【インタビュー】ソーウインドグループCEO「パトリック・プルニエ」

タグ・ホイヤーでキャリアを積んだ後、Apple Watchの開発に従事。その後、ユリス・ナルダンのCEOに就任したパトリック・プルニエは、今や独立ブランドとなったジラール・ペルゴとユリス・ナルダンを率いる総帥だ。彼は大グループのケリングから、ふたつのブランドを独立させたのである。しかし、なぜケリングを離れる決定をしたのか？

私たちはアニメ『NARUTO』のような存在だ

パトリック・プルニエ
ソーウインドグループCEO。1972年、フランス生まれ。ディアジオ・グループにてキャリアをスタートさせた後、LVMHグループの各社を歴任。2014年、Apple Watchのローンチに携わった後、アップル EMEA エグゼクティブ・コミッティの一員となる。その後、17年にユリス・ナルダンのCEOに就任。18年からはジラール・ペルゴのCEOも兼任する。22年1月からは、ケリングから独立したソーウインドグループのCEOとなる。

「良い質問だね。そもそも決めたのは私ではないけれども。というのも、ケリングがふたつのブランドを売ることに決めて、即私に伝えた。私はその日のうちに、もし売るなら、買い戻したいと伝えたんだ。まったく予想もしていなかったが、MBO（マネジメントバイアウト）は当然の決断でもあった」。どういうことか？

「理由はたくさんある。まず、私たちが一丸となっていること。そして、私はこれを仕事と思っていないこと。ブランドを作り、強力なものに育てるのは正しいと信じている。ただし、時間はかかるだろうね」

　しかし、筆者の知る限り、ジラール・ペルゴはあの巨大な工場を解体したはずだ。どうやって再生するのか？

「なるほど、ファクトリーはユリス・ナルダンと同じだが、製造ラインは分かれている。つまり、ふたつのブランドは完全に分離している。私たちが行ったのは、あくまで製造の再編成と相互乗り入れだ。そこではひとつのムーブメントを担当する時計師、03300を手掛ける時計師などに分かれている。工場に来れば分かると思うよ」

　現在、ジラール・ペルゴはロレアートのおかげで大変好調だ。その一方で、他のコレクションにはあまり注力していないように思える。

「ジラール・ペルゴで多少変える必要があったひとつが、リファレンスの多さだった。そのせいで物事が不明瞭になるのかもしれない。ただ、1966、1945やキャッツアイなどは、歴史的にも商品的にもそれだけでひとつのブランドになり得る。だから、これ以上コレクションを増やすつもりはない。ただ、今はロレアートとブリッジコレクションに注力している」。また彼はこうも語った。「私たちは『NARUTO』のような存在じゃないかな。愛好家たちが話題にし、実際見られるし、そしてトップの販売店に行けば現物に触れる」。

　話のついでに、ユリス・ナルダンのウェブサイトが良くないという話をした。彼はもう一度話してくれと言う。ビデオに撮って、マーケティングの責任者に直接送るとのこと。撮影を終えた後、彼は笑った。「これは責任者へのプレッシャーになるよ」。

　このスピード感はかつてない。今後、ふたつのブランドは劇的に変わるに違いない。