンションによって治療薬が効きづらくなっていたこともあり、そのままポチってしまったのだった。
想像以上に仕上げが綺麗なムーブメント
手元に届いたダンヒルは、想像以上によくできた時計だった。レマニアはよく磨かれており、正直、今まで見てきたCal.1873の中で最も仕上げられている。受けの面取りはもちろん、ネジ頭もよくポリッシュされているのだ。
レマニアのエボーシュに仕上げによるグレード分けがあったのか不明だが、ダンヒルが高グレードのムーブメントを採用した or リシュモン グループのいずれかのブランドが後から仕上げたと想像するのは非常に楽しい。
また、あくまでムーブメントが目当てで購入した時計だったが、文字盤の作りも個人的にはツボだった。1990年代後半から2000年代特有の厚塗りラッカーにポリッシュをかけたホワイト文字盤は、特に強い光源下で特に色っぽい艶を出す。ムーブメント以上に見ていて楽しい部分だ。
直径27mmのCal.1873は現代のムーブメントとしては小型の部類だ。そのため、現代的のケースにそのまま載せると、どうしてもインダイアルが寄り目になってしまう。
しかし、ミレニアム クロノグラフはケース自体が比較的小径なうえ、文字盤上に立体感ある見返しリングを挟むことで、この問題からは無縁だ。3つ目カウンターの配置は適切である。
上記のように内装(機械)良し、外装良しなダンヒルのミレニアム クロノグラフは不治の病に対しても一定の効果を発揮してくれた。それだけ満足感の高い1本だったのだ。
同志になりましょう!
おそらく手巻きのレマニアを買うなら最も安く購入できる存在なミレニアム クロノグラフ。デザイン上はムーンフェイズが追加されただけなのに、エル・プリメロを載せた後継機の市場価格が3倍も高いことを考えると、いかにお買い得な時計かがお分かりだろう。
不当に低評価を受けてしまっている感が抜け出せない時計だが、まだまだ上質なタマが多く転がっているため、是非気になった方は同志になりましょう!
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