オメガの代表的なコレクションと言えば、「スピードマスター」と「シーマスター」だ。どちらのコレクションも、高い技術力や開発力を有する、オメガならではの傑出したモデルの数々が展開されている。今回は、このうちシーマスターに焦点を当てる。その歴史や、現代のモデルについて、理解を深めよう。
オメガ シーマスターとは
“海の守護神”の名を冠する「シーマスター」は、オメガのダイバーズラインとして登場したモデルだ。シーマスターが誕生したのは1948年。1848年にオメガが創業してからちょうど100年後のアニバーサリーイヤーだった。
オメガは商業化されたダイバーズウォッチの先駆けでもあった。シーマスターの誕生からさかのぼること10余年の1932年、「マリーン」を発表。ダブルケースをコルクで密封する構造で、時計の中心部への水の侵入を防ぎ、ダイバーの危険度を大幅に軽減させたのだ。
その後、オメガは第2次世界大戦中にはイギリス軍および連合軍のウォッチサプライヤーに指定され、軍の要望に応えるかたちで、さらに防水性、耐衝撃性、耐磁性に磨きをかけていく。そういったスペックの向上を背景に、誕生したのがシーマスターなのだ。
オメガ シーマスター「初代〜2000年代」までの歴代モデルを紹介
オメガのシーマスターの初代から2000年代までの歴代モデルを、時系列順に紹介していく。
初代シーマスター
オメガは1940〜45年にかけて英国国防省に11万個以上の時計を提供したことで、技術力が高く評価されるようになった。
戦後、軍用時計として培った耐久性と信頼性はそのままに、市民生活にふさわしい洗練されたデザインが求められるようになり。その求めに応えて初代の「シーマスター」が開発された。
現代に至るオメガプロフェッショナルウォッチの先駆けともなったモデルだ。
シーマスター300
オメガは、1957年に「プロフェッショナルライン」を創設した。そのラインの中には、後に海底探検に活躍する「シーマスター300」、NASAの宇宙探査のパートナーとなる「スピードマスター」、1000ガウスの耐磁性を有する「レイルマスター」として発展することとなる。
シーマスター30
1962年に発表された「シーマスター30」。「30」というモデル名は、防水性能ではなくムーブメントの大きさのこと。オメガの30mmキャリバーは、大量生産されるほど人気があった。
「シーマスター30」は、壊れないよう高耐久さを重視して製造してあるため、状態が良いものでも10万円代で購入することが可能だ。
シーマスター60
1969年に登場した「シーマスター60」は、「60mm」の防水性能があり、カラーバリエーションは、ブラック、ブルー、レッドの3種類で生産された。
ケースはスピードマスターの一部にも共有で使用されているもので、1960年代にオメガが使用していたケースメーカー「ラ・セントラル・ボワット」で製造されたもの。
37mmというケースサイズはダイバーズウォッチとしては控えめだが、ほとんどの男性に着用できるモデルでもある。
シーマスター600 プロプロフ
1970年代には、「シーマスター プロフェッショナル 600」が発表された。フランス語で「プロフェッショナルダイバー」を意味する「plongeur professionnel」から作られた造語の「プロプロフ」の通称で知られる。
ダイバーの安全を守るため、モノブロックケースの9時位置にねじ込み式リュウズ、2時位置にロック機構を配したのが特徴だ。このロック機構を解除しない限り、ベゼルが水中で誤って回転することはない。
シーマスターコスミック2000
「コスミック」は英語で「宇宙」を意味し、胴と裏蓋が一体化した構造のケースを採用したモデルだ。
これは、防水性や防塵性に優れ耐久性を向上させたもので、「コスミック2000」の前身である「コスミック」よりも、大型ケースやガラス防風を採用することでクォリティをアップさせている。
シーマスター プロフェッショナル 200
1978年に登場した「シーマスター プロフェッショナル 200」は、現行モデルである「シーマスター300」の前身とも言えるモデルだ。
1978年にフランスの政府機関である海軍水路海洋学局(SHOM)に選ばれたことからも、その性能の高さがうかがえる。公式の海図作成という任務に大きく貢献したのだ。
今日ではその実績をたたえて、本モデルは「シーマスター プロフェッショナル“SHOM”」とも称されている。
オメガ シーマスター「2000年代以降」のモデル
1957年に「シーマスター300」が登場して以降、シーマスター」コレクションではさまざまなモデルが展開されている。
現行のシーマスターシリーズは、「アクアテラ150M」「ダイバー300」「プラネットオーシャン600M」「ヘリテージ」の4つのラインを基本に構成されている。
シーマスター アクアテラ 150M
「シーマスター」の性能はそのままに、クラシカルなツイストラグやチークパターンの文字盤など、ビジネスシーンにも対応する上品なディテールを取り入れた。自動巻き(Cal.8900)。39石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径41mm、厚さ13.2mm)。15気圧防水。96万8000円(税込み)。
2002年に誕生した「シーマスター アクアテラ」。アクアは“海”、テラは“地球”という意味のラテン語で、モデルの活躍するフィールドを指す。つまり、海を始めとしたアクティブシーンから普段のビジネスシーンにまで対応するモデルなのだ。
文字盤には高級ヨットのウッドデッキに着想を得たチークパターンを採用しているのも特徴。ドレッシーな要素を取り入れながら、高い耐衝撃性と150m防水というシーマスターの性能をそのまま備えている。
シーマスター ダイバー 300M
1993年の登場以来、シーマスターの中でも人気を集めるアイコン。現行モデルでは、セラミック文字盤に、1万5000ガウス以上の耐磁性能、さらに、脱進機の摩擦を軽減するコーアクシャル エスケープメントを備え、外装・中身ともに進化を続けている。自動巻き(Cal.8800)。35石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約55時間。SSケース(直径42mm、厚さ13.6mm)。30気圧防水。91万3000円(税込み)。
シーマスター300の登場を皮切りにダイバーズウォッチとしての地位を確立したオメガは、1993年に新たに「シーマスター プロフェッショナル ダイバー300M」を発表した。
水深300mまで対応する高い防水性や、ダイビングベゼルやヘリウムエスケープバルブといった機能が搭載され、より実践的な潜水活動での使用が想定されている。まさにプロフェッショナル仕様のタイムピースだ。
シーマスター プラネットオーシャン
2005年のモデルよりもダウンサイジングされ、より着けやすくなった現行モデル。600mの深海にまで対応するタフさを持ちながら、ビビットなオレンジを効かせたデザインやトランスパレントバックなど、そのデザイン性で目も楽しませてくれる。自動巻き(Cal.8900)。39石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径43.5mm、厚さ16.1mm)。60気圧防水。103万4000円(税込み)。
オメガはさらなる深海への探検を志すべく、2005年に新たなタイムピースを発表した。「シーマスター プラネットオーシャン」である。
超本格派ダイバーズラインである本モデルは、600mを超える防水を実現している。よりプロフェッショナルに向けた高い防水性へと舵を切ったシリーズで、まさに深海を相手にするプロから求められる時計であることは間違いない。
ヘリテージモデル
2014年にコレクションに加わった「シーマスター 300は、2021年にモデルチェンジした。アルミ製プレートのベゼルやロリポップ秒針など、よりヴィンテージ感あるデザイン要素が備わりつつ、マスター クロノメーター認定ムーブメントCal.8912を搭載するなど、性能は向上を見せている。自動巻き(Cal.8912)。38石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径41mm、厚さ13.9mm)。300m防水。108万9000円(税込み)。
オメガの歴史的なタイムピースに範が取られたコレクションが「ヘリテージモデル」だ。
1957年にオメガが発表したシーマスター、スピードマスター、レイルマスター三部作を復刻した「トリロジー」や、1032年以来、オリンピックのオフィシャルタイムキーパーを務めてきた歴史を感じさせる「オリンピックモデル」も魅力的だが、ヘリテージの中で最も有名なのは「シーマスター 300」だ。
1957年に発表された「シーマスター 300」のデザインを踏襲したモデルではあるものの、完全な復刻ではなく、オメガが「新たな冒険家世代に向けて」と称するように、外装、内部機構ともにモダンな要素も加えられていることが特徴だ。
とりわけ2021年にモデルチェンジして以降、マスター クロノメーター認定ムーブメントを搭載するようになり、超耐磁性能をはじめ、いっそう優れた性能を誇るように。ほかのおレクション同様、ストラップや外装素材にバリエーションがあるため、選ぶ楽しさも味わえるモデルと言えるだろう。
オメガ シーマスターはあらゆるシチュエーションに対応する
シーマスターには、シンプルな仕上げでも妥協点は一切見られず、ボディには海中での使用に必要なメカニズムが凝縮されている。潜水時計というイメージが強いが、ビジネスシーンでも着用しやすいデザインも展開されている。
自身の着用シーンや必要なスペックで選ぶことで、より満足して使うことができるだろう。