本格機械式かつマニュファクチュールでありながら、手の届く価格設定で人気を博すスイスの新鋭。それがフレデリック・コンスタントだ。今季はブランドの根幹をなす2大モデルのアップデートを敢行。成熟度も完成度も十分、しかもどちらも価値ある限定品ゆえ、絶対に見逃がせない!
Edited by Tomoshige Kase
2023年3月30日掲載記事
“手の届くラグジュアリー”を真摯に追求
歴史ある名門が居並ぶ時計大国スイスにおいて、ことあるごとに話題を打ち出す新進ブランドとして知られるフレデリック・コンスタント。
1988年の創業からわずか16年でマニュファクチュールムーブメント(自社ムーブメント)を製造する技術力に加え、文字盤側からメカをアピールするモデルの開発など、類い稀なる革新性を備えたブランドだ。
常に注目を浴びるのが、製品の驚くべき価格設定。創業者ピーター・スタースの理念である“手の届くラグジュアリー”を反映し、高品質かつリアリティーあるプライスの優良ウォッチを、数多く揃える実力派なのである。
ブランドのモットーである“手の届くラグジュアリー”を象徴するモデルとして、黎明期から作り続けているのが定番シリーズの「ハートビート」だ。
機械式時計の精度を調速する役割を担う心臓部であるテンプ。その動きを文字盤から観賞できるオープンダイアルの腕時計は、1994年のリリース以降、瞬く間に人気のコレクションへと成長した。
リーズナブルなプライスだからといって、コスト主義のオートメーション生産かというと、さにあらず。スイス伝統の時計製造技術を惜しみなく注ぎ込んでいるのだ。
時計内部に収められた機械式ムーブメントを構成するブリッジ(受け)やベースプレート(地板)には、スイス高級時計を彩ってきたコート・ド・ジュネーブやペルラージュ装飾が施され、クラシックな美しさをたたえる文字盤と同様に、丁寧に作り込まれている。
受け継がれる自社製ムーブメント「FC-910」
そんなフレデリック・コンスタントのアイコンモデルが、装いを新たに登場し、話題となっている。「クラシック ハートビート マニュファクチュール」は、ブランドの原点に立ち返った小ぶりな直径39mmのケースがポイントのひとつだ。
かつて2004年に発表した手巻き式の自社製ムーブメント、Cal.FC-910を搭載した「ハートビート マニュファクチュール」がそのオリジンである。
この新作は当時と同サイズのケースを用いつつも、文字盤の開口部をサークルに大きく取ることにより、テンプを含め、メカの駆動がさらにワイドに楽しめるデザインとなっている。
ラッカー仕上げのダイアルには、スリムなローマ数字のインデックスとレイルウェイ式の目盛りを配し、クラシックかつ精緻なルックスに。ムーブメントにはペルラージュとコート・ド・ジュネーブ装飾が施された上質な仕上がりだ。
このような惜しみない技術を注いだ新作の「クラシック ハートビート マニュファクチュール」も、なんとアンダー55万円という驚異のプライス。
他ブランドの場合、高級ブランドであればあるほど、製品を開発・完成した後に、そこにかかった経費から販売価格が決定されることが多い。だが、フレデリック・コンスタントでは、商品開発の前段階で価格を設定する。「手の届くラグジュアリー」というブランド理念が決してブレないように、開発・製造現場の叡知を結集して開発にあたる。
フレデリック・コンスタントにとって、ブランド理念に関わる「価格」は非常に重要な要素なのだ。
パテック フィリップやヴァシュロン・コンスタンタンなど、スイスを代表する著名なブランドの本社が軒を連ねるスイス時計産業の中心地のひとつ、ジュネーブ郊外のプラン・レ・ワット。フレデリック・コンスタントがこの地にファクトリーを構えたのは2006年のことだ。
以来、マニュファクチュールモデルはデザインから開発、組み立てや品質管理まで、すべて自社で行うことでコストを圧縮。他の追随を許さないリアルプライスを実現させているのである。
自動巻き(Cal.FC-930-3)。26石。2万8800振動/時。SSケース(直径39mm、厚さ10.29mm)。5気圧防水。アリゲーターストラップ。世界限定930本。55万円(税込み)。
https://frederiqueconstant.jp/features/manufacture/