冒険者の道しるべとなった鉱石をコンセプトにデザインされた、全6種類のモデルを用意する「G-SHOCK Anniversary Adventurer’s Stone(アドヴェンチャラーズストーン)」。そのうちケースサイズが控えめな3モデルを試着してみたが、今回はその中でも特にしっくりなじんだ、GM-S5640GEM-7JRの着用レビューをお届けする。
デジタルクォーツ。平均月差±15秒。電池寿命約2年。樹脂/SSケース(縦43.8×横38.4mm×厚さ10.9mm)。20気圧防水。3万5200円(税込み)。
Text by Yukaco Numamoto
2023年1月31日掲載記事
記念すべき40周年モデル、コンセプトは「鉱石」
G-SHOCKがデビューから40周年と聞いて驚いた。筆者が初めて買ったG-SHOCKは「アントワープ王立アカデミーコラボレーションモデル」のホワイトカラー、GT-001AT-7だった……(発売されたのは1997年)というようなことを思い出しながら、この新作を確認する。
鉱石をモチーフにしてデザインされているということは聞いていたが、いざ手に取ってみてみると、それぞれが鉱石以外の何かも含めて連想させる個性を放っていた。腕にのせてみた感触で一番気に入ったのは「GM-S5640GEM-7JR」だ。このモデルは、パワーストーンとしても親しまれる鉱石「カルサイト」をイメージしているそうだ。
カルサイトを知らない人にも刺さるデザイン
筆者はカルサイトという言葉を初めて聞いた。カルサイトは水晶と間違えられることがある鉱石で、見分け方は鉱石を通して文字などを見たときに、二重に見えるか見えないか、ということだ。二重に見えるのがカルサイトである。
日本名としては方解石というそうだ。なんだかそちらは遠い昔に聞いたことがあるような…。理科の実験に用いられたり、複屈折の性質を利用して古くは中世ヨーロッパのバイキングたちに羅針盤として使われたりしていたというエピソードも興味深い。
しかし、鉱石シリーズという括りから離れてもこの時計のカラーリングは魅力的だ。ピンク、ライトグリーン、シルバー、グレーが織りなすフワフワとした色味と自由に引かれているラインは、グラフィティアートのようなストリート感も味わえる。
G-SHOCKの歴代記念ロゴを手掛けた、エリック・ヘイズの手による40thロゴもケースバックに刻まれているので、ますます世界観はストリート寄りに感じられる。艶消しのメタルのベゼルの感触はひんやりとしていてつい触りたくなる気持ちよさだ。
この色合いは最近どこかで見たような気がすると感じ、思い返してみた。数年前に飲食業界で流行ったユニコーンカラーだ。若い女の子たちが“夢カワイイ”という表現をするのを聞いて「うまいこと言うものだな……」と思った。コレはきっと“夢カワイイ”色合いだと言って差し支えないだろう。着ける人によって様々な印象に変わる本作は、持ち主に寄り添う時計になりそうだ。
欲しい。かなり欲しい……と思える時計だが、一点躊躇することがある。数多く登場した歴代のG-SHOCKのスケルトンモデルを所有したことがある人ならお分かりいただけると思うが、経年劣化の黄ばみが気になるのではないだろうか。
スケルトンストラップはクリアであるからこそ良さがあるのであって、黄ばんでいると残念な印象になる。漂白や洗浄の情報は多く出回っているが、完全にはもとに戻らない。経年変化を楽しむという人にとっても、スケルトンモデルを使用したあとは汗や水分をふき取ることでより長く楽しむことができる。タフに使えるのがG-SHOCKの良さであることは間違いないが、スケルトンに関してはぜひご留意を。
本作は筆者が現在愛用中のオールブラックの角型、スピードモデル「DW-5600BB」よりも一回り小さい。DW-5600BBはケースサイズが縦48.9×横42.8mm、厚さ13.4mmだが、本作は縦43.8×横38.4mm、厚さ0.9mmだ。Baby-Gの「BGD-565」シリーズ(縦42.1×横37.9mm、厚さ11.3mm)との中間サイズはちょうど1年ほど前からいくつかのコレクションに登場しているが、着けてみると女性向けに作られているサイズはやはりジャストサイズで快適だということがわかる。
とはいえ、筆者はこちらをあえて男性にも薦めたい。男性が使うには小さめかもしれないが、ユニセックスで着用しやすい、ほどよくポップなデザインだ。この色合いに刺さる男性はきっと一定数いるだろう。鉱石シリーズはそれぞれペアになるデザインがあるので、時々交換したり、男女逆で購入したり、という楽しみ方もできる。
「こういう人たちが着けていそうだ」とカップル像やライフスタイルまで思い浮かべることを容易にできるのは、この時計が持つ個性が際立っているからだろうと思う。
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