ラドーCEOに就任して4年目になるエイドリアン・ボシャール。彼は今後、どのような方向に舵を切っていくのだろうか?
広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2023年3月号掲載記事]
ラドーの強みは、アイコンデザインと優れた装着感
ラドーCEO。1962年、スイス生まれ。96年までMotoGPロードレース世界選手権に出場。時計業界へ転身後、スウォッチ グループ傘下のブランド、サーチナのCEOを17年間務める。2008年からはユニオン・グラスヒュッテのCEOも兼任し、2000年代半ばに両ブランドのリポジショニングに成功する。20年7月、現職に就任。マスター・オブ・マテリアルを掲げ、デザインの打ち出しを行ってきた。
「私はいろんなブランドを見るのに慣れていたので、ハイエック・ジュニアからラドーCEOにならないかと言われたとき快諾したのです」。では、ボシャールはラドーにどんな強みを見いだしているのか?
「私たちの特徴は、ユニークなデザインです。あなたが手首にラドーを巻いているとしましょう。ロゴを見る必要がないのです。形を見ればラドーだと分かる。ユニークなデザインというのは重要なポイントです。もうひとつは装着感の良さです。セラミックスはユーザーフレンドリーで、手首に時計を感じさせないし、傷も付きにくいのです。何年経っても美しいままなのは“マスター・オブ・マテリアル”だからですね。これは単なるマーケティングメッセージではありません。私たちのDNAです」
彼の目指すひとつの方向性は、アイコンを盛り上げつつも、モダンさを加える、であるようだ。「1962年の『ダイヤスターオリジナル』はアイコニックでユニークなデザインを持つ時計でした。このデザインは私たちが作り出したものであり、オメガ『スピードマスター』のようなものです。私たちはこれを、今日のサイズとテクノロジーで翻訳しようと考えています。今のモダンな時計製造技術で、です」
その例として挙げたのがセラモスだ。
「セラモスはセラミックスと同じ未来を持っている素材です。セラミックスよりさらに硬く、しかもスティール素材のようにデザインできる」。つまり、よりデザインの幅が広がるということだろう。
そんな彼は、ビジネスの世界に身を置く前は、モーターサイクルの世界で、スイスのチャンピオンだった。ウォッチビジネスとまったく合わないように思うのだが?
ダイヤスター オリジナルの60周年を祝うスペシャルモデル。スイスのプロダクトデザイナーであるアルフレッド・ハベリの手により、ユニークな造形が一層強調されている。装着感も極めて優秀だ。ヒゲゼンマイにはニヴァクロンが採用された。自動巻き(Cal.R764)。25石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約80時間。セラモス×SS(縦45mm×横38mm、厚さ12.3mm)。10気圧防水。限定モデル。29万400円(税込み)。
「例えば、世界最高のMotoGPドライバーと競い合うような場合、ただやり過ごすために仕事をするのではなく、本当に情熱を持って取り組まなければなりません。エンジニアも必要だし、ロジスティックスも必要だし、組織化も必要。もちろん、技術も必要です。私はドライバーとしてチームに情報を提供しましたが、最終的には、時計産業と同じような人たちが集まったチームとなりました。今の私はビジョンを持っていて、ブランドの方向性も理解していますが、最終的にはエンジニアが必要ですし、時計師も必要です。だから、チームワークがとても大切なんです」
チームワークを掲げて、ラドーを率いるエイドリアン・ボシャール。新作を見るに、今後のラドーはますます面白くなるはずだ。
https://www.webchronos.net/features/91046/
https://www.webchronos.net/features/83314/
https://www.webchronos.net/news/89946/