ステンレススティールとは?素材の基本とメリット・デメリットを解説

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2023.04.20

人気のラグジュアリースポーツウォッチをはじめ、多くの高級時計には「ステンレススティール」が用いられている。本記事では、ステンレススティールの基礎知識からメリット・デメリット、そしてステンレススティールを採用している人気ブランドまでを紹介する。

ロレックス


ステンレススティールについて

高級時計でよく目にするステンレススティール。まずは、ステンレススティールがどのような素材なのかを知っておこう。

ステンレススティールとは

ステンレススティールとは、鉄をベースにクロムやニッケルといった元素などが混ざり合ってできた合金鋼の一種だ。レアメタルのひとつでもあるニッケルには「錆びにくい」という特長があり、クロムも酸化することで鉄を錆びにくくする性質を持っている。

ステンレススティールの種類によっては、クロムやニッケルのほかにマンガンなど他の金属や元素が混ぜられたり、それぞれの配合量が変えられたりもする。

こうした特長から、ステンレススティールは腕時計だけでなく、医療器具やキッチンツールなど、さまざまな業界で用いられる汎用性の高い素材なのだ。

ステンレススティールの種類

オイスタースチール

多くの高級時計が、ケースやブレスレットをSUS316Lで製作しているのに対し、ロレックスが採用しているのはオイスタースチール(SUS904L)。SUS316Lは錆びにくく、金属アレルギーを引き起こしにくいことで知られているが、SUS904Lはクロムの含有量を増やしたことで、316Lを上回る特性が備わり、より上質な輝きを見せる。

先述のとおり、ステンレススティールは錆びにくいという特性からさまざまな分野で用いられているが、シーンや用途によって種類が異なる。

高級時計に使われることの多い「SUS316L」は、ステンレススティールの中でもランクが高く高級。耐アレルギー性に優れるだけでなく、耐磁性や耐食性も備えていることから医療器具等にも用いられる。

同じく時計素材として使われている「SUS304」は「SUS316L」よりもコストパフォーマンスが高く、カジュアルな時計に用いられることが多い。キッチンツールなどにも使われており、もっともメジャーなステンレススティールだ。


ステンレススティールのメリット・デメリット

ステンレススティールは、その丈夫さから各業界で活躍しているものの、デメリットもある。腕時計の素材という観点からメリットと併せて解説しよう。

ステンレススティールのメリット

スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル コーアクシャル マスター クロノメーター クロノグラフ

6度の月面着陸プロジェクトで携行され、世界的な評価を得たオメガの「スピードマスター」。2021年にリリースされた「スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル コーアクシャル マスター クロノメーター クロノグラフ」でも、ケースとブレスレットには優れた耐食性を持つSUS316Lが用いられている。

ステンレススティールの最大のメリットは、やはり錆びにくいという点だろう。時計は手首に装着するため、手を洗った際に水がかかることも少なくない。錆びにくい素材であることは、腕時計にとって欠かせない要素のひとつともいえる。

ふたつ目に「金属アレルギーを起こしにくい」ことが挙げられる。腕時計は直接肌に触れるだけでなく、長時間身につけることが多い。

鉄をベースにその他の元素や金属を混ぜてつくられているため、銅やクロムといった金属と比べてアレルギーを起こしにくい。

3つ目に「高強度である」ことが挙げられる。「SUS316L」は、とりわけ強度が高く耐衝撃性にも優れており、“サージカルスチール”として医療業界でも活躍するステンレススティールだ。

4つ目が「質感の良さ」だ。ステンレススティールは滑らかで肌あたりや手触りもいい。輝きがあり高級感を放つため、素材特性だけでなく、ビジュアル面でも腕時計に使うには最適な素材といえる。

ステンレススティールのデメリット

デメリットには「加工のしにくさ」が挙げられる。ステンレススティールは、その丈夫さゆえに加工が難しい側面を持っている。

したがって、加工には高い技術と特殊な機械が必要となり、コストがかかってしまう。そのため、ステンレススティール製の時計は価格が高くなってしまうのだ。こうしたデメリットを改善したのが「SUS316L」で一般的なステンレススティールよりも加工しやすくなっている。

また、錆びにくさはステンレススティールの最大のメリットでもあるが、まったく錆びないわけではないことを忘れてはいけない。

ステンレススティールは、配合されているクロムが鉄の表面に薄い膜を張ることで鉄を錆びにくくしている。しかし、この膜は汗によって壊されるため、日々の手入れを怠ってしまうと膜が壊れ錆びにくさが低下してしまう。