メシエカタログの「M45」、すばる星団は、古来より人々に時や季節の訪れを告げてきた。複雑な工程を経て誕生するダイアルには、「輝ける星」を目指し、邁進した歴史が宿る。
Text by Tsubasa Nojima
Edited by Kouki Doi (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2023年5月号掲載記事]
オリエントスター「メカニカル ムーンフェイズ M45」
冬の夜空に、ひと際輝く星の集まりがある。それが、清少納言が書いた随筆『枕草子』にも登場する「すばる」だ。欧米では「プレアデス」とも呼ばれるこの星団は、古来より時や季節の目印として、世界中の人々に親しまれてきた。
オリエントスターの新作がモチーフとしたのは、そんなすばるだ。そのコンセプトを追求した結果、本作はまさに快作と呼ぶにふさわしい存在感を示した。
ブラックIPを施したケースと濃紺のベルトが、全体の調和を生む。自動巻き(Cal.F7M65)。22石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SS(直径41mm、厚さ13.8mm)。5気圧防水。公式オンラインストア「with ORIENT STAR」限定45本。30万8000円(税込み)。プレステージショップ限定145本。31万9000円(税込み、コードバンストラップ付き)。
神秘的なダイアルは、型打ちした金属のベースにブルーのグラデーションを塗装して製作される。その上には分厚い透明な層を作り出すラッピング塗装が施され、無限に広がるような深く荘厳な印象を与えている。
インデックスは、さらにその上にタコ印刷を幾度も重ねることで立体感を持たせている。ブルー蒸着メッキを施したリーフ型の時分針は、左右をサテンとポリッシュ仕上げに分け、陰影を付けている。これは視認性を高めるための工夫だが、ダイアルと針とのコントラスト自体が低いため、効果は限定的だ。ブラックのインデックスも見やすいとは言えない。
だが、本作にこのような針とインデックスを与えたことは英断ではないだろうか。見る者の視線は、星雲を模した型打ち模様と、それらを照らすグラデーションに自然と引き込まれる。時計を見ながらも時間を気にすることなく、宇宙の彼方に思いを巡らせることができるのだ。唯一はっきりと見えるムーンフェイズ表示は、日ごとに変わる月齢を表し、頭上に広がる夜空と、本作の同期性を視覚的にも教えてくれる。
「輝ける星」を目指して誕生したオリエントスター。時代と場所を超えて愛されてきたすばるは、同ブランドが描いた理想像なのかもしれない。
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