カルティエの魅力は創意豊かなデザインに宿る。
「ぺブル シェイプ」ウォッチのオリジナルは1972年。カルティエの歴史においても稀少なその存在が、当時に限りなく近い姿で150本限定モデルとして再現された。
Text by Shigeru Sugawara
Edited by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2023年1月号掲載記事]
50年の時を経てよみがえる愛好家垂涎の稀少モデル
カルティエほど多種多様な時計デザインを開発し、世界の人々を魅了してきたブランドは他にないだろう。20世紀を通じて大半のブランドがラウンド型ケースとダイアルとを組み合わせて腕時計を作ってきたのに対し、カルティエはケース形状もダイアルデザインも常に独自のクリエーションを貫いてきた。そうしたデザインの遺産をたたえ、時計愛好家向けにオリジナルに限りなく近い復刻モデルのかたちで発表するカルティエが、今回焦点を当てたのは「ペブルシェイプ」ウォッチである。
オリジナルのヴィンテージ感をイエローゴールドがさらに引き立てる。またスクエアを90°回転させて角を12時位置に置くダイアルデザインも独特だ。手巻き(Cal.430 MC)。18石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約38時間。18KYG(直径36mm、厚さ6.29mm)。非防水。世界限定150本。640万2000円。
その名のごとく、海や川で見かける小石のような丸みを帯びたラウンド型ケースに、クラシカルなスクエア型ダイアルを組み合わせるという意表を突く異形のデザインが目を奪うこのモデルが誕生したのは1972年のこと。新時代のアート、デザイン、カルチャーによって活気渦巻く60年代後半から70年代前半に、カルティエは「クラッシュ」や「マキシ オーバル」「ダブルストラップ」といった斬新な腕時計を次々と創作したことで知られるが、「ペブル シェイプ」ウォッチも当時を反映するひとつだ。カルティエ ロンドンの工房で6本のみが作られたという伝説もあり、今までほとんど知られていなかった稀少価値の高い隠れた名品なのである。
2022年、復刻された「ペブル シェイプ」ウォッチは、小石を思わせる、滑らかでころんとしたケースに、ローマ数字とレイルウェイトラック、ブルースティール剣型針を配したカルティエのアイコニックなダイアルを組み合わせ、サイズもほぼ原型通り。搭載ムーブメントはカルティエの手巻きでは最薄クラスのキャリバー430 MCである。 限定150本でワンオフプロダクトともなれば、世界中のカルティエ愛好者、時計愛好家や収集家の間で争奪戦は必至。入手できたなら幸運だろう。
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