グランドセイコーの〝雪白〟はロングセラーも納得の仕上がり! 「SBGA211」をレビュー

2022.12.29

2017年に登場したグランドセイコー「SBGA211」をインプレッション。スプリングドライブCal.9R65を搭載して2017年に登場した同作は、日本では“雪白”、海外では“スノーフレーク”という愛称を持ち、国内外で人気を博している。グランドセイコーは男性向けモデルと思われがちだが、いやいやどうして。時計好きな女性にもおすすめしたいモデルだ。

小泉庸子:文 Text by Yoko Koizumi
2022年12月29日掲載記事


スプリングドライブ搭載のSBGA211。その運針、神が歩くがごとく

 編集部から託される時計が新作とは限らない。今回預かった時計はグランドセイコー「SBGA211」。2017年に登場し、国内外で高い人気を誇るモデルである。

 こうしたスタンダードモデルを改めて見直す機会を得られるのはインプレッションの意義のひとつといえるだろう。だがこのモデル、登場したときもかなり注目を集めており、そのうえ、その後も定期的に記事になるという人気ぶり。少しネットで検索するだけでも、国内外の記事が出てくる。

 ちなみに検索ワードは「グランドセイコー SBGA211」でGoogle先生に聞いてみたところ26万件という数字が出た。さすが、世界のGS。

SBGA211

グランドセイコー「ヘリテージコレクション SBGA211」
自動巻きスプリングドライブ(Cal.9R65)。30石。パワーリザーブ約72時間。ブライトチタン(直径41mm、厚さ12.5mm)。10気圧防水。73万7000円(税込み)。

 つまり「お好きに書いていただいて」と言われたものの、新たな視点をどう見出せばいいのか――。実はハードルが“相当”高いモデルと言えるわけだ。しかし、そのなかでも一筋の光明を見出した。それはどうやら、女性が書いたインプレッション記事は見当たらない様子だということ。

 今回のインプレッションはそのあたりを新たな視点とできたらと思っておりますが、すでに女性で「私、書いた」という方がおられましたら、すみません。謝ります。

 さて改めてSBGA211について。搭載されるムーブメントはスプリングドライブCal.9R65。2004年に誕生した自動巻き、約72時間のパワーリザーブを備え、安定性のある使いやすいムーブメントだ。

 翌年の2005年、このCal.9R65を搭載したグランドセイコー初のスプリングドライブモデル「SBGA011」が発売になり、ロングセラーモデルとなった。

 そして2017年、グランドセイコーはセイコーから離れて時計ブランドとして独り立ち。ダイアルはGSのロゴと「Grand Seiko」の文字のみになり、装いも新たにSBGA211として再登場したのである。つねづね文字情報の多いダイアルはいかがなものだろうと思っていたので、大変好ましいお顔になったと感じている。

 まず、箱から出して時計を見て驚いた。秒針の動きが明らかに違うからだ。スムーズとか滑らかとか、針の動作を表現する言葉はさまざまあるが、これは次元が違った。神様が雲の上を滑ったらこんな感じ? 音で表現するなら「とぅる~」や「つー」か?

9R65

2004年に完成した自動巻き、約72時間のパワーリザーブ機能を備えたスプリングドライブキャリバー9R65。自動巻機構には、1959年開発の、セイコー独自のマジック(爪)レバー方式を採用。これにより生産性・メンテナンス性・耐久性、また巻き上げ効率も向上した。

 日ごろ機械式を愛用していて、あのスイープ運針(秒針が連続して動く)に慣れていた身としては、スプリングドライブと比べてしまうと、ハイビートもかたなし。10振動(3万6000振動/時)であっても「カクカク」である。こういう基本的な動作で驚くのは久しぶり。

 この滑らかな運針こそ、スプリングドライブの特徴で、その機構ついては幾度も記事になっているし、webChronos(セイコー「スプリングドライブ」が指し示す連続的な時間の流れ)でも詳説されているので、そちらをご覧いただくとして、とにかく滑らかが過ぎるのである!

 私にとってSBGA211は人生で初となるスプリングドライブ体験だったこともあり、“滑らか”に対してしばらく興奮が続いた。

 スプリングドライブをご存知の方にとって、このスムーズな運針は「なにをいまさら」なことだろうけれど、ご存知ない方はその「未体験」を大いに喜ぶべきだ。妙齢ともなると少々なことでは驚かなくなるが、この動きは驚くこと間違いなしである。太鼓判を押そう。