近年、干支をモチーフにした腕時計を製作する時計ブランドが増えている。寅年だった2022年には、さまざまなブランドからタイガーモチーフの腕時計が発表された。個性あふれる7ブランドの寅年モデルを紹介しよう。
ユリス・ナルダン「クラシコ・タイガー」
自動巻き(Cal.UN-815)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。18KRGケース(直径40mm)。50m防水。世界限定88本。生産終了(発売時は税込み619万3000円)。(問)ソーウインド ジャパン Tel.03-5211-1791
C.O.S.C.認定取得の自動巻きキャリバーUN-815を搭載するユリス・ナルダン「クラシコ・タイガー」には、シャンルベとパイヨンというふたつのエナメル技法が用いられている。両技法とも現在では希少価値が高く、習得している職人はわずかだ。このモデルは、ユリス・ナルダン傘下の文字盤製作工房、ドンツェ・カドランのエナメル職人たちがこれらの技法を駆使してダイアルを製作している。
シャンルベ技法が用いられているのは、虎の模様部分だ。地金を彫り込んでくぼみを作り、そこにエナメルを流し込んで焼成する。夜空に浮かぶ月と星は、パイヨン装飾で描かれたものだ。一度焼成されたエナメルダイアルの上に銀箔や金箔を切り抜いたモチーフを乗せ、さらにその上を半透明のエナメルで覆うことで、2層のエナメルにモチーフを挟み込んでいる。このモデルでは、銀箔で月を、金箔で3つの星を表現している。
ショパール「L.U.C XP 漆 寅年」
自動巻き(Cal.L.U.C 96.17-L)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KエシカルRGケース(直径39.5mm、厚さ6.8mm)。30m防水。世界限定88本。生産終了(発売時は税込み359万7000円)。(問)ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922
2013年以来、ショパールは漆技法を駆使して干支の動物を文字盤に描いた腕時計を毎年発表している。世界限定88本で販売された「L.U.C XP 漆 寅年」は、山田平安堂の蒔絵職人、小泉三教とコラボレーションしたモデルだ。
このモデルの文字盤1枚にかけられる製作時間は、なんと160時間以上。蒔絵で描かれた虎は振り返るように立ち、その背景には星々がきらめく夜空、断崖に囲まれた入り江、緑の葉をつける松の木が描かれている。
直径39.5mmのケースには、エシカルローズゴールドを採用。マイクロローター搭載の薄型キャリバーL.U.C 96.17-Lを搭載し、約65時間のパワーリザーブを有する。
ジャガー・ルクルト「レベルソ・トリビュート・エナメル “タイガー”」
手巻き(Cal.822A/2)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。18KPGケース(縦45.5×27.4mm、厚さ9.73mm)。3気圧防水。生産終了。(問)ジャガー・ルクルト Tel.0120-79-1833
ジャガー・ルクルトの「レベルソ・トリビュート・エナメル “タイガー”」は、一見シンプルな黒文字盤のレベルソだ。だが、ケースを反転させると虎が姿を現す。ピンクゴールドのケースにエングレービングを施すことで描き出した虎は、オペークブラックのグラン・フー・エナメルを施した背景から飛び出すかのような、迫力ある仕上がりだ。
エングレービングのボリュームと奥行きを際立たせるため、異なる大きさのノミを使用するモデルエングレービングと呼ばれる技術が採用されており、職人はミリ単位で地金を彫り進めていく。繊細で緻密な作業が求められるため、文字盤の製作には約55時間もの時間が費やされる。
時分表示を行うアールデコ調の文字盤にも、グラン・フー・エナメルが施されている。漆黒を実現するためにエナメルは何層にも重ねられ、一層ごとに焼成される。手巻きキャリバー822A/2を搭載するこのモデルは、ジュウ渓谷にある工房で受注生産された。
ヴァシュロン・コンスタンタン「メティエ・ダール イヤー・オブ・タイガー」
自動巻き(Cal.2460 G4)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KPGケース(直径40mm、厚さ12.72mm)。3気圧防水。世界限定12本。生産終了。(問)ヴァシュロン・コンスタンタン Tel.0120-63-1755
ヴァシュロン・コンスタンタンでは、虎のモチーフが文字盤中央にあしらわれた「メティエ・ダール イヤー・オブ・タイガー」が登場。ピンクゴールドケースとプラチナケースの2モデル展開で、世界限定12本ずつ販売された。
文字盤には、ハンドエングレービングによる虎や、植物のモチーフがあしらわれている。独特の植物モチーフは、中国の伝統的な切り絵細工「剪紙(せんし)」に由来するものだ。熟練の彫金師とエナメル職人の技により、中国の伝統技法とスイスの装飾技術が融合されている。
文字盤上の装飾を生かすため、ムーブメントには時分針が不要のキャリバー2460 G4が採用された。時、分、日付、曜日はデジタル式に4つの窓で表示される。時、分の表示はゆっくりと移ろい、日付と曜日の表示はジャンプする。ジュネーブシールを取得し、入念な仕上げが施されたこのムーブメントは、サファイアクリスタル製ケースバック越しに鑑賞可能である。
ピアジェ「アルティプラノ ゾディアック」
手巻き(Cal.430P)。18石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約43時間。18KWGケース(直径38mm)。3気圧防水。世界限定38本。生産終了。(問)ピアジェ コンタクトセンター Tel.0120-73-1874
ピアジェは、中国の干支をモチーフにした腕時計の12作目となる、虎モチーフの「アルティプラノ ゾディアック」を2022年に発表した。12年から、著名なエナメル職人アニタ・ポルシェがその文字盤製作を担っている。有線七宝とも呼ばれるクロワゾネの技法を用いて、白い文字盤上にホワイトタイガーの姿を描き出した。
クロワゾネでは、まずモチーフの輪郭が細い金線によって描かれる。そのすき間にエナメルを流し入れ、高温での焼成を繰り返す。最終工程では、発色の保護のためにラッカーが施される。アルティプラノ ゾディアックには、厚さ2.1mmの超薄型ムーブメントであるキャリバー430Pが搭載されている。ダイヤモンドがセッティングされたベゼルが、文字盤上の虎を引き立てる。
ブランパン「ヴィルレ トラディショナル チャイニーズ カレンダー」
自動巻き(Cal.3638)。39石。1万4400振動/時。パワーリザーブ約168時間。Ptケース(直径45mm、厚さ15mm)。3気圧防水。世界限定50本。生産終了。(問)ブランパン ブティック銀座 Tel.03-6254-7233
ブランパンは、中国暦の表示機構を搭載した「ヴィルレ トラディショナル チャイニーズ カレンダー」を10年にわたって展開している。搭載されているキャリバー3638は、パーペチュアルカレンダーとは異なる複雑な構造をしており、グレゴリオ暦と組み合わせた太陰太陽暦に加えて、中国暦の表示機能を備えているのだ。
ホワイトのグラン・フー・エナメルダイアルにはゴールド製のインデックスが配され、その上をくりぬかれた葉のような形状の針が滑らかに動いていく。グレゴリオ暦の日付は、ブルースティール製のサーペント針によって表示される。
12時位置には干支の窓に加えて、24時間表示のサブダイアルが配されている。24時間表示に採用されているのは、十二時辰表記と漢数字だ。3時位置では五行(木、土、水、火、金)と十干を10年周期で表示。9時位置は、中国の太陰月(12ヵ月周期)、日付(30日周期)と中間の月表示がある。
干支と十干を合わせた十干十二支が中国暦における60年のサイクルを成し、そこで重要な役割を果たす月も6時位置のムーンフェイズにより表示される。このような複雑な機構を持つムーブメントは、サファイアクリスタル製のケースバックから鑑賞可能だ。
アーノルド&サン「“イヤー・オブ・ザ・タイガー” パーペチュアルムーン」
手巻き(Cal.A&S1512)。27石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約90時間。18KRGケース(直径42mm、厚さ12.16mm)。30m防水。世界限定8本。生産終了(発売時は税込み759万円)。(問)アーノルド&サン相談室 Tel.0570-03-1764
アーノルド&サンのアイコニックなムーンフェイズ表示と虎のモチーフを融合させた「“イヤー・オブ・ザ・タイガー” パーペチュアルムーン」。文字盤には希少な鉱物であるヘマタイトが採用され、3時側に躍動感あふれる虎が、9時側にはその獰猛さを鎮めるかのような滝が描かれている。トラはローズゴールドをベースに、彫刻によって仕上げられたものだ。
ムーンフェイズの大きな月はマザー・オブ・パール製で、背景にはディープブラックのアベンチュリンガラスを用いている。ムーンフェイズ表示は、122年に1日の誤差しか生じない高精度なムーブメントであるキャリバーA&S1512が司っている。
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