世界のセレブたちがどんな時計を着けているのか、ワンシーンを切り取り紹介する連載コラム「セレブウォッチ・ハンティング」。今回はアイコニックなエルメスのバッグである「バーキン」が生まれたきっかけを作ったイギリスの女優、ジェーン・バーキンが着用している腕時計を紹介しよう。
Text by Yukaco Numamoto
2023年2月6日掲載記事
エルメス「バーキン」誕生のきっかけを作ったジェーン・バーキン
ジェーン・バーキンはイギリスの女優、歌手、モデルで、女優シャルロット・ゲンズブールら三姉妹の母でもある。フランスに渡ってからは俳優でアーティストであるセルジュ・ゲンズブールと事実婚となった。ふたりはその後、袂を分かつことになるが、セルジュ・ゲンズブールとは公私にわたって良き関係を続けていた。
ジェーン・バーキンとエルメスの関係は1984年にさかのぼる。パリ、ロンドン間の飛行機内でジェーン・バーキンが隣り合わせたのは当時エルメスの会長であったジャン=ルイ・デュマである。バスケットバッグに無造作にたくさんの物が詰め込まれている様子を見て「なんでも入れられるバッグをお作りしましょう」と会長が申し出たことがきっかけで誕生したバッグが世界中にファンを持ち、現在では入手困難を極めるバッグ「バーキン」である。
ジェーン・バーキンが持つ有名なエピソードをバッグ以外でもうひとつ紹介しよう。世界各国で「歌詞が過激だ」と放送禁止騒ぎを起こした「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」の大ヒット中のできごとである。パートナーのセルジュ・ゲンズブールとのデュエット作品で、主演映画の「ガラスの墓標」の宣伝のために初来日していた。この時の彼女は妊娠8ヵ月だったのだ。そんな時期に長時間の飛行機移動で海外に宣伝活動に来たというのは周囲を驚かせたが、そのあたりは日本人との感覚の違いがあるのかもしれない。ジェーン・バーキンは驚いた報道陣に「何も心配しなくていいから!」と話したという記録も残っており、サッパリした性格がうかがい知れるエピソードである。
ジェーン・バーキンが愛用する腕時計はエルメス「ケープコッド」
ラフで自由なスタイルが多く、ジャケットスタイルの際もオーバーサイズ気味のものを着用していることが多いジェーン・バーキンが選んだ腕時計はユニセックスで展開するエルメスの「ケープコッド」のデイト表示付きモデルだった。手首に乗った雰囲気から見るとGMサイズだと思われる。
ホワイトダイアルにステンレススティールケースの組合せが涼しげなモデルである。この来日時に持っていたバーキンの金具の色ともさりげなく揃えているように見えるが、他の写真を見てみても日常的にこの腕時計を愛用しているようだ。ストラップは黒のベーシックなレザーで、着用時は手首の内側に時計を持ってくるのが彼女の基本スタイルである。
1991年に誕生した「ケープコッド」
「ケープコッド」はアンリ・ドリニーによるデザインで、ダイアルに配されるのはグラフィカルなアラビア数字だ。特に8の文字がエルメスの人気モチーフのひとつとなっている「シェーヌ・ダンクル」(アンカーチェーンを意味するフランス語)のデザインになっていることに気付かれる人も多いのではないだろうか。ダイアル部分は正方形でありつつ、ラグ部分は長く特徴的なデザインで、見る者に正方形という印象を与えない。
1991年に誕生して以来、男女問わず使いやすいデザインと幅広いサイズ展開、そしてインターチェンジャブルなストラップが人気を博しているモデルである。レザーストラップの種類も豊富で、その着け心地や発色の豊かさはエルメスの得意とするところである。また、一周ストラップだけでなく、ドゥーブルトゥールと呼ばれる手首を2周するストラップも選ぶことができるので、何度も印象を替えて楽しむことができる時計なのだ。
人生のように自由に楽しむスタイルで腕時計を選ぶジェーン・バーキン
若い頃から奔放なイメージがあるジェーン・バーキンであるが、現在も彼女らしく人生を謳歌中だ。来日が数十回にも及ぶ親日家で、アイコンアイテムとなっているバーキンにコケシの根付や数珠のようなチェーンネックレスを飾り、東日本大震災の直後に東北へチャリティ活動で駆けつけた時にもバッグに大きな日の丸のステッカーを貼ってお守りをいくつも付けていたことが記録されている。正義感が強く、行動力がある姿は76歳になる今でも私たちに魅力的に映り、永遠のファッションアイコンとして注目されている。
ストレスフリーな緩めのストラップの時計をまるでブレスレットかのように着用するスタイルは自由で、大胆なジェーン・バーキンの生きざまにリンクする。
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