ブルガリについて知っておきたい5つのポイント。超薄型ケースで世界記録を樹立した技術力

FEATUREWatchTime
2023.03.08

1884年創業の宝飾ブランド、ブルガリ。創業者のソティリオ・ブルガリは、古典主義にインスパイアされた独自のスタイルを作り上げ人気を博した。ハイジュエラーとして知られる同社だが、1970年代からは時計製造に本格的に乗り出しており、現在はマニュファクチュールとして存在感を放っている。今回は、そんなブルガリについて知っておきたい5つのポイントを紹介する。

ブルガリ アルミニウム

(左)「ブルガリ アルミニウム」。自動巻き(Cal.B77)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。アルミニウムケース(直径40mm)。100m防水。40万7000円(税込み)。
(右)「ブルガリ アルミニウム GMT」。自動巻き(Cal.BVL192)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。アルミニウム×ラバー製ケース(直径40mm)。100m防水。47万8500円(税込み)。2
Originally published on watchtime.com
Text by Rüdiger Bucher
2023年3月8日掲載記事


イタリアのデザインとスイスの技術力が融合したブルガリの腕時計

 ブランド創業者のソティリオ・ブルガリ(1857-1932)は、オスマン帝国支配下のギリシャ・イオニア海沿岸のエピルスという街で生まれた。銀細工職人であった彼はイタリアへ赴き、1884年にローマで自らの最初のジュエリーショップを開いた。

 1920年代初頭には、ブルガリはレディスウォッチを取り扱い品目に追加している。現在、ブルガリはジュエリーと時計のメーカーとして知られ、主にジュエリーに軸足を置く。しかしながら時計部門は徐々に重要性を増している。本社をローマに置きつつ、時計の生産はスイス・ヌーシャテルにある自社工房、ブルガリ タイムが担っている。

アレーグラ ウォッチ

ブリリアントカット・ダイヤモンドをはじめ、シトリン、ダイヤモンド、トルマリン、ペリドット、ロードライトをあしらった「アレーグラ ウォッチ」。クォーツ。18KPGケース(直径36mm)。30m防水。405万9000円(税込み)。

 この自社工房で、ブルガリがトゥールビヨンやミニッツリピーターなどの複雑機能を搭載した時計を生産していることはあまり知られていない。ブルガリはムーブメントからケースや文字盤までそこで製作している。「オクト フィニッシモ」で、ブルガリはいくつもの世界記録を保持する超薄型腕時計を展開してきた。また近年ではレディスウォッチのラインも拡充し、蛇をモチーフとした「セルペンティ」、ラウンド型の「ルチェア」、ジュエリーウォッチの「ディーヴァ ドリーム」や「アレーグラ」が展開されている。

 2020年には、かつて成功を収めた「ブルガリ アルミニウム」をリニューアルした。現在は時計やジュエリーのほか、香水やレザーアクセサリーも展開し、ブルガリ ホテルも複数経営している。

極薄ケースで世界記録を更新し続けた「オクト フィニッシモ」シリーズ

オクト フィニッシモ ウルトラ

「オクト」シリーズの10周年を記念し、発表された「オクト フィニッシモ ウルトラ」。手巻き(Cal.BVL180)。21石。パワーリザーブ約50時間。Ti×タングステンカーバイドケース(直径40mm、厚さ1.8mm)。10m防水。世界限定10本。完売。

 2022年3月に発売された「オクト フィニッシモ ウルトラ」は、ケース厚わずか1.8mmで、約3カ月間、世界で最も薄い機械式時計となった。それまで数年間、ケース厚2mmで最薄時計だったピアジェの「アルティプラノ アルティメート コンセプト」から世界記録を引き継いだのだ。ブルガリが2014年から「オクト フィニッシモ」で打ち立てた世界記録は、合計で8つ目となった。

 打ち立てた世界記録の中には、厚さ5.8mmの最薄のパーペチュアルカレンダー「オクト フィニッシモ パーペチュアルカレンダー」や、厚さ6.9mmの最薄の自動巻きクロノグラフ「オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT オートマティック」、厚さ7.40mmの最薄のトゥールビヨン「オクト フィニッシモ トゥールビヨン クロノグラフ スケルトン オートマティック」、厚さ6.85mm最薄のミニッツリピーター「オクト フィニッシモ ミニッツリピーター」などがある。

 2022年6月、リシャール・ミルは厚さわずか1.75mmの「RM UP-01 フェラーリ」を発表。これによってオクト フィニッシモ ウルトラの持つ最薄記録は塗り替えられた。RM UP-01 フェラーリは、現在もトップの座を保持している。

オクト フィニッシモ

ケースの薄さにおいて世界記録を樹立してきた歴代の「オクト フィニッシモ」シリーズ。奥から「オクト フィニッシモ トゥールビヨン」(2014年)、「オクト フィニッシモ ミニッツリピーター」(2016年)、「オクト フィニッシモ オートマティック」(2017年)、「オクト フィニッシモ トゥールビヨン オートマティック」(2018年)、「オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT オートマティック」(2019年)、「オクト フィニッシモ トゥールビヨン クロノグラフ スケルトン オートマティック」(2020年)、「オクト フィニッシモ パーペチュアル カレンダー」(2021年)、「オクト フィニッシモ ウルトラ」(2022年)。

複雑機構の製造能力

キャリバーBVL 288

ペリフェラルローターを採用した、厚さわずか1.95mmのキャリバーBVL 288を組み立てる様子。

 2000年、ブルガリは時計ブランドであるジェラルド・ジェンタとダニエル・ロート、そしてル・サンティエにある彼らの共同工房を傘下に収めた。そこでブルガリは自社製ムーブメントの開発を行い、打刻機能をはじめリピーターウォッチなど複雑時計を製作している。

ローマ帝国の起源を記念するコレクションを展開

オクト モネーテ

アンティークコイン付きのヒンジを開けるとシースルー仕様のトゥールビヨンムーブメントを堪能できる「オクト モネーテ」。手巻き(Cal.BVL 268 SK)。11石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。18KRGケース(直径46mm)。完売。

 ブルガリはローマ帝国の起源を記念して、帝政期のコインをあしらったコレクションを展開している。「オクト モネーテ」というモデル名で発表されたこのコレクションは、ヒンジ付きのカバーに紀元340年から350年頃の本物のアンティークコインをあしらったものだ。

 コインにはローマ皇帝コンスタンティヌス1世、もしくはコンスタンティウス2世のどちらかの肖像が描かれている。18Kレッドゴールド製ケースには、シースルー仕様であり、かつ世界で最も薄いトゥールビヨンムーブメントであるキャリバーBVL 268 SKが搭載される。その厚さはわずか1.95mmだ。

オクト モネーテ

チェーンを付ければポケットウォッチとして、また取り外しできるアタッチメントを利用すれば腕時計として身に付けることができる。

他ブランドとは一線を画すデザイン

オクト フィニッシモ オートマティック

素材違いの「オクト フィニッシモ オートマティック」。自動巻き。2万1600振動/時。パワーリザーブ約60時間。直径40mm、厚さ5.15mm。30m防水。左からSSケースモデル165万円(税込み)、Tiケースモデル215万6000円(税込み)、18KRGケースモデル627万円(税込み)。

 ブルガリの時計は、ドイツやスイスブランドと異なり、イタリアの影響を受けた独自のデザインが特徴だ。典型的なのは、2018年にレッド・ドット・デザイン賞でベスト・オブ・ザ・ベストを受賞した「オクト フィニッシモ オートマティック」だ。

 このデザインを生み出したのは、長年にわたりブルガリのウォッチ デザイン部門を率いる、ブルガリ ウォッチ デザイン センター シニア・ディレクターのファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニだ。

ファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ

ブルガリ ウォッチ デザイン センター シニア・ディレクターのファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ。

ユニークピースとして発表された、ブルガリの最も複雑な時計

オクト グランソヌリ パーペチュアルカレンダー

2018年に発表されたユニークピースの「オクト グランソヌリ カンティエム パーペチュアル/パーペチュアルカレンダー」。自動巻き(Cal.BVL 5307)。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。18KRGケース(直径44mm)。30m防水。完売。

 最も複雑なブルガリの時計は、ユニークピースとして発表された「オクト グランソヌリ パーペチュアルカレンダー」だ。この時計は、パーペチュアルカレンダーとミニッツリピーター、トゥールビヨンに加え、時計作りでも最高峰の技術を要するグランドソヌリ、プチソヌリを組み合わせている。

 4本のハンマーを装備し、搭載された自動巻きムーブメント・キャリバーBVL5307が1時間、15分、分単位をオンデマンドで奏でる。サンドブラスト加工が施された直径44mmの18Kローズゴールドケースは30mの防水性能を備える。2018年7月にローマで発表され、同月末にはアジアのコレクターに販売された。



Contact info: ブルガリ ジャパン Tel.03-6362-0100


ここ数年、評判がすこぶる良いブルガリ「オクト フィニッシモ」を着用レビュー

https://www.webchronos.net/features/89157/
【インタビュー】ブルガリ ウォッチ デザイン センター シニア・ディレクター「ファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ」

https://www.webchronos.net/features/90181/
なぜ「オクト フィニッシモ」は記録を打ち立て続けられるのか? ブルガリの技術的実力とデザインの熟達に迫る

https://www.webchronos.net/features/80178/