神秘的な魅力を持つムーンフェイズ搭載時計。手元でロマンを感じよう

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2026.01.24

時計の文字盤に月相を示すムーンフェイズ。航海に必要とされた発明当時とは異なり、ムーンフェイズの機構は、今でこそ実用的なニーズはないものの、時間とともに表情を変える文字盤上のロマンティシズムこそがこの上ない魅力だ。科学の発展とともに歩んだムーンフェイズの歴史をたどりながら、今おすすめのムーンフェイズ搭載モデルを見ていこう。

オメガ「スピードマスター ムーンフェイズ」の表示。月や夜空を思わせる背景のディスクの意匠を楽しむのも、ムーンフェイズ搭載時計の味わいのひとつだ。


時計に佇む小宇宙「ムーンフェイズ」

ムーンフェイズは、文字盤上で月の満ち欠けを示す機能である。どのようにして月の形を変えているのか、まずはその仕組みを理解しよう。

月の形が変わる仕組み

一般的なムーンフェイズは、小窓から月をのぞかせるデザインである。ディスクの全面に夜空を描いた上に満月をふたつ配置し、ディスク1周で月の周期が2回見えるようになっている。

ディスクを回転させる歯車の歯数は、モデルにもよるが、59だ。月の満ち欠けの周期を平均29.5日とすれば、歯数を59にすることで、ディスクが1周する間に満ち欠けを2回見せられるためである。

実際の満ち欠けの周期は29.5日より少し長いため、一般的なムーンフェイズでは2~3年に1日の誤差が生じる。もっとも、一生使い続けても調整の必要がない超高精度モデルも存在する。

ムーンフェイズの歴史

ムーンフェイズは元来、暦の確認や、航海術などにおいて実用性を求められて開発されたメカニズムだ。たとえば曇りの日が何日も続き、月の位置や満ち欠けが視認できない時でも、ムーンフェイズさえあれば、月の存在を手にとるように把握できた。

今でこそ月の満ち欠けに関する情報はインターネットで簡単に入手できる。しかし、月相の把握は天候の良し悪しに委ねられていた時代、常時正確な情報を入手することはいかに困難なことであっただろう。月の満ち欠けや、その位置が重要な人々にとって、ムーンフェイズは非常に貴重な情報源だったのだ。

16世紀頃の置き時計に、ムーンフェイズはすでに見られている。18世紀に入って懐中時計に取り入れられ、腕時計に組み込まれ始めたのは1940年代に入ってからである。


知っておきたい。ムーンフェイズで愛好家を魅了するブランド

現在は多くの高級時計ブランドがムーンフェイズを採用している。そんな中でもムーンフェイズの作り手として代表的なブランドを3つ紹介しよう。

ムーンフェイズの先駆者ブレゲ

ブレゲ No.5

アブラアン-ルイ・ブレゲが製作した懐中時計「No.5」。ムーンディスクの月には顔が描かれており、以来、ブレゲでは同作を踏襲している。

ブレゲは1775年にアブラアン-ルイ・ブレゲが構えた時計工房から歴史をスタートさせたブランドだ。ブレゲは数々の画期的な機構を発明して時計史にその名を残しており、この天才時計師の名を受け継いでいる。

懐中時計にムーンフェイズを先駆けて取り入れたのもブレゲだ。1794年の名作「No.5」には、現代と同じスタイルのムーンフェイズがすでに実装されている。

ブレゲは月の満ち欠けの周期に端数が出る問題と向き合い、ディスクに月を2個描いて歯車の歯数を59とすることで、実際の月相を文字盤上に組み込んでみせたのである。

永久ムーンフェイズを開発したIWC

ダ・ヴィンチ・パーペチュアル・カレンダー

1985年に発表された「ダ・ヴィンチ・パーペチュアル・カレンダー」。約122年に1日の誤差という、精密なムーンフェイズを備えていた。

IWCは1868年に創業した、マニュファクチュールブランドだ。「ポートフィノ」、「ポルトギーゼ」、「アクアタイマー」といった代表コレクションで人気を集めている。

IWCが2015年に発表したムーブメントCal.50000には、従来型のムーンフェイズ搭載モデルより歯数の多い歯車が組み込まれた。このメカニズムによってムーンフェイズの表示誤差が大幅に減少され、理論上は約577.5年に1日の誤差しか生じないという精度を実現させた。

IWCが誇る永久ムーンフェイズ搭載モデルなら、人生の数倍にも及ぶ壮大な時と暦のカウウントを、はるか未来の子孫に委ねてみるというロマンに浸るのも悪くない。

コンテンポラリーエレガンスの神髄ゼニス

「エリート」コレクションのドローイング画。リュウズ、ローターなどにゼニスのシンボルの意匠が各所にちりばめられている。

1865年にその歴史をスタートさせたゼニスは、1969年に発表された世界初の自動巻き一体型クロノグラフムーブメント、名機「エル・プリメロ」で知られるブランドである。

もっとも、ゼニスはもうひとつ、代表的なムーブメントを持つ。1950年代に開発された自社ムーブメント名に由来する「エリート」だ。このエリートを搭載させたコレクションは、20世紀中頃の時計のデザインコードを現代にマッチさせたミニマルで流線的なデザインが特徴だ。まさにゼニスのコンテンポラリーエレガンスを表現している。

ムーンフェイズモデルにはCal.エリート692が搭載され、超薄型にもかかわらず、約50時間のパワーリザーブと自動巻き上げ機構を備えている。

おすすめのムーンフェイズ搭載モデル

ブレゲ、IWC、ゼニスはもちろんのこと、各社が誇るムーンフェイズ搭載モデルをチェックしてみよう。

ブレゲ「クラシック 7787」

クラシック 7787

ブレゲ「クラシック 7787」Ref.7787BR/29/9V6
自動巻き(Cal.591DRL)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。18KRGケース(直径39mm、厚さ10.2mm)。3気圧防水。543万4000円(税込み)。(問)ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211

ブレゲの「クラシック」は、ブランドを代表するコレクションだ。文字盤、針、ケースなど随所に、極限まで磨き上げられたシンプルな美しさを宿しており、その至高の表情は時計界の頂点に君臨する。ブレゲ針、ブレゲ数字、炉焼きのエナメル文字盤、ギョシェ彫りなど、時計の祖、ブレゲならではの意匠を余すところなく堪能できる垂涎のコレクションだ。中でも「クラシック 7787」は遊び心のある文字盤のデザインと、12時位置に配されたムーンフェイズの絶妙な配置が実に美しい。

深みのあるブラウンのストラップとローズゴールドのベゼルが調和する1本だ。シンプルでセンスの良い腕時計を探している人におすすめしたい。

IWC「ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー」

IWC「ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー」Ref.IW503302
自動巻き(Cal.52611)。54石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約168時間。18KRGケース(直径44.2mm、厚さ14.9mm)。3気圧防水。772万2000円(税込み)。(問)IWC Tel.0120-05-1868

ポルトギーゼはIWCのクラシックラインだ。上品かつ端正なデザインが特徴的なコレクションである。

「ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー」は、18Kレッドゴールド製ケースと、サントーニ社製ダークブラウンのアリゲーター・ストラップを備えたムーンフェイズ時計だ。サファイアクリスタル製風防は高度な技法によってアーチ型に加工され、そのエッジの美しさに思わず息をのむ。

永久ムーンフェイズと併せて搭載された永久カレンダーは、うるう年の調整も不要なカレンダー機能である。手に取って手首に載せた時に感じる、ずしりとしたメカニズムの存在感に超絶複雑時計の何たるかを堪能できる至福の1本である。

ゼニス「エリート ムーンフェイズ」

エリート ムーンフェイズ

ゼニス「エリート ムーンフェイズ」Ref.18.3100.692/01.C922
自動巻き(Cal.エリート692)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。18KRGケース(直径40.5mm、厚さ9.35mm)。5気圧防水。206万4700円(税込み)。(問)ゼニス ブティック銀座 Tel.03-3575-5861

薄型でエレガントなエリート搭載コレクション。6時位置に備えたムーンフェイズからは、精緻なメカニズムで駆動するゴールドの月や星々の描写が際立ち、9時位置にはスモールセコンドが配されている。

サンレイパターンを施した文字盤は、角度や光の加減によってさまざまな表情を見せてくれる。シースルーバックからはサテン仕上げの星型ローター分銅を鑑賞できる。

夜空の厳粛さを漂わせるムーンフェイズの色彩は非常にエレガント。夜のベールに際立つ月の神秘的な魅力を文字盤上で表現している。

オメガ「スピードマスター ムーンフェイズ」

スピードマスター ムーンフェイズ メテオライト

オメガ「スピードマスター ムーンフェイズ メテオライト」Ref.304.30.43.52.06.001
手巻き(Cal.9914)。45石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径43mm、厚さ13.6mm)。50m防水。272万8000円(税込み)。(問)オメガ Tel.0570-000087

“ムーンウォッチ”の通称を持つオメガの「スピードマスター」も、ムーンフェイズがよく似合うコレクションだ。

本作は6時位置の、写実的な月をあしらったムーンフェイズが何よりの特徴である。3時位置には時分同軸積算計、9時位置にはスモールセコンドとポインターデイトを配した多機能モデルである。さらに、文字盤にはメテオライトが与えられた。

ムーブメントは、コーアクシャル脱進機を備え、METAS認定のマスタークロノメーターを取得する。1万5000ガウスの超耐磁性能や優れた携帯精度を誇っており、実用性も抜群な1本である。

ブランパン「バチスカーフ コンプリートカレンダー ムーンフェイズ」

ブランパン「バチスカーフ コンプリートカレンダー ムーンフェイズ」Ref.5054 0140 01S
自動巻き(Cal.6654.P.4)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。セラミックケース(直径43.6mm、厚さ14.1mm)。300m防水。397万1000円(税込み)。(問)ブランパン ブティック銀座 Tel.03-6254-7233

ムーンフェイズディスクの意匠は、ブランドによってさまざまだ。“顔”付きを楽しみたいなら、ブランパンが良い選択肢になる。

ブランパンは1735年、スイスのヴィルレでジャン・ジャック・ブランパンが操業したブランドだ。1926年、世界に先駆けてレディース向け自動巻きムーブメントを搭載した「ロールス」をリリースしたり、1953年にはモダンダイバーズウォッチの祖となった「フィフティ ファゾムス」を生み出したりと、長い歴史の中で、時計市場での高いプレゼンスを示してきた。

今回取り上げるのは、「バチスカーフ コンプリートカレンダー ムーンフェイズ」である。ブランパンが1956年に生み出した、同名のデイリーユース向けダイバーズウォッチをルーツとする同コレクションは現在、さまざまなバリエーションが用意される。本作は2024年にリリースされた、セラミックス製モデル。バチスカーフ コンプリートカレンダー ムーンフェイズの特徴であるポインターデイト、小窓の曜日と月表示、そして6時位置にムーンフェイズを有しており、このムーンフェイズには星とともに顔が描かれた月が並ぶ。このアイコニックな顔立ちには、思わず目が引かれるのではないだろうか。

オリエントスター「M45 F7 メカニカル ムーンフェイズ」

オリエントスター「M45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディング」Ref.RK-BW0001S

オリエントスター「M45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディング」Ref.RK-BW0001S
手巻き(Cal.F8A62)。20石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39.5mm、厚さ11.9mm)。3気圧防水。41万8000円(税込み)。(問)オリエントお客様相談室 Tel.042-847-3380

2025年、オリエントスターは新たなムーンフェイズ表示を備えた、新型の手巻きムーブメントを開発した。このムーブメントを搭載した最新作が、「M45 F7 メカニカル ムーンフェイズ」だ。

従来品にもムーンフェイズ表示モデルは存在したが、本作は高級感を追求して製造されたことがポイントだ。ムーンフェイズ表示部分は、従来の一体型構造からディスク、マザー・オブ・パール製の月、月齢車の3層構造となった。これは、精緻な表現を目指したためとのこと。文字盤と針間のクリアランスも詰められており、2針というミニマルな表示機構と相まって、クラシックな高級ムーンフェイズとして仕上げられている。

一方で販売価格は税込み41万8000円と、手の届きやすい価格となっているため、初めてムーンフェイズウォッチの購入を検討しているユーザーにもお勧めである。

ロンジン「フラッグシップ ヘリテージ」

ロンジン フラッグシップ ヘリテージ

ロンジン「フラッグシップ ヘリテージ」Ref.L4.815.4.78.2
自動巻き(Cal.L899)。21石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径38.5mm、厚さ12.4mm)。3気圧防水。49万1700円(税込み)。(問)ロンジン Tel.03-6254-7350

ロンジンが1957年に発表した「フラッグシップ」の復刻モデルが本作だ。3針モデルは長らくロングセラーとしてラインナップしてきたが、2023年にムーンフェイズ搭載モデルが追加された。ポインターデイトと同軸になっており、実用性にも優れている。

シルバーオパーリンカラーのドーム型文字盤に、ゴールドカラーの針とインデックスが温かみを感じさせる。ムーブメントは、シリコン製ヒゲゼンマイを搭載し、約72時間のパワーリザーブを備えている。

IWC「ポートフィノ」

IWC「ポートフィノ」Ref.IW459401
自動巻き(Cal.35800)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径40mm、厚さ11.1mm)。3気圧防水。116万1600円(税込み)。(問)IWC Tel.0120-05-1868

IWCから、もうひとつムーンフェイズ搭載モデルを紹介しよう。奇をてらわないタイムレスなデザインが魅力の「ポートフィノ」コレクションである。

本作では、丸みを帯びたケースライン、長く伸びるリーフ型の時分針などのコレクションを象徴する意匠をそのままに、12時位置にムーンフェイズを搭載している。

ポリッシュ仕上げが基調となったケースはエレガントで、ムーンフェイズと相まって、特別な装いのアクセントとなってくれるだろう。


ムーンフェイズ機構の調整方法

ムーンフェイズの月相表示の誤差が大きくなってきた場合は、自分で調整を行う必要がある。2種類の調整方法を覚えておこう。

リュウズを回す

リュウズで調節するタイプのムーンフェイズは、基本的にリュウズを回して月相を調整できる。インターネットで検索すれば、月齢カレンダーでその日の月齢は簡単に確認できる。

リュウズで調節するタイプの基本的仕様は、まずムーンフェイズを新月の月齢0の状態にし、直近の月齢0の日から経過日数分のリュウズを回して進める。月齢15の満月を基準にする場合も、同様の手順で調整できる。

リュウズはムーンフェイズの調整だけでなく、日付や時刻の調整でも使用するため、実際に合わせる際は必ず取扱説明書で操作方法を確認しよう。

プッシュボタンを押す

プッシュボタンでムーンフェイズを調整できるモデルもある。ほとんどのモデルには、ケースサイドに小さなプッシュボタンが付いている。

プッシュボタンによる調整方法も、基本的な考え方はリュウズの調整と変わらない。月齢カレンダーでその日の月齢を確認し、ムーンフェイズを月齢0の状態にしたら、直近の新月または満月からの経過日数分をプッシュボタンで進めていけばよい。

プッシュボタンはクロノグラフの調整でも使用することがあるため、操作する際は十分に注意しよう。モデルによっては小さな調整用ボタンを“コレクター”と呼ぶ場合がある。


神秘的な魅力を放つメカニズム複雑機構を堪能しよう

文字盤上で月の満ち欠けを示すムーンフェイズは、装飾的な意味合いが強い複雑機構だ。現代では各ブランドが、個性に富んだムーンフェイズ搭載モデルを生み出している。

ムーンフェイズ時計を選ぶ際は、ブランドやコレクションの特徴も重視したい。ロマンあふれるムーンフェイズモデルを手に取り、腕元で小宇宙を感じてみよう。


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