1935年発表のパイロットウォッチ「Ref.3582」の直系となる本作は、特徴的なデザインを受け継ぎながら現代的にリファインされており、ロンジンの手腕が光る1本に仕上がっている。
「マジェテック」はオリジナルに刻印された(軍の)所有物を意味するチェコ語を起源とする愛称。自動巻きを採用し、スモールセコンドの配置が適切である点にも注目。自動巻き(Cal. 893.6)。26石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径43mm、厚さ13.3mm)。10気圧防水。55万円(税込み)。(初回、スペシャルBOX、NATOストラップ付属)
Text by Shin-ichi Sato
Edited by Kouki Doi (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2023年5月号掲載記事]
軍用パイロットウォッチを復刻した「ロンジン パイロット マジェテック」
近年のロンジンは、過去の名作の復刻モデルを数多くラインナップしてきた。ポイントは、ルーツとなるモデルのチョイスが絶妙であることと、そのテイストを秀逸に受け継ぐこと、そしてそれを現代的な仕様にうまくまとめ上げていることだ。今般発表された「ロンジン パイロット マジェテック」においても、その手腕はいかんなく発揮されている。
本作のルーツは1935年にチェコスロバキア軍のオーダーを受けて製造されたパイロットウォッチのRef.3582である。個性的で頑強なクッションケースと、両方向回転フルーテッドベゼルが受け継がれている。ケース径は43mmとやや大ぶりであるが、オリジナルよりもラグに丸みを与えることで、着用感の向上が図られている。
両方向回転フルーテッドベゼルは、その意匠だけでなく機能も再現され、計測開始時間を指し示すトライアングルマーカーの操作部となっている。このマーカーは風防のサファイアクリスタルとダイアルの間に配置され、ベゼルとマーカーのみを回転させる構造となっており、10気圧防水を実現している。
真っすぐなペンシル型時分針とブラックダイアルにアラビックインデックスは往年のミリタリーウォッチを代表する意匠で、本作では「LONGINES」のロゴ以外は機能に関わる表示のみと潔く、プロフェッショナル用モデルであった出自を色濃く引き継いでいる。搭載する自動巻きのCal.893.6はシリコン製ヒゲゼンマイ採用のC.O.S.C.認定クロノメーターで、パワーリザーブ約72時間と現代基準で申し分ない。
多くの復刻モデルをリリースしてきてもなお、本作のような魅力あるモデルが飛び出してくる。これこそ、ロンジンの歴史と手腕のなせる業だ。
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