ブルガリの時計デザインを統括するファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ。久々に来日した彼が、常に挑戦を続けるオクト フィニッシモの今を語る。
鈴木幸也(本誌):取材・文 Edited & Text by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2023年1月号掲載記事]
マニュファクチュール ブルガリの真価をエイトデイズに見る
ブルガリのウォッチ デザイン部門を率いるファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ。1971年、イタリア・ナポリ生まれ。工業デザイン大学ローマ校を卒業後、98年にフィアット入社。後に独立し、2005年に自身のデザインスタジオを設立。以降、ブルガリに参画し、プロダクトデザインを刷新。元来、工業デザイナーであったが、近年はメティエダールにも注力する。代表作は「オクト」「オクト フィニッシモ」「セルペンティ」など。
「ジュネーブ・ウォッチ・デイズのハイライトであったオクト フィニッシモ スケルトンエイトデイズの開発にあたり、我々はムーブメントを再設計しました。既存のスケルトンモデルと比較すると分かるように、ブリッジの形など、まったく異なる新しいムーブメントに見えるでしょう」
だが実は、これは既存のムーブメントの改良版だという。彼は話を続ける。
「既存のスケルトンムーブメントをベースにしてはいますが、実際は、地板とブリッジをリデザインしているので、まったく別物に見えるはずです」
それを象徴するのが、パワーリザーブ表示だ。「エイトデイズでは、パワーリザーブ表示も変えました。これまでのオクト フィニッシモにはない、まったく新しい表示方法を採用しました。パワーリザーブを表示するのに、以前のようにカウンターを追加するのではなく、スモールセコンドの外周でパワーリザーブを表示するように変更したのです」。
彼は、パワーリザーブ表示の変更にあたり、何度もスケッチを繰り返した。そして、オクト フィニッシモのデザインコードに立ち返り、既存のムーブメント構造を活かしつつも、フィニッシモがもともと持っているピュアな要素を盛り込むことで再構成したという。つまり、オクトフィニッシモ スケルトン エイトデイズは、ムーブメントそのものがチャレンジだったのだ。その最も大きな挑戦が、モデル名にもあるロングパワーリザーブの実現だ。
「約8日間のパワーリザーブを実現するために、バレルを大型化しました。加えて、動力の伝達効率を高めるために、輪列の歯車も再設計しました。それによって、以前のムーブメントよりもゆっくり回転するようになりました」
具体的には、香箱を大きくしたために、主ゼンマイの長さを延長できたのだ。
「主ゼンマイの長さは約720mmです。ただし、主ゼンマイの厚さは変えていません。この長い主ゼンマイを収めるために大きくした香箱を収めるスペースをムーブメントに捻出することも、我々にとって課題でした」
ブランドのアイコンであるオクト フィニッシモに、オープンワークや独創的なパワーリザーブ表示など、新たな表現を導入するためにムーブメントから開発・改良できる技術力とデザイン力。これこそがマニュファクチュール ブルガリの真価である。
こちらも2022年8月末から開催された「ジュネーブ・ウォッチ・デイズ」で発表されたモデル。「オクト」コレクションの10周年を祝して、「オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT」にピンクゴールドバージョンが加わった。自動巻き(Cal.BVL318)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。18KRG(直径43mm、厚さ8.75mm)。100m防水。433万4000円(税込み)。
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