1884年創業の宝飾ブランド、ブルガリ。創業者のソティリオ・ブルガリは、古典主義にインスパイアされた独自のスタイルを作り上げ人気を博した。ハイジュエラーとして知られる同社だが、1970年代からは時計製造に本格的に乗り出しており、現在はマニュファクチュールとして存在感を放っている。今回は、そんなブルガリについて知っておきたい5つのポイントを紹介する。
(右)「ブルガリ アルミニウム GMT」。自動巻き(Cal.BVL192)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。アルミニウム×ラバー製ケース(直径40mm)。100m防水。47万8500円(税込み)。2
イタリアのデザインとスイスの技術力が融合したブルガリの腕時計
ブランド創業者のソティリオ・ブルガリ(1857-1932)は、オスマン帝国支配下のギリシャ・イオニア海沿岸のエピルスという街で生まれた。銀細工職人であった彼はイタリアへ赴き、1884年にローマで自らの最初のジュエリーショップを開いた。
1920年代初頭には、ブルガリはレディスウォッチを取り扱い品目に追加している。現在、ブルガリはジュエリーと時計のメーカーとして知られ、主にジュエリーに軸足を置く。しかしながら時計部門は徐々に重要性を増している。本社をローマに置きつつ、時計の生産はスイス・ヌーシャテルにある自社工房、ブルガリ タイムが担っている。
この自社工房で、ブルガリがトゥールビヨンやミニッツリピーターなどの複雑機能を搭載した時計を生産していることはあまり知られていない。ブルガリはムーブメントからケースや文字盤までそこで製作している。「オクト フィニッシモ」で、ブルガリはいくつもの世界記録を保持する超薄型腕時計を展開してきた。また近年ではレディスウォッチのラインも拡充し、蛇をモチーフとした「セルペンティ」、ラウンド型の「ルチェア」、ジュエリーウォッチの「ディーヴァ ドリーム」や「アレーグラ」が展開されている。
2020年には、かつて成功を収めた「ブルガリ アルミニウム」をリニューアルした。現在は時計やジュエリーのほか、香水やレザーアクセサリーも展開し、ブルガリ ホテルも複数経営している。
極薄ケースで世界記録を更新し続けた「オクト フィニッシモ」シリーズ
2022年3月に発売された「オクト フィニッシモ ウルトラ」は、ケース厚わずか1.8mmで、約3カ月間、世界で最も薄い機械式時計となった。それまで数年間、ケース厚2mmで最薄時計だったピアジェの「アルティプラノ アルティメート コンセプト」から世界記録を引き継いだのだ。ブルガリが2014年から「オクト フィニッシモ」で打ち立てた世界記録は、合計で8つ目となった。
打ち立てた世界記録の中には、厚さ5.8mmの最薄のパーペチュアルカレンダー「オクト フィニッシモ パーペチュアルカレンダー」や、厚さ6.9mmの最薄の自動巻きクロノグラフ「オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT オートマティック」、厚さ7.40mmの最薄のトゥールビヨン「オクト フィニッシモ トゥールビヨン クロノグラフ スケルトン オートマティック」、厚さ6.85mm最薄のミニッツリピーター「オクト フィニッシモ ミニッツリピーター」などがある。
2022年6月、リシャール・ミルは厚さわずか1.75mmの「RM UP-01 フェラーリ」を発表。これによってオクト フィニッシモ ウルトラの持つ最薄記録は塗り替えられた。RM UP-01 フェラーリは、現在もトップの座を保持している。
複雑機構の製造能力
2000年、ブルガリは時計ブランドであるジェラルド・ジェンタとダニエル・ロート、そしてル・サンティエにある彼らの共同工房を傘下に収めた。そこでブルガリは自社製ムーブメントの開発を行い、打刻機能をはじめリピーターウォッチなど複雑時計を製作している。
ローマ帝国の起源を記念するコレクションを展開
ブルガリはローマ帝国の起源を記念して、帝政期のコインをあしらったコレクションを展開している。「オクト モネーテ」というモデル名で発表されたこのコレクションは、ヒンジ付きのカバーに紀元340年から350年頃の本物のアンティークコインをあしらったものだ。
コインにはローマ皇帝コンスタンティヌス1世、もしくはコンスタンティウス2世のどちらかの肖像が描かれている。18Kレッドゴールド製ケースには、シースルー仕様であり、かつ世界で最も薄いトゥールビヨンムーブメントであるキャリバーBVL 268 SKが搭載される。その厚さはわずか1.95mmだ。
他ブランドとは一線を画すデザイン
ブルガリの時計は、ドイツやスイスブランドと異なり、イタリアの影響を受けた独自のデザインが特徴だ。典型的なのは、2018年にレッド・ドット・デザイン賞でベスト・オブ・ザ・ベストを受賞した「オクト フィニッシモ オートマティック」だ。
このデザインを生み出したのは、長年にわたりブルガリのウォッチ デザイン部門を率いる、ブルガリ ウォッチ デザイン センター シニア・ディレクターのファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニだ。
ユニークピースとして発表された、ブルガリの最も複雑な時計
最も複雑なブルガリの時計は、ユニークピースとして発表された「オクト グランソヌリ パーペチュアルカレンダー」だ。この時計は、パーペチュアルカレンダーとミニッツリピーター、トゥールビヨンに加え、時計作りでも最高峰の技術を要するグランドソヌリ、プチソヌリを組み合わせている。
4本のハンマーを装備し、搭載された自動巻きムーブメント・キャリバーBVL5307が1時間、15分、分単位をオンデマンドで奏でる。サンドブラスト加工が施された直径44mmの18Kローズゴールドケースは30mの防水性能を備える。2018年7月にローマで発表され、同月末にはアジアのコレクターに販売された。
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