時計師アブラアン-ルイ・ブレゲの功績を今に伝える、ブレゲの腕時計3本を紹介

FEATUREWatchTime
2023.02.02

時計の歴史を200年早めたといわれる、18世紀の偉大な時計師アブラアン-ルイ・ブレゲ。彼が創業した時計ブランドであるブレゲは、今もなお業界をリードし続けている。今回は、時計師ブレゲの功績を今に伝える3本のモデルを紹介する。

Originally published on watchtime.com
Text by Jens Koch
2023年2月2日掲載記事


現在まで受け継がれるブレゲの技術

ギヨシェ

ブレゲで受け継がれてきた、手動旋盤によるギヨシェ彫り。

 時計ブランド、ブレゲの祖は、時計師のアブラアン-ルイ・ブレゲ(1747-1823)までさかのぼる。彼ほど時計の世界に大きな影響を与えた時計師はいないだろう。

 彼はトゥールビヨンやブレゲ針、耐衝撃装置「パラシュート」、「ブレゲヒゲ」と呼ばれる独自のヒゲゼンマイなどを発明し、自動巻き機構やミニッツリピーターの改良を行ったことでも知られている。

 現在でもブレゲは革新的な技術を開発しており、磁気を利用して精度と耐衝撃性を向上させる「マグネティック・ピボット」などで特許を取得している。

 また同社は、装飾などの分野でも独自のスタイルを確立している。スイス・ジュウ渓谷のラベイにある工房では、現在も職人たちが創業者の足跡をたどり、時計の製造を行っている。ギヨシェやエングレービングといった職人技の保護だけでなく、新たな開発にも注力しているのだ。

エングレービング

手仕上げのエングレービングもブレゲが誇る伝統技術だ。

クラシックなデザインと技を受け継ぐ「クラシック トゥールビヨン エクストラフラット」

クラシック トゥールビヨン エクストラフラット

ブレゲ「クラシック トゥールビヨン エクストラフラット」
自動巻き(Cal.581DR)。42石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約80時間。Ptケース(直径41mm)。3気圧防水。2495万9000円(税込み)。

 アブラアン-ルイ・ブレゲは時計の精度向上のため、1795年にトゥールビヨンを発明した。これは現代でもブレゲが誇る複雑機構のひとつである。

「クラシック トゥールビヨン エクストラフラット」は、ケースこそ直径42mmと大ぶりだが、厚さをわずか7mmに収めたトゥールビヨン搭載モデルだ。ムーブメントに関してはわずか3mmという薄さである。

 トゥールビヨンケージとテンプはチタン製で、シリコン製ヒゲゼンマイとシリコン製ホーン付きアンクル脱進機を備えている。プラチナ製ローターはムーブメント外周に配され、9時位置のパワーリザーブ表示が巻き上げの残存量を示してくれる。

 手仕上げのギヨシェが施された文字盤、先端にオープンワークが施された青焼きのステンレススティール製ブレゲ針、ケースのエッジに見られる繊細な刻みといった外装は、ブレゲの時計を特徴付けるものだ。

 文字盤に目を凝らすと、ブレゲの"シークレットサイン"が「XII」の左右に配されているのがわかる。これはアブラアン-ルイ・ブレゲが偽造を防止のため、ここに光が当たった時にのみ見えるエングレービングを施したものの名残だ。

対称の意匠で技術を示す「トラディション インディペンデント クロノグラフ」

トラディション インディペンデント クロノグラフ

ブレゲ「トラディション インディペンデント クロノグラフ」
手巻き(Cal.580 DR)。62石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約55時間。18KWGケース(直径44mm)。30m防水。1211万1000円(税込み)。

 ブレゲにとって、クロノグラフもまた重要な歴史を物語るものである。それはブレゲが現代のクロノグラフの基礎を作ったからだ。1820年には従来の時間と経過時間を同時に表示する「二重秒針時計」、22年には最初のインク印字式クロノグラフなどを開発している。

「トラディション インディペンデント クロノグラフ」は、その名前が示すようにクロノグラフ機構は通常輪列から独立している。つまり主ゼンマイの動力を使用しないため、精度に影響を及ぼさない。

シリコンヒゲゼンマイ

ブレゲヒゲゼンマイにはシリコン素材が採用されている。シリコン製であることのメリットは、磁気帯びせず、摩耗しにくいことだ。

 8時位置のリセットプッシャーを押すと、板バネにテンションがかかり、独立したテンプを持つクロノグラフ機構に20分のエネルギーを供給する。輪列の振動は3ヘルツであるのに対し、クロノグラフは5ヘルツで駆動するため、10分の1秒を表示することができる。板バネはカムディスクと結合することで、均等にトルクを伝達することができる。

「トラディション」シリーズの特徴である左右対称の構造を実現するため、クロノグラフの添付は時刻表示用のテンプと同じサイズになっている。なお、こちらのテンプは軽量なチタン製だ。ヒゲゼンマイは双方ともにブレゲ式ヒゲゼンマイが採用されている。アワーリングを備えたオフセンターの文字盤は、1812年頃からブレゲで採用されている特別な意匠だ。

航海用精密時計の功績を伝える「マリーン 5517」

マリーン 5517

ブレゲ「マリーン 5517」
自動巻き(Cal.777A)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。Tiケース(直径40mm)。100m防水。303万6000円(税込み)。

 ブレゲはマリン・クロノメーター(航海用精密時計)をごく初期に作り上げ、1815年にはフランスの王国海軍時計師となった。マリーン・コレクションはこの伝統に敬意を表し、文字盤に海と関連した要素を取り込んでいる。秒針のカウンターウェイトには海洋信号旗の「B」が配され、デイト表示の開口部は三角旗に由来する。

 マリーンはブレゲで最も現代的なコレクションであるが、同社の象徴的な特徴も備えている。針はブレゲ針に現代的な解釈を加えたデザインになっており、ローマンインデックスも同様だ。リュウズガードが備えられたケースサイドにも、刻みがつけられている。

 そして個別の製造番号も、ブレゲらしくケースバックではなく文字盤に記されている。このモデルに搭載されているムーブメントは、ラダーシェイプのローターを備えた自社製キャリバー777Aだ。

マリーン オートマティック

「マリーン 5517」チタンモデルのラバーストラップ仕様。262万9000円(税込み)。



Contact info: ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211


古典を革新する力 ブレゲ「クラシック」(前編)

https://www.webchronos.net/features/87166/
ブレゲが18世紀から代々受け継いできた装飾技術「ギヨシェ」を守るための取り組み


https://www.webchronos.net/features/89900/
ブレゲの懐中時計の代表作を解説。伝統が引き継がれるモデルも紹介

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