パックマン風デザインながら、中身は本格ダイバーズ! 「デプスマスター ピクセル アート」を論評

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2023.03.16

『クロノス日本版』の編集部員がニバダ グレンヒェンの限定モデル「デプスマスター ピクセル アート」を好き勝手に論評する。アンダーンとのコラボレーションにより、1960年代の名作ダイバーズをポップに生まれ変わらせた同作。パックマンを連想させる見た目とは裏腹に、本格スペックを持った“時計にうるさい人”ほど関心する1本だった。遊び心を持ちながら、しっかりと作り込まれた時計が欲しい人にとってのベストバイだ。

小林勝彦:写真 Photographs by Katsuhiko Kobayashi
阿形美子:文 Text by Yoshiko Agata
2023年3月16日掲載記事

デプスマスター・ピクセル アート

“パックマン”の通称で知られるデプスマスターにレトロゲームのテイストを加えた限定コラボレーションモデル。デプスマスターは1965年の登場時から、破格の1000m防水というハイスペックであり、本モデルもその特徴を継承。オリジナル同様、防水性能はそのままに39mmというコンパクトなケースに収めた。


ポップな見た目とは裏腹に、オタクが喜ぶ本格スペック

細田デプスマスター・ピクセル アート パックマン今回着用した「デプスマスター・ピクセルアート」は、ニバダ グレンヒェンとアンダーンのコラボレーションモデルです。元々、デプスマスターはアラビア数字インデックスのフォントから“パックマン”と呼ばれてきたんですけど、今回、アンダーンとコラボして本当に“パックマン”モデルを作っちゃった(※)、というわけです。

※パックマン(=バンダイナムコ)との正式なコラボレーションではなく、あくまでパックマンからインスピレーションを受けたモデルとして販売

鈴木インデックスはパックマンにさらに寄せてるんでしょ?

デプスマスターは、3・6・9時のインデックスのフォントから“パックマン”と称されてきた。本作では、そのデザインを踏襲しながらダイアル全体にグリッドパターンを施した。また、主張は控えめだが、6時位置の“SWISS MADE”の文字もうれしいポイント。

細田いや、フォントは元々この形なんです。でも色を変え、加えてピクセルっぽい表現にしています。9時とか6時の数字がパックマンっぽいですよね。

土井定番モデルのフォントはベージュっぽい色味です。

デプスマスター

1960年代に販売されていたオリジナルのデプスマスター。ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)が「パックマン」を発売したのは1980年のため、当然インデックスデザインはパックマンモチーフではない。

細田一見するとネタっぽい時計ではあるんですが、実は1000m防水で、ソプロードの自動巻きを載せています。なのに、ケース厚は13.5mm、サイズも直径39mmということで、オタクがすごく喜びそうなスペック。その上、税込みで15万6200円なので、結構、ダイバーズとして買いなんじゃないかな、と思っています。

鈴木これはもう、スペックから価格から結構無敵ですよね。オタクホイホイなうえに、パックマンも可愛いし。これは普通に買えるんだっけ?

広田アンダーンのサイトから購入できます。もう発売されてますね。

細田200本限定ですが、まだ売り切れてないですよ。

広田これは買いだねぇ。

鈴木ですねぇ。

デプスマスター・ピクセル アート

ニバダ グレンヒェン×アンダーン「デプスマスター・ピクセル アート」
自動巻き(Cal. Soprod P024)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SS+DLCケース(直径39mm、厚さ13.5mm)。1000m防水。世界限定200本。15万6200円(税込み)。

土井この価格帯で同等のスペックのモデルを探してみましたが、やっぱり見つからなかったです。

細田ケースのコーディングもPVDじゃなくてDLCで耐久性が高いし。バックルにもDLCされています。

広田・鈴木ちゃんとしてる!

鈴木スペックが恐ろしくちゃんとしてるのに、パッと見はこんなに可愛いってスゴいよね。本格ダイバーって言っちゃっていいスペックなのに、遊び心いっぱい。


休眠から目覚めたニバダ グレンヒェンの魅力

広田このニバダ グレンヒェンっていう会社は1879年に創業したんですけど、クォーツの普及によって休眠期間がありました。それを2019年にギョーム・ライデという若者が復活させたのが現在のブランドです。

広田彼はエクセルシオパークの復興にも携わったりしていて、時計オタクでビジネスもデキるっていう男なんですね。彼も元々オタクだから、見るポイントは良いとこ突いています。

細田ちなみにニバダ グレンヒェンは、基本的にはH°M'S" WatchStore(エイチエムエスウォッチストア)で購入できるんですけど、このモデルはアンダーンの公式サイトからでないと購入できません。

デプスマスター・ピクセル アート

広田アンダーンもカスタマイズ時計って面白いことをやっていますね。創始者のマイケル・ヤングと話したことがありますけど、良い男でした。

細田彼も時計オタクで、クラウドファンディングのキャンプファイヤーでブランドを立ち上げたんですよね? そもそもはヴィンテージウォッチを最新の時計として手頃な価格で手に入れられるようにと始めたブランドなので、そういう意味でも親和性の高いコラボレーションかなとは思います。

広田やっている内容は、昔のクロノスイスに近いですね。要は、ムーブメントは汎用のものを使って、面白いケースや文字盤を与えて、ユニークなものを手頃の値段で出す、と。クロノスイスは自社製ムーブメント路線に行っちゃいましたけど。

鈴木うん、昔は手頃でしたもんね。ETA使ってね。

広田それを今にやってくれているのがまた良いです。


蓄光はあくまでもデザイン重視か?

広田そういう背景も独特ですが、プロダクトとして見ても、あんまり抜けがない。

細田そうですね。まあ、強いて気になった点を挙げるなら、蓄光が全然光らないことくらいですかね。

デプスマスター・ピクセル アート 蓄光

アラビア数字インデックスと時分針、秒針の先端と、回転ベゼルのスタート位置に蓄光塗料が塗布される。ISOには準拠しないが、暗闇でもパックマンのゲーム画面を思わせる。

鈴木でも、結構あるあるだよね。意外と他のブランドでも光らないことあるし。

細田蓄光塗料って、光らせる色とベースの色との掛け合わせによって光り方に差が出るから、きっと黄色いベースを緑に光らせるのはまだ難しいんだと思います。

土井夜光の厚みがないのも、光りにくい理由かもしれないです。

広田夜光をパンパンに入れちゃうと、ピクセルっぽさが失われそうですから。

細田パックマンの見え方を重視したってことですよね。まぁ、本当に潜る用途なら、そもそも、ペゼルの目盛りに蓄光がないのは論外なので。そういう意味では、スゴいスペックは持っているけどネタに振り切ってます。

鈴木陸ダイバーとしては十分ですよ。


1000m防水ながら、コンパクトかつ軽量なケース

細田ヘッドとストラップとのバランスはどうでしたか? これは1000m防水にしては軽いですが。

広田時計軽いは七難隠すだから、別に全然イケましたよね。

パックマン ストラップ

ストラップはブラックカーフレザーの他、トロピックラバー(ブラックかイエローを選択)が1本付属する。

鈴木ケース径も小さいから、全然気にならなかった。

細田ダイバーズウォッチって、ひと昔前まで300m防水でもそこそこ分厚かったし、1000m防水となると20mm近いようなイメージでした。でもこれは13.5mmに仕上がっている。これってやっぱりケースの噛み合わせが良くなったからでしょうか。

デプスマスター・ピクセル アート ケースサイド

金属表面の高度を高めるDLC(Diamond-Like Carbon)コーティングで仕上げられたSSケース。9時位置にはヘリウムエスケープバルブも配される。1000m防水ながらケース厚はなんと13.5mm。

広田加工技術の進化が露骨に現れていると思います。

鈴木ケースの切削とパッキンの改善の結果だよね。

広田去年、タグ・ホイヤーが厚さ15.5mmの1000mダイバーを出してスゴいって言ってたのに、なぜかニバダ グレンヒェンがそれを上回ってくるっていう意外性(笑)。