高級腕時計には、多くのブランドが存在する。初めて購入するなどといった場合は、各ブランドがどのような腕時計を製造しているのか判断しづらい。主要ブランドの歴史やウォッチメイキングへの姿勢、そして製品の魅力を知れば、納得して“1本”を選べるようになるだろう。これから高級腕時計を購入するユーザーが知っておきたいブランドを10選、紹介する。
世界3大時計ブランド
優れた品質や技術力、長い歴史による伝統と格式が、世界3大時計ブランドと呼ばれる理由だ。まずは、高級腕時計を知る上で欠かせない3ブランドの特徴を見ていこう。
歴史上の偉人も愛した「パテック フィリップ」
1839年創業のパテック フィリップは、圧倒的に美しいデザインと、他の追随を許さない卓越した技術で、業界での揺るがぬ地位を築いてきた。最高峰の複雑機構を製作するブランドとしても知られている。
また、現在ではスタンダードになったリュウズ巻上げ・時刻合わせ式の時計を考案するなど(古くはリュウズの巻き上げには鍵を必要とした)、時計の技術革新にも貢献してきた。
ドレッシーなラウンドウォッチの傑作。ごくシンプルな外見ながら、上質なダイアル、歪みなく磨かれたケースなど、手に取ればその高い評価の理由が実感できる。ケースバックは開閉式で、ムーブメントの素晴らしい仕上げをのぞくことができる。自動巻き(Cal.26‑330 S C)。30石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KRGケース(直径39mm、厚さ9.24mm)。607万2000円。
パテック フィリップの過去の顧客名簿には、ヴィクトリア女王、アインシュタイン、昭和天皇など、錚々たる面々が名を連ねている。
クラシックな丸型時計「カラトラバ」や、舷窓から着想を得たベゼルを持つ「ノーチラス」、スポーツ・エレガンスを掲げる「アクアノート」が代表コレクションだ。
今なお創業者一族が経営「オーデマ ピゲ」
オーデマ ピゲは、誕生から現在まで一族経営を継続し続けている稀有なブランドである。1875年の創業以来、一度も他社資本に買収されたことがない。
ラグジュアリースポーツウォッチという一大ジャンルの先駆けとなった「ロイヤル オーク」に、同社が得意とするパーペチュアルカレンダーを搭載した本作。スポーティーなデザインと伝統的な複雑機構が見事に調和する。自動巻き(Cal.5134)。38石。1万9800振動/時。パワーリザーブ40時間。SS(直径41mm、厚さ9.5mm)。要価格問い合わせ。
そんなオーデマ ピゲは、創業当初から高い技術力で数々の複雑機構を発表し、確固たる地位を確立してきた。ラグジュアリースポーツウォッチの先駆者である、八角形ベゼルを備えた「ロイヤル オーク」は、その誕生から半世紀を経た現在でも絶大な人気を誇る。
“複雑時計のゆりかご”とも称される、スイスのジュウ渓谷で創業したオーデマ ピゲは、複雑時計の名手としても知られる。その一方で、近年は新アイコン「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」も生み出し、クラシックとモダンを掛け合わせた表現にも努めている。
途切れぬ悠久の歴史を紡ぐ「ヴァシュロン・コンスタンタン」
世界3大時計ブランドはいずれも、歴史を途切れさせずに現在まで発展してきた。中でも1755年創業の「ヴァシュロン・コンスタンタン」は、2世紀半を超えて、その悠久の歴史を紡いでいる。
まさにドレスウォッチのお手本たる「パトリモニー」に、ふたつのレトログラードを搭載したモデル。レトログラードは針が終点まで進むと始点までジャンプして戻る機構で、同ブランドが得意とする。ダイアル上部では日付を、下部では曜日を指し示すという、見た目にもユニークな1本に仕上がっている。自動巻き(Cal.2460 R31R7/3)。27石。2万8800振動/時。プラチナ(直径42.5mm、厚さ9.7mm)。2023年限定生産モデル。ブティック限定。888万8000円(税込み)。
ダイアルやリュウズに用いられている「マルタ十字」は、ブランドの誇りを体現するシンボルマークだ。1880年にスイスで商標登録されている。
ヴァシュロン・コンスタンタンと言えば、1996年発表の「オーヴァーシーズ」も忘れてはならない。ノーチラスやロイヤル オークと並ぶ人気の“ラグスポ”ラインである。また、56年に製造されたアイコニックなモデルから範を取る「フィフティーシックス」や、過去の名作を現代的に解釈した「ヒストリーク」もチェックしておきたい。