国産初の本格ダイバーズウォッチ誕生から50周年となる2015年、セイコーは独自のケース構造を持つ「外胴」シリーズを刷新。それ以降、伝説的存在となった初期のダイバーズウォッチを復刻、もしくはオマージュしたモデルを打ち出してきた。今回は、2015年以降に登場した復刻モデルやコラボレーションモデルを紹介しよう。
進化を続けるセイコーのダイバーズウォッチ
1965年の国産ダイバーズウォッチ誕生から50年の節目となった2015年、セイコーは独自のケース構造を持つ「外胴」シリーズを刷新した。それ以降、セイコーのダイバーズウォッチの歴史における初期モデルを復刻、もしくはオマージュしたモデルが続々と登場する。
特筆すべきは、オリジナルのデザインやケース構造を引き継ぎながらも、新たな素材や機構を取り入れて現代的にアップデートしている点だ。2015年以降に登場した各モデルを紹介しよう。
2015年、国産初のダイバーズウォッチ発売50周年で「外胴」シリーズが進化
1975年にセイコーが世界に先駆けて開発した外胴を持つケース構造は、裏ぶたのない一体型ケースにプロテクターを被せることにより、回転ベゼルの誤作動を防ぎ、優れた耐衝撃性を実現した。この特徴を引き継ぐモデルが、セイコー プロスペックス「マリーンマスタープロフェッショナル メカニカル1000m飽和潜水用防水モデル」だ。
国産初のダイバーズウォッチ発売から50周年となる2015年に発表されたこのモデルは、1975年発表の“600mダイバー”と同様、外胴構造のケースを備えている。また、セイコー独自のヘリウム密閉方式により、水圧1000mまでの飽和潜水にも対応している。
600mダイバーから刷新された点も多い。外胴プロテクターは、純チタン製からジルコニアセラミックス製に変更。インデックスにはより明るい蓄光塗料ルミブライトを塗布し、視認性を向上させた。ストラップの素材も、従来のポリウレタンから強化シリコンに変更されている。
また同年には、高振動ムーブメントを搭載した“300mダイバーズ”の思想を受け継いだ限定モデルも登場した。このモデルは3万6000振動/時の新開発ムーブメント、キャリバー8L55を搭載し、裏ぶたのないワンピース構造のケースを備えている。また、1000m飽和潜水用防水であり、JIS規格の2種耐磁時計をクリアする高い耐磁性を有していた。
2016年、ダイビング教育機関「PADI」とのコラボレーションモデルが登場
2016年、セイコーはダイビング教育機関「PADI」とコラボレーションした限定モデルを発表した。このコラボレーションは、PADIによって設立された環境保護組織「プロジェクトAWARE財団」をセイコーが支援したことによって実現したものだ。
2018年にはセイコー プロスペックス「ダイバースキューバ PADI スペシャルエディション SBDC055」と、“サムライ”の愛称で知られるセイコー プロスペックス「ダイバースキューバ PADI スペシャルエディション SBDY011」が登場。両モデルの文字盤には、さりげない波模様のエンボス加工が施されていた。
SBDC055は200m空気潜水用防水を備え、自動巻きキャリバー6R15を搭載。一部がジャバラ形状のシリコン製ストラップを備えたプロフェッショナル向けのダイバーズウォッチで、ケースの直径42.6mmである。
SBDY011は直径43.8mmのケースで、200m空気潜水用防水を備えている。こちらのモデルは、自動巻きキャリバー4R35を搭載していた。
2018年、海洋保護への取り組みを示した「Save the Ocean」モデルを展開
セイコー プロスペックス「ダイバースキューバ Save the Ocean スペシャルエディション」は、その文字盤のデザインが抜きんでている。エンボス加工によるラインは、シロナガスクジラの特徴的な皮膚のひだを想起させる。また文字盤の深いブルーは、海洋学者ファビアン・クストーの協力によってセイコーが海洋保護活動を行っていることを示している。
直径43.8mmのステンレススティール製ケースは200mの空気潜水用防水となっており、ムーブメントには自動巻きキャリバー4R35を搭載している。
2018年、伝説的なモデルにオマージュを捧げるふたつの限定モデルが登場
1968年に発表された、3万6000振動/時の高振動ムーブメントを搭載した国産初のダイバーズウォッチ。50周年となった2018年には、直径44.3mmのハード加工ステンレススティール製ケースに自動巻きキャリバー8L35が搭載された「プロスペックス リミテッドエディション」が、世界限定1968本で発表された。
キャリバー8L系はダイバーズウォッチのために作られたムーブメントであり、通常2、3本であるテンワのアミダを4本に増設することで温度による変形を防ぐなど、温度影響を最小化する精度管理が施されている。
また、同じく2018年は、クォーツ式ムーブメントを搭載した世界初の600m飽和潜水用防水ダイバーズウォッチの発表から40年の節目でもあった。そのため、40周年を記念したセイコー プロスペックス「1978 クオーツダイバーズ 復刻デザイン」が登場、セイコーの初代クォーツ式ダイバーズウォッチをリバイバルした。
外観を忠実に再現しながらも、防水性能は1000mに引き上げられている。直径49.4mmのケースにはチタンを採用し、クォーツキャリバー7C46を搭載して、世界限定1978本で販売された。
2019年、植村直己が愛用した150mダイバーズウォッチを復刻
2019年、セイコーは再びアーカイブに光を当て、1970年に登場した150m防水のダイバーズウォッチを復刻した、セイコー プロスペックス「ダイバースキューバ 1970 メカニカルダイバーズ 復刻デザイン」を発表した。オリジナルモデルは冒険家・植村直己が愛用し、1974年~76年にかけて行われた北極圏12,000km犬ぞりの旅に携行された。
ダイバースキューバ 1970 メカニカルダイバーズ 復刻デザインでは過去の復刻モデルと同様、オリジナルを忠実に再現しながらも、風防をミネラルガラスからサファイアクリスタルへ、ストラップを塩化ビニルから強化シリコンへと変更している。
また、防水性能も150mから200mに上げられた。オリジナルのケースフォルムをザラツ研磨を駆使して再現、ケース表面には独自の表面加工技術であるダイヤシールドを施している。2万8800振動/時の自動巻きキャリバー8L35が搭載され、世界限定2500本として販売された。
また同年には、1968年の機械式ダイバーズにオマージュを捧げたセイコー プロスペックス「1968 メカニカルダイバーズ トワイライトブルー」も発表された。こちらは海外限定モデルとして発表され、世界でもセイコーのダイバーズウォッチはそのポジションを確立していった。
さらに、セイコー プロスペックスのハイエンドコレクションである「LX ライン SBDB027」が、「ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ 2019」(GPHG2019)においてダイバーズウォッチ賞を受賞した。ムーブメントには、セイコー独自の機構であるスプリングドライブが採用されている。スプリングドライブは温度変化や衝撃の影響を受けにくいため、ダイバーズウォッチとも好相性である。
2020年、ファーストモデルを再解釈し、現代的にリニューアル
2020年、セイコーは1965年に発表したダイバーズウォッチのファーストモデルを再解釈し、大幅なリニューアルを行なった。セイコー プロスペックス「ダイバースキューバ」では、ダイアルカラーやストラップを多彩に組み合わせたコレクションを展開し、約70時間のパワーリザーブを備える自動巻きキャリバー6R35を搭載。
同年には、セイコー プロスペックスの「LXライン」から、南極の露岩地帯「スカルブスネス」に広がるコケと藻の森を表現したSBDB039も発表された。直径44.8mmのチタンケースは、300m飽和潜水用防水だ。逆回転防止ベゼルには傷が付きにくいセラミックスを採用し、分目盛りと特徴的な蓄光性のドットを配している。ムーブメントには、自動巻きスプリングドライブのキャリバー5R65が搭載された。
2021年、1000m防水のクォーツダイバーズウォッチ誕生35周年記念モデルが登場
2021年、セイコー プロスペックスから「1986 クオーツダイバーズ 35周年記念限定モデル」が発表された。このモデルは、1986年に発表されたセイコー初の1000m飽和潜水用防水のクォーツダイバーズウォッチの誕生35周年を記念したものだ。ムーブメントには、クォーツムーブメントであるキャリバー7C46を搭載している。
その形状から「ツナ缶」の愛称で親しまれるようになった外胴プロテクターは、セイコーのダイバーズウォッチの個性として受け継がれている。1986 クオーツダイバーズ 35周年記念限定モデルの防水性能は1000mを誇り、セイコー独自の構造によってヘリウムバルブなしで飽和潜水に対応している。
新たな特徴として、リュウズには鮮やかな黄色で「LOCK」サインと回転方向を示す矢印が記されている。巻き上げシャフトも黄色で統一されているため、着用者はリュウズのロックが解除されたことをすぐに認識できる。
2022年、歴史的なモデルを現代によみがえらせた「Save the Oceanモデル」を展開
2022年には、1965年、68年、70年に発表された歴史的なダイバーズウォッチに現代的な解釈を施した3つのモデルが、海洋保護活動支援「Save the Ocean」を象徴するコレクションとして登場した。オリジナルの3モデルが極地探検に使用されてきたことから、デザインのコンセプトは“極地に広がる壮大な氷河の世界”だ。
「1968 メカニカルダイバーズ 現代デザイン Save the Oceanモデル」では、南極大陸の氷河がライトブルーのダイアルとダークブルーのベゼルで表現されている。オリジナルモデルは、植村直己、松浦輝夫による日本人初のエベレスト登頂の際に携行され、高い信頼性が実証された。
復刻モデルでは4時位置にねじ込み式リュウズを設け、ダイヤシールドを施したステンレススティールケースには約70時間のパワーリザーブを備えた自動巻きキャリバー6R35が搭載されている。
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