ノモス グラスヒュッテの「テトラ ネオマティック グラスヒュッテ時計製造175年」は、テトラコレクションの中でも斬新なカラーバリエーションを展開するモデルだ。エッジの効いたカラーリングながら、堅実な時計作りを行う同社のクラフツマンシップが息づいている。今回は、テトラ ネオマティック グラスヒュッテ時計製造175年の着用レビューをお届けする。
自動巻き(Cal.DUW 3001)。27石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約43時間。SSケース(縦33×横33mm、厚さ7.3mm)。3気圧防水。世界限定175本。50万6000円(税込み)。
これまでとは一線を画す鮮やかなカラーバリエーション
自他ともに認めるノモス グラスヒュッテファンである私は、「テトラ ネオマティック グラスヒュッテ時計製造175年」を初めて見たときに、ドイツのミュージシャン、ウド・リンデンベルクが歌う「Bunte Republik Deutschland(カラフルなドイツ連邦共和国)」の「Denn graue deutsche Mäuse, die haben wir schon genug(灰色のドイツネズミはもう十分だ)」という一節を思い浮かべた。
ノモス グラスヒュッテのデザイナーたちも、この時計に白、黒、青、赤のカラーバリエーションを与える際、同じようなことを考えただろう。このカラフルなドイツ時計は、比喩的に言えば、頭が四角い人たちのためのものだ。
テトラ ネオマティック グラスヒュッテ時計製造175年は、グローバリゼーションから生まれた。ウド・リンデンベルクが歌う「Fachmann für Bolero(ボレロのエキスパート)」には、赤文字盤のモデルが似合いそうだ。黒文字盤は「japanischen Sumo-Spezi(日本の力士)」に、青文字盤は「feschen Deutschen(威厳あるドイツ人)」、そして白は「ganzen Jumbos voller Eskimos(ジャンボ機いっぱいのエスキモー)」に似合うかもしれない。
ノモス グラスヒュッテは長年にわたり、角形ケースの「テトラ」コレクションを展開している。しかし、そのカラーバリエーションはどちらかというと繊細なものであった。例えば手巻きのキャリバー アルファを搭載するモデルでは、シャンパンゴールドやパウダリーピンク、ライトブルー、“マッチャ”グリーンなどのバリエーションが展開されている。
どうやらノモス グラスヒュッテはこの穏やかなカラーの文字盤たちに飽き飽きして、ウド・リンデンベルクが「Franzosen in seiner bodenlosen Lodenhose(底なしのローデンパンツをはいたフランス人)」と歌うように、テトラのカラーバリエーションをさらに広げたいようだ。
テトラ ネオマティック グラスヒュッテ時計製造175年は、厚さわずか3.2mmの自動巻きムーブメント、キャリバーDUW 3001を搭載する。鮮やかな文字盤が“底抜けに”輝いているのは、文字盤の表面ではなく下地に色を塗ることで、光が吸収されずに反射するためだ。この特殊な技術により、エナメルのようなつやのある仕上がりになる。
透明感のある文字盤に明るいベージュでプリントされたロゴやインデックスは、それぞれのカラーで異なる効果をもたらす。赤い文字盤では黄色みがかかって見え、青い文字盤では白っぽく見える。白文字盤のみ、ロゴやインデックスはブルーでプリントされている。針はステンレススティール製で、黒と白のモデルのみスモールセコンドの秒針が赤くなっている。
性別を問わないケースサイズ
「ジャケットに合わせたスニーカーより、このテトラは大胆な印象を与えます」とノモスのプロダクトマネージャー、ハイケ・アーレントは語る。
「自分のスタイルをしっかりと持った、時流や流行に流されないような人たちをイメージしてデザインしました。それは、例えばビジネスコンサルタント、NFTアーティスト、新進政治家、動画クリエイター、インテリアデザイナーなど、自身の道をぶれることなく歩み続ける独自性を持つ人たちです。このテトラの形状とサイズは、女性的でも男性的でもなく、全ての人のためのものです」
テトラ ネオマティック グラスヒュッテ時計製造175年の縦33mmの正方形というケースサイズは非常に現代的である。しかし一辺が33mmだからといって、小さな時計だというわけではない。対角線で測ると長さは46mmとなり、ラウンドケースの時計より大きく感じるだろう。
だが、ケースの厚さはわずか7.3mmで、そこに細いフレーム、小さなリュウズ、2段になったラグが組み合わされることで、エレガントな外観となっている。プレス加工されたサファイアクリスタル製ケースバックは、3気圧の防水性能を保持している。
自社製自動巻きキャリバーDUW 3001を搭載
カラフルでエッジの効いた外観に対して、この時計は地に足の着いた、少し保守的なモデルでもある。ノモス グラスヒュッテは、テトラ ネオマティック グラスヒュッテ時計製造175年に自動巻きキャリバーDUW 3001を搭載し、今やすっかり定着した「メイド・イン・ドイツ」をアピールしている。
2015年にこのムーブメントで初めて発表された自社製スイングシステムにより、同社はついにスイスのサプライヤーから解放されたのである。テンプには、シュヴァルツヴァルトに拠点を置くカール・ハース社製のヒゲゼンマイを備えている。DUW 3001の場合、ほぼすべての歯車機構が典型的なグラスヒュッテ仕様の3/4プレートの内側に収まっている。自動巻き機構はダブルラチェットホイールを備えた両方向巻き上げ式で、効率的なシステムにより約43時間のパワーリザーブを実現している。
ケースバックにはサファイアクリスタルを採用し、地板に施されたペルラージュや、ブリッジのグラスヒュッテ・ストライプ、シースルー加工が施されたローター、青焼きネジ、エングレービングなどのグラスヒュッテらしい仕上げを見ることができる。
なお、ノモス グラスヒュッテはすべてのムーブメントに固有番号を付与している。ローターの刻印から分かるように、キャリバー名に冠された「DUW」は「Nomos Glashütte Deutsche Uhrenwerke(ノモス・グラスヒュッテ・ジャーマン・ウォッチ・ムーブメント)」に由来するものだ。
個々のムーブメントの精度をテストしたところ、結果に多少のばらつきは見られたものの、常にクロノメーター規格値に収まった。例えば赤のテトラに搭載されているキャリバーDUW 3001は完全巻き上げ時で1日5.9秒進み、黒のテトラでは2.1秒の遅れがあった。さらに追加巻き上げ無しの24時間後には、赤が5.3秒進み、黒が2.0秒遅れに収まった。
上質なコードバンレザーストラップを採用
ケースバックに刻印されている通り、テトラ ネオマティック グラスヒュッテ時計製造175年は各色175本ずつの限定販売である。組み合わされているストラップは、手作業でオイルを塗り、釉薬を使って表面を磨いた、ホーウィン社製のコードバンストラップだ。ステッチが施され、プレス式フォールディングクラスプが装備されている。
クラスプのピンは、ストラップと擦れるとわずかだがレザーに傷がついてしまうため少々注意が必要だ。また、クラスプのループが固定されていないためずれやすい。悪くはないが、時計を急いで着けようとしている時は、少し面倒だ。
厚みのあるコードバンレザーは、手首に柔らかくなじむまで時間がかかる。それに、鮮やかで目立つ赤や青のテトラを人前で着けることに慣れるには、時間がかかるだろう。テトラ ネオマティック グラスヒュッテ時計製造175年は性別を問わない時計だが、おそらく万人のためのものではないだろう。「Bizimle digeri arasinda telörgüden görünmez bir cit örüyor(私たちの間に見えないフェンスを作っている)」のである。
https://www.webchronos.net/features/32980/
https://www.webchronos.net/features/81089/
https://www.webchronos.net/features/48184/