『クロノス日本版』の編集部員が話題のモデルをインプレッションし、語り合う連載。今回はノモス グラスヒュッテ「ラドウィッグ」を好き勝手に論評する。四半世紀にわたって愛され続けるモデルだが、現在では自社製ムーブメントを搭載し、外装も中身も一層の進化を遂げていたのだった。
阿形美子:文 Text by Yoshiko Agata
2023年4月4日掲載記事
ラドウィッグでノモス グラスヒュッテの進化を感じる
細田今回は、ノモス グラスヒュッテ「ラドウィッグ」の35mmモデルを着用しました。
鈴木ムーブメントは、手巻きでパワーリザーブ約43時間のアルファを載せてます。
細田ラドウィッグにはサイズや文字盤にバリエーションがあるんですけど、1番ベーシックなものを選びました。
広田ラッカー仕上げのモデルですね。
細田このモデルは本当に良いですよね。小径ケースだからラグの長さが映えるし、好事家好みの時計かと思います。
手巻き(Cal.アルファ)。2万1600振動/時。パワーリザーブ約43時間。SSケース(直径35mm、厚さ6.8mm)。3気圧防水。27万5000円(サファイアクリスタルバックの場合、税込み)。
鈴木このケースだからこそ、長いラグも腕に載ってくれますね。
広田ノモスって実際のケース径に対してラグが長いから、時計としては大きく見えるし、その分、より太い腕を求める時計ではあるけど、35mmならむしろ良いんじゃないかな。
土井ベゼルもかなり薄いですよね。
鈴木うん。だから、バランスが合ってるよね。これだけ小さくても開口部が大きいから存在感があって、そこに薄くて細いベゼルと細長いラグを組み合わせていて。装着感も、日本人の細い腕でも全然問題ない。
広田うん、時間も見やすいし。
細田ドイツのシンプルな時計のお手本のようなバランスですよね。
計算され尽くした“普通に見える”デザイン
鈴木“普通に見える”って難しいんですよね。普通に見えるのは、すごくまとまりが良いとか、デザインが優れているってことで、その時点で普通じゃないので。特に、ノモスはバウハウス系のデザインを全体に行きわたらせているからこそ、成立しますよね。
細田バウハウスの特徴かもしれませんけど、フラットなデザインがすごくかっこいいですよね。一般的に、時計って立体感が命なのに、ありえないぐらいにフラットにして、でもそれをお洒落に見せちゃってる。
広田1番最初のラドウィッグって、スモールセコンドのところが何もないプレーンな仕上げだったんですね。現行モデルは同心円状のサークルが入って、ちょっとお高級仕様になっていますね。わずかにグレードアップされています。
鈴木そういえば、これっておいくらですか?
細田27万5000円です。
鈴木まぁ、昔から比べたら上がったけど、でも今なら十分お値打ちですね。
細田現在だと、手巻きのアルファを搭載しているのが大体20万円後半ぐらいで、自動巻きだと40万円後半ぐらい。それぞれ以前は10万円台・30万円台くらいで買えたものなので、ちょっと値段は上がっていますけど、まあ、今の他のブランドの値段を考えると頑張っているかと思います。
広田手巻きで良いと思います(笑)。
普段使いに絶妙な薄型ケース
広田あとやっぱ、ノモスに関して言うと、明らかに出来が良くなっています。見た目はそんなに変わらないですけど、昔は、テトラとかタンジェントはケースが結構ユルかったんです。気密性が低かったんですよ、実は。今は普通に使えるようになった。
土井意外とケースの面のダレも見られないですね。
広田確かにそうです。
土井平面じゃないのが良いのかもしれないですね。
鈴木この形状だとそこまでビッカビカに磨かなくても目立たないってのもあるかも。
土井ケース厚は6.8mmで薄型ではあるんですけど、薄すぎない。そこも無理に設計していないなと思います。
細田うんうん。
鈴木安定感。
細田あとケースの形状はどうですか? すり鉢状みたいになっていますが、このおかげでデザイン的にも視覚的にもより薄く見えるのかな、とも思いますが。
鈴木視覚効果はありますよね。
広田ノモスってケースの磨きはそんなに良いわけじゃないので、ケースサイドがズドーンとしていると厚みがある分目立つけど、ラドウィッグのような形状だと目立ちにくい。
鈴木手巻きのムーブメントで薄くパッケージしているのも良いんだろうね。
細田ちなみに、ベゼルのところとケースバックのところにそれぞれ抉り用の溝が付いていますけど、これは整備しやすくするためですか?
広田単純に嵌め込みにして、薄さを稼ぐっていうことじゃないかな。だから、昔のノモスはケースの気密性が微妙だった。
土井今はちゃんと3気圧あるので安心です。