ジュネーブがバーゼルに!?「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2023」現地リポート第1弾

2023年3月27日から4月2日までジュネーブで開催されたフルバージョンの、世界唯一無二となった国際時計フェア「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2023」。すでにクロノス日本版編集長・広田雅将が紹介したロレックス「デイトナ」のリニューアルや、まったくの完全新作を含め、時計愛好家には見逃せないモデルが登場した。しかしここでは、一般公開日はあるものの、基本的には業界クローズドなこのフェアの雰囲気を現地からお伝えしよう。

ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2023

渋谷ヤスヒト:写真・文 Photographs & Text by Yasuhito Shibuya
(2023年4月6日掲載記事)


シャトルバスの中から「大盛り上がり」

 3月27日(月)、スイス・ジュネーブ空港に隣接する国際見本市会場「パレクスポ」でウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ(W&WG)2023がついに開幕した。

 主催者側から発表された開催期間1週間の訪問者数は4万3000人超(2022年は2万2000人)、国籍数125、リテーラー数5400人という、過去最高の数字を打ち立てた。あくまで筆者の印象だが、静かで人混みなどほとんどなかった2022年のW&WGと、今年2023年のW&WGは雰囲気が一変。朝のエントランスの大混雑など、初日27日月曜日の朝から、いきなり“今は無き”全盛期のバーゼルワールドを彷彿させる大賑わいだった。

ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2023のセキュリティチェック

セキュリティチェックがあるのがジュネーブのW&WG(かつてのSIHHにもセキュリティチェックがあった)。そのため、エントランスは初めの3日間は大渋滞に。

 空港のようなセキュリティチェックもあるため、「まるでバーゼル」。W&WG参加ブランドの数は48に過ぎないが、ジュネーブ市内のホテルでも数多くの展示会が開催されていて、そのことも考慮すると、W&WGの前身であるSIHH(通称ジュネーブ・サロン)よりも「世界時計祭り」であったバーゼルワールドがジュネーブに出現した!という雰囲気に近い。

 会場レイアウトは昨年と同様に、セキュリティチェックを抜けて左にブックストア、右に記念写真ブースを見て、メイン通路がオーディトリアム(ステージ)正面に突き当たると、右が旧SIHHブランドエリア、左が旧バーゼルワールド出展組エリアというレイアウト。ただ、参加ブランドが38から48に10ブランド増えた結果、会場は拡張されている。さらにエキシビションやラボ(最新技術紹介)エリアが会場の2階に移動されるなど、細かい部分ではかなりのレイアウト変更があった。

ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2023のマップ

会場レイアウト図。オーディトリアムを挟んで右にSIHHでおなじみのブランド、左にはバーゼルワールドでおなじみのブランドのブースがある。

 それはともかく、何よりも印象的だったのは、ブランド関係者やバイヤー、ジャーナリストら世界各国から集まった参加者たちの「また時計フェアに来られた!」という喜びと高揚感であった。市内から会場に向かうシャトルバスの中は、久しぶりの再開を喜ぶ時計関係者のおしゃべりで大盛り上がり。人々は口々にその喜びをさまざまな言葉で表現する。

ブランドの本質を体現したコレクション

タンク ノルマル

まさにブランドの神髄を体現した、カルティエの新作「タンク ノルマル」のプラチナモデル。

 最近の新作発表は、時計ブランドごとに製品のプロモーション戦略が異なるので、この場で年間の新作を一気に公開するブランドと、ファッションメゾンのようにシーズンごとに小出しにするブランドに分かれている。これは2010年代からすでに表れていたこと。その結果、フェアで発表される新作は、これまでよりも数としては少なくなっている。だが、どれもその質は高く、少数精鋭とも言える。

 個別のブランド、個別のモデル、今年のトレンドやビジネススタイルについては今後、特に注目してほしいと思うものをお伝えする予定だが、ひとつだけ確実に言えるのは「なぜこのブランドが、こんなモデルを???」と思わず口に出したくなる「違和感のあるモデル」がほぼ1本も、筆者がフォーカスしているブランドではまったく見当たらなかったこと。納得&感心できるモデルが充実しているのだ。

 カルティエやジャガー・ルクルト、ヴァン クリーフ&アーペルを筆頭に、どこも自らのヘリテージを踏襲しながら、その遺産を見事に現代化した魅力的なモデルを展開している。

 一方で、そのような期待が高まる老舗ブランドが存在する一方で、いよいよ手詰まり感の出てきたブランドもある。1980年代〜90年代に創業し、経営やデザインを率いる首脳陣の交代が創業以来、まったくない時計ブランドだ。

 筆者は時計ブランドが、いわゆるミレニアム世代やZ世代を意識するのは当然としても、まず大切なのは、時計の中に秘められた情熱や魅力的な歴史と技術を、Z世代に通じるかたちで伝えることだと考えている。

 当時は新進気鋭でも、創業から30〜40年を超えたブランドでは、同じトップのままの体制では、コンセプトの新たな解釈は自身の手では限界がある。この4〜5年間で、リシュモンを筆頭に主要な時計ブランドのトップマネジメントが続々と交代し、新体制でビジネスを始めている。これまで「新進」と言われていたブランドも、いよいよ世代交代の季節を迎えたのではないだろうか。


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